- 本文の内容
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- G7サミット 首脳宣言採択し閉幕
- ロシア情勢 ロシアはもう敗れている
- サハリン2 運営会社資産の無償譲渡命じる大統領令に署名
対中牽制、新興国投資で日本に存在感
先月28日、ドイツで開かれていたG7サミットが首脳宣言を採択しました。
これはウクライナへの長期的な支援を実施するとともに、ロシアに厳しい経済的損失を与え続けると明記したものです。
ロシア産の石油価格に上限を設けロシアの収入を減らすことを検討するほか、中国に対してもウクライナから撤退するようロシアに圧力をかけることを求める内容となっています。
今回の議長国はドイツです。
ミュンヘンの南、オーストリアとの国境の森と湖とアルプスの絶景に囲まれたエルマウ城で開催されました。
ロシアへの制裁を機能させるためロシア産原油の価格に上限を設けるなど、重要な議題が数多くありましたが、オーラフ・ショルツ首相はいい仕事をしたと評価します。
発表された声明では中国の東シナ海・南シナ海での現状変更に反対することや、台湾問題の平和的解決を求めることなどが盛り込まれており、日本に期待されている役割も大きいと考えられます。
特に、途上国のインフラ整備を支援する「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」に日本が8兆8,000億円を拠出すると宣言したことには注目です。
これはG7全体の拠出額の約10%を担うことを意味し、岸田首相も存在感を示すことに成功したと言えるでしょう。
ロシアの孤立・衰退は決定的
日経新聞は先月30日、「ロシアはもう敗れている」と題する記事を掲載しました。
米国のユーラシアグループのイアン・ブレマー氏が現在のロシアの情勢を分析したもので、「プーチン大統領はドンバス地方とクリミアがつながる黒海沿岸地域を制圧できるかもしれないが、自国経済への打撃やロシア国民の不満を引き起こしており、長期的に見ればロシアはすでにこの戦争に負けている」と指摘しています。
ブレマー氏に指摘されるまでもなく、ロシアが失ったものは非常に大きいと言えます。
プーチン体制が続く限り制裁は続くでしょうし、仮に別の指導者が現れたとしてもそれだけでは西側の信用を勝ち取ることは難しいと考えられます。
冷戦の時代でもゴルバチョフというモスクワ大学の秀才が現れ、「グラスノスチ」「ペレストロイカ」と従来とは全く違う姿勢を見せるまでは西側諸国が警戒心を解くことはありませんでした。
ロシアは制裁下で生き延びる道を余儀なくされ、長きにわたってダメージを受け続けることになるでしょう。
またロシア軍の損失について、ロシア側の発表では兵員の損失は数千人とされていますが、ウクライナ軍によれば35,000人以上の損失と推計されています。
戦車や航空機なども多く失っており、軍の損失に限っても大きなダメージを受けています。
これらを補強するためには半導体が必要であり、どうしても西側から購入しないといけないものも多々あります。
また、ロシアのGDPは現在韓国より少し少ない程度ですが、ここからどんどん下がっていく見通しです。
ニューズウィークにも「プーチン大統領は戦争目標も、取りうる手段もどんどん小さくなっている」という記事が掲載されました。
このように、ロシアはウクライナ侵攻によって多くのものを失ったという見解が西側諸国の中では出てきています。
資源の買い手としては尊重されるか
プーチン大統領は極東の石油天然ガス開発事業「サハリン2」の運営をロシアが新たに設立する法人に移管し、現在の運営会社の資産を無償譲渡するよう命じる大統領令に署名しました。
この事業には日本から三井物産や三菱商事が参加していますが、今後運営の枠組みから排除される可能性があります。
サハリン2では以前ガスプロムが参加する時に、日本の2社の出資比率を10%程度にまで下げられた経緯があります。
今度は新しい運営会社に無償で資産を奪われ、経営権まで失う形になってしまいそうです。
日本にとっては大きな損失ですが、希望があるとすれば産出した資源の買い取り権は残る見通しがある点です。
ロシア国内では消費しきれませんし、もし中国やインド、北朝鮮に売るようなことがあれば日本との信頼関係は永遠に失われ、日露共同でのビジネスは二度と出来なくなってしまうでしょう。
ロシアとしてもそれは避けたいはずなので、顧客としての日本は尊重されると私は見ています。
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※この記事は7月3日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はロシア情勢のニュースを大前が解説しました。
大前は「ロシアはプーチン大統領を前提とする限り、西側諸国からの制裁は解除されない」と指摘したうえで、「次の大統領もよほどの人物でない限り制裁は解除されることはなく、ロシアは長年に渡り非常に大きなダメージを受けることになる」と述べています。
ビジネスシーンで一度失った信頼を取り戻すには想像以上の時間を要します。
信頼回復のためには根本的な課題を突き止め、課題解決のために抜本的改革もいとわない姿勢が必要です。
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