大前研一「ニュースの視点」Blog

KON930「ローソン/ソニーグループ/サマンサタバサジャパン/アマゾンジャパン~メタバース時代を見据えた一手」

2022年5月9日 アマゾンジャパン サマンサタバサジャパン ソニーグループ ローソン

本文の内容
  • ローソン 成城石井を東証プライム上場へ
  • ソニーグループ 米エピックゲームズに追加出資
  • サマンサタバサジャパン 門田剛社長が退任へ
  • アマゾンジャパン ドアベル、カメラを日本で発売

シナジーの可能性を発揮しきれず


コンビニ大手のローソンが、完全子会社の高級スーパーである成城石井を2023年度までに東証に新規上場する見通しが明らかになりました。

成城石井は首都圏を中心に約200店舗を展開。

自社工場で作る高品質の惣菜やプライベートブランドの食品に強みを持ち、上場時の時価総額は2,000億円を上回ると見られています。

約500億円で買収し2,000億円で上場ということは、経営的には良い結果です。

ですが私に言わせれば、成城石井の強みをローソン全体の魅力の向上に使えなかったことが残念です。

成城石井は良いものをたくさん取り扱っていますが、人気があるのは自社開発製品です。

せっかく他では買えない人気商品があるのだから、ローソンの中にも成城石井のコーナーを作って積極的に売ればよかったのにと思います。

私も成城石井に好きな商品があり、わざわざ遠くまで買いに行くこともあります。

私と同じように、成城石井の商品を近くのローソンでいつでも買えたら便利だと思う人はいるはずです。

成城石井を別会社にしてお金にした場合には、引き続きコンビニエンスストアの枠組みの中でファミリーマートやセブンイレブンと正面から競合することになります。

そうなると、時価総額で突出しているセブン&アイに分があります。

ローソンはナチュラルローソンも展開していて、成城石井とのシナジーで独自性を出す土壌は存在しただけに、可能性を活かしきれなかったことが悔やまれます。




メタバース時代を見据えた一手


ソニーグループが人気のオンラインゲームである『フォートナイト』を手がける米国のエピックゲームズに10億ドル(約1,250億円)を追加出資することがわかりました。

これにより、ソニーの出資額は合わせて14億5,000万ドルとなり、仮想空間メタバース市場が注目を集める中、ゲームや音楽、映画などを融合したネット上のエンターテインメントの強化につなげる考えです。

現在のゲーム関連の売上はテンセントが圧倒的に強く、ソニーは2位で、アップルが3位。

マイクロソフトもゲームのプラットフォームを持っていますが、4位に甘んじています。

昔は強かった任天堂も現在8位となっており、かつて日本の独壇場だったゲーム業界も、今では外国勢が存在感を示しています。

エピックゲームズは『Gears of War』や『フォートナイト』などの人気ゲームを開発し、3D制作ツールなどの周辺事業でも注目されている、想定企業価値4兆円のユニコーン企業です。

テンセントやKKRと並んで、ソニーも何回かに分けて出資し、その額は合計で1,800億円ほどになりますが、それでも4兆円の5%程度にしかなっていません。

とはいえ、こうした企業に出資して未来の巨大市場での大きなリターンを狙うのは、時価総額も大きく、内部でもゲームとその周辺事業が売上・利益の核になっているソニーならではの動きでしょう。




メルカリがアパレル業界を二極化させた


サマンサタバサジャパンは5月26日の株主総会で、門田剛代表取締役社長が退任し、後任に現在社外取締役の米田幸正氏が就任すると発表しました。

サマンサタバサは2019年から、親会社のコナカの主導で経営再建を進めてきましたが、2022年2月期も6期連続の赤字となるなど苦戦が続いており、複数企業でトップを務めた米田氏の下、経営再建を目指す考えです。

メルカリが登場して以来、アパレル・ファッション業界は激変しました。

売上が減って利益も出なくなってしまったサマンサタバサは、典型的な犠牲者だと思います。

メルカリが一般的になって、消費者は「2年後にメルカリで売れるもの」しか買わなくなってしまいました。

「2年後にメルカリで売れるもの」とは、高級ブランドの定番商品です。

2年後に売れないものであれば、ユニクロやZARAなどのファストファッションで済ませます。

こうしてアパレル・ファッション業界は高級品とファストファッションに二極化し、サマンサタバサのような真ん中のブランドが窮地に立たされています。

クローゼットの中身をお金に換えられる時代が続く限り、二極化の傾向が変わることはありません。

業界自体が変化してしまった以上、いま苦しんでいるブランドは従来通りの努力をしても意味がないでしょう。

新しい経営者にはこの変化を理解し対応することが求められていますが、非常に深刻で解決が難しい問題です。




スマホとドア周りのセキュリティは有望な市場


アマゾンジャパンは先月13日、独自のドアベルとセキュリティカメラを日本で販売すると発表しました。

訪問者がドアベルを押したり、玄関先に人が近づいたりするとスマホに通知が届き、外出先でも映像を確認でき、留守宅の防犯のほか、玄関先に荷物を置く「置き配」の監視の用途等で国内での普及を目指すということです。

スマートフォンとセキュリティカメラなどの玄関回りを連動したサービスは、これからもどんどん伸びていくと思います。

例えば女性が一人で住んでいる場合、外出先から帰るとき、あらかじめ部屋に不審者が来ていないか確認できれば安心ですし、部屋にいるときでも外に不審者がいないことを確認できたら助かります。

日本にもこうしたサービスはいくつかあって、カメラの解像度が高いものもあれば、ドアのカギまで連携するようなものも既に存在します。

とはいえ市場はまだ開拓中なので、アマゾンのような大企業が参入し、さらに置き配のニーズにも応えられるとなれば、一気に広がってかなり売れると予想します。

価格は23,980円と少し割高ですが、アマゾンの信用があれば問題ないでしょう。

この分野の伸びしろは、まだまだたくさん残っています。




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※この記事は4月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はサマンサタバサジャパンのニュースを大前が解説しました。

大前はアパレル業界について、「個人が不用品を手軽に売却できる手段が生まれ、売却する際に高値がつきやすい高価格帯のブランドの定番品が選ばれるようになっている」と指摘した上で、「数年後の知名度が不確かで、売却しにくい可能性のある中間価格帯のブランドは苦戦しており、深刻な問題になっている」と述べています。

インターネットやSNSの台頭により、人々のニーズや消費行動は大きく変化しています。

人々の価値観の変化が自社の商品やサービスにとってどのような脅威やチャンスになるかを分析し、先手を打って対策することが重要です。


▼5/19(木)尾原 和啓インストラクター
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