大前研一「ニュースの視点」Blog

KON918「セブン&アイHD/西武HD/ソニー/日立製作所/ニコン~ハードウェアからの脱却を図る日立」

2022年2月14日 セブン&アイHD ソニー ニコン 日立製作所 西武HD

本文の内容
  • セブン&アイHD そごう・西武を売却へ
  • 西武HD シンガポールのGICに施設売却へ
  • ソニー 米バンジーを買収
  • 日立製作所 小島啓二社長がCEO兼務
  • ニコン 連結最終利益390億円見通し

セブン&アイHDでも立て直せなかった百貨店事業


セブン&アイHDが、傘下の百貨店大手のそごう・西武を売却する方向で最終調整に入ったことがわかりました。

セブン&アイは2006年に当時のミレニアムリテイリングを約2,000億円で子会社化しましたが、その後はネット通販の台頭やコロナ禍の影響で客足が遠のき、不振が続いていました。

百貨店は軒並み苦労していますが、結局セブン&アイも百貨店事業を大きくすることができず、売却することになってしまいました。

全国の百貨店の売上高(前年比)を見ても、ごくまれに神風が吹いたように回復することはありますが、全体的には非常に厳しい現状が伺えます。

セブン&アイHDのセグメント別業績を見ると、大型買収なども手掛けている「海外コンビニ」の営業収益は2兆円を超えており、営業利益も約900億円になっています。

次いで「スーパー」の営業収益も1.8兆円ほどと大きくなっていますが、営業利益は200億円ほどに留まっています。

セグメント全体の中でやはり「国内コンビニ」の存在感は抜群です。

約9,000億円の営業収益で約2,500億円の営業利益ですから、圧倒的な利益率を誇っています。

一方、百貨店は、4,000~5,000億円の営業収益があるものの今期赤字に転落しているという厳しい状況です。

こうした状況を見ると、百貨店事業を手放してしまうのも致し方ないかもしれません。




プリンスホテルの経営課題はコンテンツにあり


西武HDがプリンスホテルなど約30の施設を、シンガポールの政府系投資ファンドGICに売却する方向で調整しています。

売却額は1,500億円規模となる見通しで、新型コロナウイルス感染症の影響で鉄道やホテルの利用が低迷する中、資産を圧縮して経営効率を高める考えです。

GICは巨大な政府系ファンドで資金も潤沢に持っていますが、今回の買収にあたり、私は「本当にプリンスホテルの経営課題を理解しているのか?」と疑問です。

今回の買収では、ホテルの経営はそのままプリンスホテルに委託することになっています。

GIC自身にホテルの経営ノウハウがないからでしょうが、それではプリンスホテルを買収する意味はないと私は思います。

というのは、私に言わせればプリンスの問題は、ロケーションでも施設でもなくコンテンツだからです。

ロケーションも最高、施設も最高、しかしコンテンツだけがお粗末なので、今のように苦労する状況になっています。

経営課題がホテルのコンテンツにあるのに、今のままプリンスホテルに経営を任せても上手くいくはずがありません。

巨大な資金を持っていてもGICも単なる不動産屋であり、プリンスホテルの経営の中身まで理解しきれていないのだろうと思います。




世界的に大型買収が続くゲーム業界


ソニーインタラクティブエンタテインメントは先月末、米ゲーム会社・バンジーを買収すると発表しました。

買収額は約36億ドル(約4100億円)で、ゲーム業界の有力作品と人材の獲得競争がさらに加速する見通しです。

ゲーム関連の売上高世界トップは断トツでテンセントです。

ソニーは2位で、次いでアップル、マイクロソフト、グーグルとなっています。

ソニーのセグメント別業績を見ると、各事業で売上も利益も堅調です。

最近のゲーム業界では大型買収が続いています。

2021年には米マイクロソフトが米ベセスダの親会社を約75億ドルで買収、米エレクトロニック・アーツが米グル・モバイルを約21億ドルで買収しています。

また、今年に入ってからも、すでに米テイクツー・インタラクティブが米ジンガを約127億ドルで買収すると発表、さらにマイクロソフトはアクティビジョン・ブリザードを約687億ドルもの価格で買収すると発表しています。

今回のソニーによる米バンジー買収(36億ドル)は規模から見ると、比較的小さいと言えるでしょう。

世の中の流れとしてコンテンツの重要性がますます高まっています。

今、誰もが躍起になって、コンテンツの獲得に走っています。

逆に言うと、今何かしらのコンテンツ事業をやっていれば、どこか大きな会社が買収してくれるチャンスがあるという状況だと思います。




ハードウェアからの脱却を図る日立


日立製作所は4月1日から小島啓二社長がCEOを兼務すると発表しました。

小島氏が昨年掲げた営業利益を1兆円に増やす目標は今期7割まで達成できる見通しの一方、成長の柱とするIoT関連の売上高比率は1割に留まる見通しで、ITに精通した小島氏に権限を集中するとのことです。

日立のセグメント別業績を見るとそれほど悪くありませんが、常に高利益のシーメンスと比較される立場にあり、収益力が劣ると指摘されます。

それゆえ、収益力を強化するためにITコンテンツにシフトし、ハードウェアの会社から脱皮しようとしているのでしょう。

日立は2020年にスイスABBの送配電網(パワーグリッド)事業を買収し、送配電事業も強化しました。

この事業も活かし方はいくらでもあるので、これから先が楽しみです。




ミラーレス需要がずっと続くとは思えない


ニコンは3日、2022年3月期の連結最終損益が390億円の黒字となる見通しを明らかにしました。

従来予想から100億円上方修正したもので、半導体などの部品供給問題で販売台数は減少する一方、ミラーレスカメラなど高単価商品の販売が好調とのことです。

このニコンの最終利益の見通しには正直私も驚きました。

半導体関連の業績が上向いたものと推測しましたが、それに加えてカメラ事業が大きく利益を上げていました。

高価格帯のミラーレスカメラが売れているというのですから、本当に驚きです。

私も、今や大半はスマートフォンで撮影してしまいますし、周りを見渡してみてもスマートフォンで撮影している人ばかりで、ミラーレスのカメラを使っている人は見かけません。

一体どんな人たちがミラーレスカメラの需要を支えているのか、私には見当がつきません。

セグメント別業績を見ると半導体関連の精機事業は営業利益約6億円の赤字から約250億円の黒字へ回復し、映像事業も約360億円の赤字から約200億円の黒字に大きく回復しています。

こうした数字を見ると大きく期待してしまいそうですが、どのくらい今の状況が続くのか私は懸念しています。

この先もずっと高価格帯のミラーレスカメラが売れ続けるとは思えません。

ニコンやキャノンは今の状況がずっと続くと考えると危険かも知れません。




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※この記事は2月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は西武HDのニュースを大前が解説しました。

大前は「プリンスホテルはロケーションや施設ではなくコンテンツに問題があるのではないか」と指摘し、「売却後もプリンスホテルが経営を継続するが、現状を見直してから今後の目途を立てないとロケーションや施設が良くてもうまくいかない」と述べています。

発生したトラブルの根本的な原因を深く究明せずその場しのぎの対策を講じてしまうと、また同様のトラブルに見舞われる可能性があります。

課題を整理して構造化し、最も改善すべきポイントを突き止めたうえで解決策を導き出すことが重要です。



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