大前研一「ニュースの視点」Blog

KON923「ロシア国債/ロシア軍/フェイクニュース~ロシアはとんでもない情報戦を展開している」

2022年3月21日 フェイクニュース ロシア国債 ロシア軍

本文の内容
  • ロシア国債 格付けを2段階引き下げ「Ca」に
  • ロシア軍 ロシア軍がシリアで兵士募集
  • フェイクニュース ロシアがフェイクニュースを多数投稿

ウクライナはかつてのシリアの二の舞になる可能性がある


米国の格付け会社ムーディーズは6日、ロシア国債の格付けを2段階引き下げて「非常に投機的」にあたる「Ca」にすると発表しました。

またフィッチ・レーティングスも8日、ロシア国債の格付けを投機的水準の「B」からさらに引き下げて「C」とし、デフォルト寸前との見方を示しました。

プーチン大統領はウクライナへ無差別攻撃を始めています。

当初は軍事施設だけが攻撃対象だと発言していましたが、民間施設、病院などが攻撃されておりとんでもない事態になっています。

こうしたプーチン大統領の動きを見ていて、私はウクライナがシリアのような状態になる可能性があると懸念しています。

かつてロシアはアサド政権を救うため、同政権による化学兵器、生物兵器を用いた無差別攻撃を黙認しました。

ロシアの侵攻を受けて、ウクライナからの難民は日に日に増えており、西側諸国の方へどんどんと広がっています。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると現地時間9日午前0時時点でウクライナで殺害された市民は少なく見積もっても516人、その内子どもは37人とのことですが、私がニュース番組を見ている限りでは実数はもっと多いのではないかと感じます。

プーチン大統領としては、ウクライナに対して無差別攻撃をすることで、ウクライナの戦意を喪失させようという意図があるのでしょう。

しかしウクライナは決死の覚悟で抵抗姿勢を見せていて、戦意を喪失する様子はありません。

これはロシアの想定を上回っている状況だと思います。

ロシアとしても当初予定されていた戦力をほぼ全て投入したものの、状況を打開できずにいます。




シリアで兵士が集まっても、ロシアの思い通りになるかは疑問


米国国防総省のカービー報道官は7日、ロシア軍がシリアで兵士を募集しているとの見方を示しました。

ロシア軍はウクライナ国境に集結させた部隊のほぼ全てをウクライナ国内に投入していますが、キエフやハリコフなど都市部への進軍が停滞しているのを受けて、外国人部隊の追加投入で戦力の増強を図る考えとのことです。

兵士の募集条件は、週400ドル、月収20万円ほどのようです。

この金額だけを聞くと、こんなコンビニのアルバイトのような金額で兵士が集まるのかと思う人も多いでしょう。

しかし、実際リビアでは似たような条件で兵士を募集していましたし、シリアでもこのぐらいの報酬で兵士が集まってくる可能性はあると思います。

ただし、そのような兵士が、果たしてロシアが求める仕事をきちんとこなしてくれるのかというと、私はその点に大いに疑問を感じます。




フェイクニュース、情報統制、ロシア国内は恐ろしい事態に


米国の報道機関であるプロパブリカは、ロシア側がウクライナ側の嘘を暴くというフェイクニュースを多数投稿しているとする記事を掲載しました。

ウクライナの親ロ派勢力などがSNSで流している映像はフェイクニュースが多いと指摘。

映像に含まれる日付などのメタデータで真偽を判別できるものですが、ロシア側はこうした映像で話題を集めておき、ロシアの国営メディアで報じることが狙いとしています。

私は毎朝ロシアのニュース番組を見ていますが、明らかに様相が変わりました。

アナウンサーの顔に緊張感が溢れています。

「もし何か間違ったことを言ったら自分もひどい目にあわされる」というような切羽詰まった表情に見えます。

そのためニュース番組として、全く面白くなくなりました。

これは中国への緊張感がある香港のニュース番組もまったく同様ですし、中国や北朝鮮のニュース番組は言わずもがなといったところでしょう。

そして、ロシアは、「ウクライナが生物兵器を開発している」あるいは「ウクライナは核兵器を使おうとしている」など、フェイクニュースを意図的に流しています。

これらのフェイクニュースは今後の事態に対する伏線にもなっています。

例えば、ロシアが生物兵器を使った時には、「ウクライナに対抗するため」あるいは「ウクライナの生物兵器から漏れた」などと言うことができるでしょう。

正直言って、とんでもない情報戦を展開していると思います。

こんなフェイクニュースに溢れ、ロシア国民は何が正しいのかを見極められず、混乱していると思います。

例えば、ウクライナの病院が破壊された映像を、ロシアでは「ウクライナ側が破壊した」と報じていますが、それを信じてしまっているロシア国民も少なからずいるはずです。

さらに、ロシアは国民がインターネットで勝手に海外のニュースを見ることができないようにアクセスを遮断して、情報統制を敷いています。

ロシアがウクライナ侵攻を開始してから、一部の若者が反戦デモなどの行動を起こしましたが、片っ端から拘束されてしまっています。

そして、表向きには「プーチン大統領、ご苦労さま」と言わなければならない状況になっていて、非常に恐ろしいと感じます。




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※この記事は3月13日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はフェイクニュースについて大前が解説しました。

大前は「ロシアはテレビで意図的にフェイクニュースを流すことで、情報戦を繰り広げている」と指摘したうえで、「フェイクニュースや情報統制の影響によりロシア国民が正しい情報を把握できない状況になっている」と述べています。

新たな情報に接したら、情報の発信主体や発信日時、さらに他の情報源も確認することで情報の真偽を見極めましょう。

また、極端な主張に対しては、他の観点からの情報も参照して総合的に判断することで、よりメディアリテラシーを高めることができます。


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