大前研一「ニュースの視点」Blog

KON924「米政策金利/円相場/東京電力HD/原子力政策~円安が進み、日本国債の暴落への危険性」

2022年3月28日 円相場 原子力政策 東京電力HD 米政策金利

本文の内容
  • 米政策金利 ゼロ金利を2年ぶりに解除
  • 円相場 一時1ドル=119円40銭
  • 東京電力HD 電力需給逼迫で節電呼びかけ
  • 原子力政策 原発攻撃への堅牢性は「事実上無理」

米政策金利が上がると、日本にどのような影響があるか?


米連邦準備制度理事会(FRB)は16日、短期金利の指標であるFF金利の誘導目標を0.25~0.5%へ引き上げる方針を決定しました。

新型コロナ対応として始めたゼロ金利を2年ぶりに解除するもので、ロシアのウクライナ侵攻で不確実性が高まる中、インフレ抑制を優先し大規模緩和の幕引きを目指す考えです。

米国の物価上昇率を見ると、特に燃料が顕著で約25%も値上がりしています。

その他全品目で上昇傾向にあり、このインフレ傾向は世界的に波及しています。

米国はこのインフレを抑え込むために、金利を上げ始めたということです。

インフレの影響で、国債の利率を上げないと買ってもらえないからです。

そして、米国債の利率が上がると日本も引きずられることになります。

日米欧の中央銀行の総資産残高の推移を見ると、FRBも日銀もECBも総資産を溜め込んでいることが分かります。

国債が暴落すると、溜め込んだ資産残高が大きいだけに大変な事態になるので、何とかして金利を払わなくてはいけないという状況でしょう。

こうなってくると、日銀は世界に先んじて自ら抱え込んでいる国債という爆弾を爆発させてしまう危険性があります。

その意味で日本は非常に危険な領域に入ってきていると私は見ています。

その影響が為替にも表れてきています。




円安が進み、日本国債の暴落への危険性


18日のニューヨーク外国為替市場で、円が一時119円40銭と2016年2月以来、6年ぶりの円安水準となりました。

日銀の黒田総裁はまだ今まで通りの政策を継続すると発言していますが、米国の国債利回りが上がってくるとその影響を免れないでしょう。

例えば、この1週間で、円は115円から119円まで4円も円安が進みました。

こうなると、日本円で持っているよりも、米ドルに投入した方が得策だと考えるのは当然です。

日本円で貯金していても、雀の涙ほどの利息しかつかないので尚更でしょう。

今、新興国を含め、世界中のお金が米国へシフトしつつあり、結果として新興国の国債も弱くなっています。

これからさらに円安に振れていく可能性が高いと私は思います。

かつて日本は貿易黒字国でしたが、今は貿易赤字に転落する瀬戸際にある状況です。

一方で、日本の対外直接投資と第一次所得収支は伸びています。

日本は貿易輸出国というよりも、投資国になってきているということです。

こうした状況を踏まえると、日銀の黒田総裁が想定しているよりも事態を深刻に捉える必要があると私は見ています。

米国は今後もさらに金利を上げていく姿勢を見せています。

そうなると、ますます日銀の国債が暴落して、日本がひっくり返る危険性が高まると思います。




電力逼迫への対処は、厳戒態勢の準備を整えること


東京電力HDは18日夜、東日本の電力需給が厳しい状況になるとして、緊急で節電を呼びかけました。

宮城県、福島県沖で16日に発生した最大震度6強の地震により火力発電所の12基が一時停止し、一部が復旧していないことなどが要因です。

東京電力は北海道電力など5社から電力融通を受けるなど、電力の供給が逼迫した状態が続いていました。

福島第一原発事故が起こった際にも私は提言しましたが、ブラックアウトを回避するためには電気使用率が95%を超えたタイミングで対処することが重要だと私は思います。

具体的には、電力使用率が95%を超えたら携帯電話・スマートフォンへ警告を通知します。

テレビ、冷蔵庫、冷房などでの電力の使用を控えるように促し、あるいは5階まではエレベーターの利用を中止するといった方法も良いでしょう。

このような厳戒警戒態勢を促さないと、北海道地震の際のように一気に北海道全体がブラックアウトするといった事態を招いてしまいます。

そうなると、病院などの施設にも電力を供給できず、命に関わる機器が作動しなくなる可能性もあり、絶対に回避すべきでしょう。

日本では原子力発電所が稼働しなくなったことで、需給関係が悪化しました。

東電管内の電気使用率はずっと高い水準のままです。

今回の件を良い機会として、厳戒警戒態勢の演習を積むようにして欲しいと思います。




原発攻撃への堅牢性を議論しても、袋小路に入るだけ


原子力規制委員会の更田委員長は16日、国内の原発の安全対策について「武力攻撃に対して堅牢性を持つ施設という議論は、計画もしていないし事実上無理」との考えを示しました。

ウクライナの原子力発電所がロシア軍に攻撃され、暴走事故になる一歩手前という状況でしたが、これは日本の原子炉にしても全く同様です。

飛行機事故などは想定内のことであり、格納容器によって守ることができます。

あるいは、ある種のテロリストが非常用電源のコードを抜いてしまうといった事故も想定内です。

しかし、爆弾やミサイルによる攻撃は想定外のことであり、格納容器があっても守りきれません。

そのレベルの堅牢性は想定していないので、「事実上無理」という発言は当たり前だと思います。

あらかじめ攻撃されることが分かっていれば、事前に原子炉を止めて対処することは可能です。

しかし、原子炉は停止して終わりではありません。

停止してからも長期間冷却し続ける必要があり、非常に難しい問題です。

この議論を進めても袋小路に入るだけで、国民の不安は増すだけだと私は思います。




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※この記事は3月20日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は東京電力HDのニュースを大前が解説しました。

大前はブラックアウトの危険性を述べ、「電気の使用量に応じた警戒レベルを決め、実際に警戒レベルに達した際はどのような行動を取るべきか何度も演習しておくべき」と述べています。

グローバル化や情報化が進んだ結果、リスクが企業に与えるインパクトや影響範囲は大きくなっています。

大きな損害を避けられるよう、考えられるリスクをあらかじめ想定し事前に防止策を講じておくことが大切です。



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