大前研一「ニュースの視点」Blog

KON926「ウクライナ経済/ロシア経済/ジョージア情勢~ロシア経済は停戦後も10年は影響が残る」

2022年4月11日 ウクライナ経済 ジョージア情勢 ロシア経済

本文の内容
  • ウクライナ経済 ロシア軍事侵攻による経済損失約70兆円
  • ロシア経済 成長率、今年マイナス10%予測
  • ジョージア情勢 南オセチア共和国のロシア編入手続き開始

ウクライナ復興には、世界中から供託金を集めるしかない


ウクライナのスビリデンコ第一副首相兼経済相は先月28日、ロシアの軍事侵攻でこれまでに被ったウクライナの経済損失が5,650億ドル(約70兆円)にのぼるとの試算を明らかにしました。

この一部を国内で凍結したロシア資産の接収などで穴埋めするとともに、ウクライナはあらゆる障害を乗り越え、侵略者に賠償金を要求することを目指すとの考えを示しました。

ウクライナでは、これまで何百年もかけて築き上げてきた街並みが、かなり破壊されてしまっています。

復興させるのに70兆円で収まるのかさえ疑問に感じます。

また仮に70兆円で収まったとしても、復興までには50年ぐらいの時間を要するのではないかと私は思います。

ロシアとウクライナの停戦が成立し、平和が訪れたら、ウクライナ復興のため空前の建築ブームが起こるかもしれません。

しかし、ウクライナには金銭的に負担する能力がなく、またロシアにもあるとは思えません。

ウクライナのスビリデンコ第一副首相兼経済相はロシアの資産の一部を接収すると発言していますが、それでもウクライナの街を元に戻すには全く足らないと思います。

過去の例を見ると、ロシアはアサド政権を支援し、シリアに侵攻しました。

シリアの街並みも大きく破壊されましたが、アサド政権には元に戻す意思がなく、今でもシリアは復興していません。

ウクライナを立て直すとして、一体誰がその資金を負担するのか。

世界中で供託金を集めてくる以外に方法はないと私は思います。




ロシア経済は停戦後も10年は影響が残る


日経新聞は3日、「ロシア経済急収縮 成長率、今年マイナス10%予測」と題する記事を掲載しました。

欧州復興開発銀行が今年のロシアの国内総生産(GDP)成長率がマイナス10%に陥ると予測しました。

日米欧による経済制裁や外資の撤退により企業活動が混乱し、雇用環境が悪化することが響くもので、ロシア経済がソ連崩壊の余波に匹敵する打撃を受けるシナリオも現実味を帯びてきたとしています。

ウクライナ侵攻後に暴落したルーブルは、ロシア当局による大規模な操作で一時的に反発していますが、今後また下落する可能性が高く、さらに経済が悪化する可能性もあります。

今、ロシアの金融は、完全にフリーズしていて、ロシアの人々は銀行から自由にお金も引き出せないような状況です。

利用率が高いクレジットカードも使えなくなっていて、非常に多くの問題を抱えています。

今後1~2ヶ月でウクライナとの間に停戦が成立したとしても、ロシア経済に対する影響は10年ぐらい残ると私は見ています。




ジョージア周辺地域の危うさ


ジョージアからの分離独立を主張している親ロシア派の勢力・南オセチア共和国の自称大統領であるビビロフ氏は、先月30日、ロシアへの編入手続きを開始すると表明しました。

南オセチアではソ連崩壊前後から独立や北オセチアとの統合を望む声が高まったほか、ロシアも影響力維持のため軍を駐留させてきましたが、これに対してジョージアの外務省は「編入は受け入れられない」として対ロ制裁を見送る方針を転換し、制裁の発動を決定しました。

ジョージア周辺は中途半端な状況が続いていて、どこに属するのかわからない地域になっています。

2008年に勃発した南オセチア紛争(別名ロシア・グルジア戦争)によって、ジョージアはロシアと国交を断絶。

その際に日本ではジョージア側の要請を受け、それまでの呼称であるグルジアからジョージアへ変更しています。

この紛争に、分離派の南オセチアやアブハジアはロシア側として参戦していました。

そして紛争後に、ロシアは南オセチアとアブハジアの独立を承認。

この一方的な独立は世界では認められておらず、ベラルーシなど一部の国が支持しているのみです。

アブハジアの独立にあたってはソチ冬季五輪の開催が決定していたため、それをジョージアに奪われたくないというロシアの意向もあったのではないかと思います。

南オセチア、アブハジア、ジョージアの周辺にはアルメニアとアゼルバイジャンもあり、数年前に戦争があったばかりです。

ロシアはアルメニアと組んで、トルコと組んだアゼルバイジャンと戦いました。

ロシアのウクライナ侵攻に対して、トルコのエルドアン大統領はロシアとウクライナの仲介に乗り出す動きを見せています。

しかし歴史的に見ると、トルコはあっちについたりこっちについたりする非常に危うい側面があります。

ジョージア周辺地域には二枚舌を使う人物も多く、非常に危険な地域だと思います。

今ロシアが劣勢になっていることを受けて、再びこの地域でも戦争が起こる可能性もあると思います。




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※この記事は4月3日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はジョージア情勢のニュースを大前が解説しました。

大前はジョージアにおける実質的なロシアの支配の歴史について述べた上で、ロシアとウクライナ情勢の変化によるアルメニアとアゼルバイジャン間の戦争の可能性を指摘しています。

企業においても取り巻く環境や企業間の繋がりは非常に複雑なものになっており、1つの変化から連鎖して大きな問題へと発展する可能性もあります。

状況の変化に応じて的確な対応を迅速に行えるように、常にアンテナを張って情報収集し、今後起こりうるリスクへの対策を検討しておくことが大切です。



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