- 本文の内容
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- 東芝 グループ2分割の会社議案が否決
- 楽天 複合経営で企業価値目減り
- ソフトバンク 英アーム株担保に資金調達
- 横浜ゴム スウェーデン・トレルボルグを買収
東芝の技術力を活かすには、分割すべきではない
東芝が先月24日に開催した臨時株主総会で、グループ全体を2分割する会社側の議案が否決されました。
また、株主側が提案した株式の非公開化や少額出資の受け入れを含む企業価値向上策の再検討を求める議案も否決。
これにより、東芝の再建に向けた戦略づくりは振り出しに戻ることになります。
東芝の事業を「デバイスサービス」、そして「インフラサービスを含む東芝本体(キオクシア、東芝テックの株式を保有)」の2社に分割するというのが今回の分割案でしたが、否決されました。
東芝は非常に技術力がある会社です。
フラッシュメモリを発明したのも東芝ですし、可変気筒デュアルロータリーコンプレッサーを世界で初めて作ったのも東芝です。
こうした高い技術力を活かすには、分割するよりもコングロマリットでいるべきです。
そもそも、今回の分割案自体に大した意味はなく、苦し紛れの一手だったと私は感じます。
各事業を個別に考えるのではなく、東芝全体について再度よく考えるべきです。
一度非上場になって時間をかけるのもありだと思います。
下手な分割をして、技術力の源泉である優秀なエンジニアを失わないようにして欲しいと思います。
その上で、東芝本体が株式を保有する2社については、それぞれ異なる対応を考えるべきです。
キオクシアについては、上場させて上場益を得るというのはありでしょう。
一方、キャッシュレジスターを主力とする東芝テックは、簡単にタブレットで代用できる時代なので、株を保有している意味さえすでにないと思います。
仮にいずれかの会社を売却するとしても、東芝本体に影響が出ないように考慮すべきで、東芝の持つ研究開発力は絶対に維持すべきです。
東芝は時価総額が今でも約2兆円です。
日本有数の優良企業ですから、物言う株主などから変な影響を受けることなく、長期的に自らの強みを見極めて戦略を練り直して欲しいと思います。
モバイル事業で赤字を出し続ける楽天
日経新聞は先月25日、「楽天、複合経営で企業価値目減り 脱割安株へ銀行上場カギ」と題する記事を掲載しました。
楽天のコングロマリット・ディスカウントが顕著と紹介。
複数事業を手掛けることで、ネット通販や金融に必要な経営資源が回らず評価が割り引かれており、割安株から脱却するには楽天が昨年9月に発表した楽天銀行のIPOが欠かせないとしています。
楽天全体の業績を見ると売上は伸びていますが、営業損益と当期損益は共に悪化しています。
セグメント別の業績を見ると、楽天本来の事業である国内EC事業、銀行・証券・保険などのフィンテック事業は安定した利益が出ています。
海外事業などを含むその他インターネットサービス事業はやや不安定ですが、大きな問題になっているわけではありません。
大きく足を引っ張っているのは携帯電話事業です。
「第4のキャリア」として大々的に参入した携帯電話事業は、設備投資の額が大きすぎて4,000億円の赤字を出しています。
フィンテック事業で利益を得ている楽天銀行などを分離独立させて、そこで稼ぎ出したお金を携帯電話事業に突っ込んでいくのか、あるいはどこか携帯電話事業に強い海外の企業と提携してやっていくのか。
いくつかの道はありますが、先行き不透明だと言わざるを得ない状況です。
携帯電話事業を推進しているのは、もはや三木谷社長のロマンでしかないと私は思います。
楽天本来の国内EC事業は堅調です。
楽天の株価が低迷しているのは、コングロマリット・ディスカウントというよりも「三木谷ロマン」によるところが大きいと私は見ています。
ソフトバンクの余裕は、アリババ次第
ソフトバンクは国内外の銀行団から英アームの株式を担保に80億ドル規模の資金調達を実施するとのこと。
非上場株を担保にした調達では異例の規模となります。
そもそもソフトバンクがここまで追い込まれたのは、アリババの時価総額が半分になってしまったためです。
アリババが健全な状況であれば、ソフトバンクも健全だったはずです。
アームは今年中に上場予定で、5~6兆円の時価総額を想定しているようです。
おそらく今回の資金調達にあたって、アームの時価総額は4兆円以上を想定していると私は思います。
想定通りになれば良いですが、上場しても時価総額3兆円ぐらいで留まってしまったら、ひと悶着あるかも知れません。
ソフトバンクグループの有利子負債額は20兆円を超えています。
相当大きな金額ですが、アリババが元気であれば全く問題はありませんでした。
中国政府の動向を見ていると、どこまでアリババをいじめ続けるのかわかりません。
中国政府の対応によっては、さらにアリババの株価が落ちていく可能性も十分にあります。
競合が少ない市場へ活路を見出す横浜ゴム
横浜ゴムは、農機用タイヤなどを手掛けるスウェーデンのトレルボルグホイールシステムズを買収すると発表しました。
買収額は約2,700億円です。
乗用車向けタイヤは中国や韓国勢との競争が激化しており、安定収益が見込める産業分野へのシフトを加速する考えです。
日本国内タイヤメーカーのシェアを見ると、トップにブリヂストン、次いでダンロップを買収して立て直した住友ゴム、そして横浜ゴムは3番手に位置しています。
さらに世界的には、ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤーというトップ3が君臨していて、横浜ゴムのシェアはかなり小さいものになっています。
一時期タイヤ事業から遠ざかっていたドイツのコンチネンタルにも遅れを取っています。
そのような市場環境の中、横浜ゴムは農機用タイヤに目を向けています。
農機用タイヤメーカーの買収は今回が初めてではなく、今回の買収も含めるとこれまでに4,000億円ほど投じているはずです。
農機用タイヤは、通常のタイヤとは種類が異なるものが必要です。
この領域は比較的収益が高く、競争も激しくない市場です。
横浜ゴムはこの市場に逃げ込んだ形です。
横浜ゴムは国内でも苦戦している状況ですし、一昔前に横浜ゴムが技術を伝えた韓国や中国のタイヤメーカーも成長してきて、横浜ゴムのすぐ後ろまで迫ってきています。
そのような中、競合が強くない市場へ活路を見出すというのは、正しい戦略だと私は思います。
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※この記事は3月27日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は東芝のニュースを大前が解説しました。
大前は「東芝は時価が2兆円規模の優良企業であるということを念頭に置き、一旦非上場にして冷静に今後の方針を再検討すべき」と指摘した上で、「東芝の強みである技術力をさらに高めて企業価値を上げることに注力すべき」と述べています。
自社の強みを正しく認識することは今後の戦略を立てる上で重要なポイントです。
自社の事業基盤の強さや技術力を分析し競合優位性を把握することで、何を強化すべきかが明確になります。
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