大前研一「ニュースの視点」Blog

KON915「世界10大リスク/中国情報統制/南シナ海情勢/北京冬季オリンピック~世界最大のリスクとは」

2022年1月24日 世界10大リスク 中国情報統制 北京冬季オリンピック 南シナ海情勢

本文の内容
  • 世界10大リスク 1位は「ゼロコロナ政策の失敗」
  • 中国情報統制 情報サービス管理規定
  • 南シナ海情勢 中国の主張に関する報告書
  • 北京冬季オリンピック 文大統領の訪中「検討していない」

世界最大のリスクは、米国の世界に対する理解力不足


米調査会社ユーラシア・グループは3日、2022年の世界10大リスクを発表しました。

1位は「ゼロコロナ政策の失敗」で、中国が新型コロナの変異株を封じ込められず、経済の混乱が世界に広がる可能性を指摘。

また、報告書では冒頭で、「米中がそれぞれの内政事情から内向き思考を一段と強め、戦争の可能性は低下する一方、世界の課題に対処する指導力や協調の欠如につながる」としました。

ユーラシア・グループ社長のイアン・ブレマー氏は、2011年に「Gゼロ」の時代の到来を指摘し話題になった人物です。

G2(米中)でもなく、「リーダーなき世界」を意味するGゼロを予測しました。

今回発表された10大リスクを見ると「当たらずとも遠からず」といった感じでしょう。

中国が新型コロナを封じ込められずに世界に広がっているということですが、コロナのような感染症は過去にも経験がありますし、むしろ私は10大リスクの順序について疑問の余地があると感じています。

今、最大の問題とすべきなのは、「米国が世界に対する理解を欠いている」ということだと私は思います。

ハチャメチャなトランプ前大統領が引っ掻き回した米国を、真面目に政治に取り組んできたバイデン大統領がどのように立て直せるのかと注目していました。

しかし、バイデン大統領のロシアや中国に対する理解はトランプ前大統領と変わらないほど低レベルですし、その他の対応を見てもとても期待できません。

米国が能力不足に陥り、世界を把握する力を弱めてしまっています。

それでも米国は世界をリードする立場という自負がありますから、様々な動きを見せます。

そんな米国こそ世界的に見て大きなリスクになるのではないかと私は見ています。




行き過ぎた中国の情報統制は、世界経済にとってもリスク


中国国家インターネット情報弁公室は5日、スマートフォン向けアプリなどの情報サービス管理規定の改定案を発表しました。

アプリの提供企業に対して中国当局にとって正しい政治的な方向性や世論誘導などを要求し、国家の安全を強化する内容を盛り込んだもので、今年中の施行を目指すとのことです。

習近平国家主席による情報統制は行き過ぎだと感じます。

これほど言論統制やネット統制を厳しくすると、中国人全体の考え方が狭くなり、偏狭な国民ばかりになってしまいます。

今や中国は世界に経済的な大きな影響力を持っているだけに、中国政府に盲目的に従うだけの国民が13億人もいたら、世界にとっても大きな問題になるかもしれません。

色々な意見を出し合って、その中で何が正しいのか議論する雰囲気を作っておくことは最低限必要なことだと思います。




トランプ前大統領を踏襲するだけのバイデン大統領


米国務省は12日、南シナ海を巡る中国の主張に関する報告書を公表しました。

南シナ海の大半で違法な海洋権益を訴えていると結論づけ、南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張する中国を批判する内容で、トランプ前政権の方針を踏襲し、南シナ海について中国に譲らない方針を鮮明にした形です。

バイデン大統領はトランプ前大統領との違いを明確にし、中国と新しい関係性を築き上げるべきです。

ところが実際には、トランプ前大統領が行っていたことを上書きするようなことしかやっていません。

今回の件も、従来の論争を踏襲しているだけです。

60ページに及ぶ報告書ですが、なぜ今さらこのようなものを提出してきたのか、私には理解できません。

そもそも、2016年のハーグ仲裁裁判所の判決に従うべきと言うならば、中国と争うのを避けた当事者であるフィリピンのドゥテルテ大統領を批判するべきでしょう。

当然のことながら、中国としては全く聞く耳を持っていません。

これは歴史的な問題であり、米国に口出しされる必要はないという一貫した態度を示しています。

領有権争いが生じている南シナ海の地域を見ると、日本のシーレーンのど真ん中です。

この問題は日本にとっても他人事ではありません。




文大統領の訪中「検討していない」は真実ではない


韓国の大統領府は12日、2月に開催される北京冬季オリンピックの開会式に文在寅大統領が参加することについて、「検討していない」ことを明らかにしました。

親中路線を強めてきた文氏は開会式に合わせた訪中の可能性を探っていましたが、新型コロナの感染拡大が続く中、習近平国家主席との首脳会談は困難と判断したためとのことです。

文在寅大統領は、念願の「朝鮮戦争の終戦」を何としても任期中にやり遂げたいと思っているはずです。

当初、北京冬季オリンピックには、足を運ぶ予定だったと思います。

米国と中国のトップに会える絶好の機会ですから、上手く利用して「朝鮮戦争の終戦」へつなげたかったことでしょう。

ところが、中国の習近平国家主席が姿を見せず、また北朝鮮の金正恩総書記も選手ともども参加する意思がないと判明したため、方針を変えたのだと思います。

文在寅大統領は「自分も参加を検討していない」と発表していますが、実際には検討した結果として「行く意味がなくなった」というのが実態でしょう。




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※この記事は1月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は世界10大リスクのニュースを大前が解説しました。

大前は、「長い間政治に取り組んできたはずのバイデン大統領の中国やロシアに対する理解の程度が低い」「アメリカが世界に対する理解を欠いていることは最大のリスクになる」と述べています。

交渉相手への理解が不足していると交渉をうまくまとめることが出来なかったり、トラブルへの対処が遅くなったりと大きなリスクを抱えてしまいます。

相手のポジションや権限、どのようなミッションを任されているのかなど事前の情報収集が大きな鍵となります。



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