- 本文の内容
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- 世界労働人口 移民なき時代へ人材争奪
- 単身世帯 「おひとりさま」家族の標準
- 世界都市人口 人口の3分の2が都市暮らしに
サイバー空間で能力ある人材を奪い合う時代になった
日経新聞は6日、「移民なき時代へ人材争奪」と題する記事を掲載しました。
アラブ首長国連邦やエストニアがリモートワークで高スキル人材を獲得するためのビザを創設したと紹介。
地域の企業で働かなくても稼ぐ人材に滞在を許可するもので、世界の人口が今世紀半ばにも減少に転じ、労働力を移民に頼ることが難しくなる中、今後は国境の壁を取り払って優秀な人材を獲得する工夫が求められるとしています。
これは極めて重要な問題だと思います。
単なるリモートワークではなく、能力のある人材をネットで輸入して仕事をしてもらうという発想です。
アラブ首長国連邦やエストニアはビザを発行し、それぞれの国籍を持って海外で仕事をすることを推奨しています。
ビザを持った人が世界各地にいてネットで仕事をしてくれるというのは、アラブ首長国連邦やエストニアにとってもメリットがあります。
人手が足りないからといって、建設業界などの特定業界を対象にした場当たり的な法案を通している日本とは大違いです。
今はサイバーでも人を奪い合う時代です。
建設業界に限らず、IT業界などにおいても圧倒的に人材が不足していることを日本は認識するべきでしょう。
単身世帯に注目し、新しいビジネスを狙うチャンスも生まれる
日経新聞は9日、「『おひとりさま』家族の標準」と題する記事を掲載しました。
世界の単身世帯数は2018年から2030年にかけて3割程度増加する見通しと紹介。
単身世帯の増加は介護や福祉の負担増加や孤独による心身への悪影響にもつながるとし、単身化が顕著なスウェーデンや米国では孤独な高齢者のケアとビジネスを両立させる動きも出てきたとしています。
この調査を見ると、日本に限らず世界中で単身世帯が広がっていたことがわかります。
特にスウェーデンは日本よりも単身世帯化が進んでいたというのは驚きでした。
今、世界では、若者が高齢者と一緒に住むスキームを提供するビジネスが広がっています。
高齢者は若者に面倒を見てもらう一方で、家族で住んでいた広い家の空いている部屋を安い値段で若者に住まわせてあげます。
かつて日本にもあった「寄宿」のようなものです。
一昔前の大学生は他人の家に寄宿して、その家の家事を手伝いながら勉強していました。
このような取り組みは、あらためて日本でも見直されるべきだと思います。
今の若者はファーストフードなどでアルバイトをする人が多いと思いますが、このような高齢者向けサービスで経験を積むことは非常に有益だと思います。
社会的に高齢者の訪問サービスのニーズも大きくなっていますし、若者にしても様々なノウハウを吸収することができ、もしかすると将来起業につながるようなキッカケを掴めるかも知れません。
今、日本では約38%が単独世帯となっています。
まさに日本でコンビニが流行っている理由でしょう。
家族4人分の食事の買い出しに車でスーパーへ出かけていたのはもう昔の時代です。
今はそんなに大量に食料を買い込んでも1人ではとても食べきれません。
コンビニで1人が食べるのに必要な分だけ買うという時代になりました。
この問題は単なる家族構成の話ではなく、あらゆる問題につながります。
例えば、高齢者が1人で住んでいるというのは何かと危険を伴いますし、家の掃除やメンテナンスも難しくなります。
逆に言えば、こうした問題を解決するための新しい事業を作り上げる必要があり、ビジネスチャンスが眠っているとも言えるでしょう。
都市化が進むことで、田舎と都会それぞれに問題が発生する
日経新聞は6日、「3分の2が都市暮らしに」と題する記事を掲載しました。
国連の推計によると2035年に都市の人口は総人口の51.7%と農村を超え、2050年には世界の人口の3分の2以上が豊かさを求めて都市に住む見通しだと紹介。
都市への集中が目立つのは南アジアやアフリカで、都市化の進行と膨張はインフラなど都市の機能をどう維持していくかという問題につながるとしています。
これは私が約20年前に上梓した「新・資本論」から提唱しているメガリージョン(大都市圏)構想そのものです。
21世紀はイノベーションを起こした都市に世界からヒト、モノ、カネ、情報が集まってくる時代になり、富は国家ではなくプラットフォームでつくられるため、そのビジョンが重要だという考え方です。
日本は東京に一極集中して大変だと言われていますが、まだまだ余裕があります。
世界的に見れば東京の一極集中は大したレベルではありません。
昔から日本では出稼ぎで東京に来た人は故郷に帰りたい想いが強いというのが定番でした。
日本の歌謡曲の中には望郷の念を歌ったものがたくさんありますし、私が中学生の頃はそんな歌で溢れていました。
一方、他国では少し様相が違います。
30年ほど前にジャカルタのホテルでマッサージを受けたとき、それを痛感した思い出があります。
インドネシアの島から出稼ぎでジャカルタに来ていたそのマッサージ師は、絶対に故郷の島には帰りたくないと話していました。
ジャカルタでの生活も豊かとは言えないけど、生まれ育った故郷の島に比べれば天国のような島だと。
私から見れば、当時のジャカルタは発展しているとは言い難い街でした。
インドネシアの田舎生活というのは、私たち日本人が想像する以上に大変なのだと気付きました。
世界的にはむしろこのジャカルタのマッサージ師の考え方が一般的であり、とにかく都市で暮らしたいという人が増え続けてきたのです。
その結果、都市における居住者の比率が世界的に7割に達するようになったのだと思います。
このように都市への居住者が増えると、田舎と都市でそれぞれ様々な問題が起こります。
例えば、田舎では居住者が減ってコンビニどころか警察さえないという地域もあります。
そのような地域で生活が成り立つのかというのは大きな問題です。
逆に都市においては、増加した人口に対応できるインフラが整備されていないため機能不全に陥り、生活しづらく、ゴミや犯罪の巣窟になっている地域が世界には数多く存在します。
日本は大都市でも何とか機能していると言えますが、世界を見渡すと都市化に伴う機能不全は非常に由々しき問題になっています。
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※この記事は12月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は単身世帯のニュースを大前が解説しました。
大前は若者による高齢者訪問サービス等に触れ、「家族構成が変化することにより様々な課題が発生するため、新しい事業を工夫して作り上げていかなければならない」と述べています。
企業が社会課題の解決に取り組むことは、新しいビジネスチャンスに繋がります。
世界が直面している社会課題を理解し、自分たちの事業はどのように課題解決に向けて貢献できるか検討してみましょう。
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