- 本文の内容
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- 東芝 事業別に3分割を検討
- 米ゼネラル・エレクトリック 3事業への分割を発表
- 独シーメンス 純利益約8060億円
東芝の事業3分割が成功しない理由とは?
東芝が会社全体を主要な事業ごとに3つに分割します。
本体とグループで手掛ける事業をインフラ、デバイス、半導体メモリーの3つの会社に再編しそれぞれが上場する計画で、収益構造や成長戦略が異なる事業を独立させ、各事業の価値をわかりやすくするとのことです。
事業を分割して再上場を目指すのは良いと思いますが、分割の仕方に問題があると私は思います。
ただ3分割しただけでは「戦略」とはとても呼べません。
もっと個別の事業において、「勝てる」ように差別化要因を見極める必要があります。
そもそも3事業のうち可能性を感じるのはインフラ事業の一部のみです。
残り2事業は全体としてアップサイドがほとんど見込めない状況ですし、半導体メモリー事業にいたっては本社がキオクシアの株を保有しているに過ぎず上場するなど夢の話です。
インフラ事業についてもざっくりとまとめるのではなく、1つ1つの事業で「勝てる」状況を作る必要があります。
例えばPOSシステムや複合機で一時代を築いた東芝テック。
米スクエア社などが登場し、マイクロソフト製品やiPadを使えば簡単に代替できるようになり、今や危機的な状況に陥っています。
そんな東芝テックの事業を立て直すつもりなら、他の事業と一緒にして曖昧にするのではなく単体勝負するべきです。
本気で米スクエア社に立ち向かって勝てる戦略を考えなければいけないと思います。
日立は配送電システムを強化するためにスイス重電大手ABBの送配電事業を買収しました。
今のところ東芝にはこのような動きが全く見られません。
上下水道システムはほとんど事業にならないレベルですし、鉄道交通システムも日立に比べて圧倒的に弱いと言わざるを得ません。
今回発表された3つの事業分割のままでは、勝てる見通しはほとんどないと私は感じています。
GEも東芝もシーメンスをお手本として、事業の管理・整理を
米ゼネラル・エレクトリックは9日、会社全体を航空エンジン、医療機器、電力の3事業に分割すると発表しました。
GEの場合はこの3事業で勝負することは東芝とは異なり十分可能だと思います。
航空エンジン事業はロールスロイス、レイセオン・テクノロジーズと並び世界3強の1つですし、医療事業についてもシーメンスとフィリップスなどと並んでいます。
電力事業は今のところほとんど利益は出ていませんが、それでも東芝とは違い1つの事業に絞っていますから、今後の戦略次第では勝てる可能性はあるでしょう。
東芝と比較すると、自分たちが勝負できる領域をきちんと見極めていると感じます。
そんなGEや東芝にとって良い事例となるのがシーメンスです。
11日に独シーメンスが発表した2021年9月期通期決算は、純利益が継続事業ベースで前期比53%増の61億6100万ユーロ(約8060億円)でした。
事業再開を急ぐ顧客からの工場のデジタル化需要が旺盛だったことが寄与したとのことです。
シーメンスは収益が出なくなった原子力事業に早々に見切りをつけて、デジタルインダストリー事業(ファクトリーオートメーションなど)、スマートインフラ事業(電力、ビル)、モビリティ事業(鉄道)などを管理・整理してきました。
その結果、各事業において全世界で勝負できる体制を作り上げてきました。
今はいずれの事業も利益を出しており増収傾向です。
シーメンスのやり方はこの業界の成功事例として1つの指針になると思います。
証券アナリストも、事業価値を見極める目を持つべき
東芝やGEのような巨大コングロマリットの企業が分社化する動きを見せていて、結果としてコングロマリットディスカウントの状況が生まれています。
これは企業側の問題だけでなく、証券アナリストの怠慢も問題だと私は思います。
1つ1つの事業価値を正しく見極めていれば、本来であれば分割・分社化したからといって大幅に企業価値が向上すると考えるのはおかしいはずです。
もちろん企業側のIR活動に怠慢があるからとも言えますが、それでも証券アナリストにはもっと厳格かつ的確な見極めをしてほしいと思います。
例えば、今回発表された東芝の事業分割において少なくとも半導体メモリー事業については厳しいコメントを出して然るべきでしょう。
上述したように、本社がキオクシア株を40%程度保有しているに過ぎないのですから、上場する見込みなど絶望的です。
変化の早い時代なのだから事業分割するのは正しいという一般論だけで解釈していては話になりません。
分割が良いのかどうか正しく評価できる目を持ってほしいと思います。
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※この記事は11月14日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は独シーメンスのニュースを大前が解説しました。
大前は独シーメンスについて、東芝やGEの状況と比較しながら「シーメンスは原子力事業の撤退など事業整理を大幅に進めて全世界で勝負できる体制を作り上げてきた」と述べています。
事業ポートフォリオの最適化のためには時に「撤退」という選択も必要となります。
世界で戦うためには、大胆な取捨選択を行いリソースを集中させる必要があります。
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