- 本文の内容
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- 新生銀行 SBIによるTOB防衛策に賛成推奨
- 国内スーパー大手 神戸地裁に決議差し止めの仮処分申請
- 大手百貨店 三越伊勢丹、不動産で稼ぐことを目指す
助言会社とSBIに板挟みになって、政府・役人は困惑している
SBIホールディングスからのTOB(株式公開買い付け)に対抗するために打ち出した買収防衛策について、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は8日、防衛策導入議案への賛成を推奨しました。
助言会社は防衛策に対して通常否定的な立場をとりますが、今回はSBIからより良い条件を引き出す交渉材料になることなどから賛成に回ったもので、25日の臨時株主総会に向けて新生銀行株の2割強を保有する預金保険機構など国の判断が焦点となりそうです。
新生銀行株の保有率を見ると新生銀行自体が約16%、SBIも同じく約16%を保有しています。
次いで、預金保険機構が約10%、整理回収機構が約7%となっています。
SBIはTOBによって48%まで買い増すと発表していて、買い増し分の半分以上は預金保険機構と整理回収機構から取得するつもりだと思います。
おそらく北尾社長はすでに交渉して話をつけているでしょう。
また、12日に旧村上ファンド系の投資会社であるシティインデックスイレブンスが5.29%を取得していることが判明したので、こちらの動向も争点になるかも知れません。
SBIは買収防衛策で対抗されるなら、今回のTOBをやめると公表していました。
そのような状況の中、助言会社は極めて「際どい提言」をしたと私は感じます。
預金保険機構と整理回収機構は国が運営する機関で、判断するのは役人です。
助言会社が買収防衛策を推奨したとなると、その意向に沿うのが自然な形です。
しかし、そうなると、SBI北尾社長と敵対する形になるため、非常に難しい意思決定を迫られていると思います。
重要なのは、今の新生銀行のままでは国は公的資金を回収しきれないということです。
単純に株価を考えると、新生銀行の価値が今の約4倍にならなければ、旧日本長期信用銀行時代に注入した約3,500億円を回収できない計算になります。
新生銀行自体が自社の価値を上げていくことができれば良いのですが、それは不可能に近いでしょう。
一方、SBI北尾社長はその青写真を持っています。
他の銀行と統合することで、新生銀行の価値を数倍にあげられると豪語しており、実現できる可能性は十分あると思います。
当然国としては税金を投入したわけですから、資金を回収するためにも価値を確実に上げてくれる方を選びたいはずです。
が、助言会社からの提言によって非常にややこしい事態になっています。
このような状況の中で最終的に役人がどちらの意思決定を選択するのか、注目したいところです。
臨時株主総会の状況を細かく確認する必要がある
先月29日に開かれた関西スーパーマーケットの臨時株主総会で、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリンググループとの株式交換契約が決議されたことについて、食品スーパーのオーケーは9日、神戸地裁に決議差し止めの仮処分を申請したと発表しました。
総会で棄権とみなされる白票が賛成と扱われたことで、賛成率が可決に達したためとのことです。
これにより、関西スーパーマーケットの再建は白紙に戻る可能性も浮上してきています。
可決と否決の差が0.02%という、私も今まで見たことのない僅差でした。
関係者によると、株主1名の投票でひっくり返るレベルとも聞いています。
そこで問題となっているのは、元々事前投票で賛成を投じていた株主1名が、総会当日の投票の際には「白票」で投票したということです。
当日白票で投票した場合には「棄権」扱いとなるため否決票になるはずが、関西スーパー側は事前投票の判断を優先して「賛成」で処理したため、オーケー側が決議差止めを求めたということです。
臨時株主総会の当日にどのような説明がなされていたのかや説明に曖昧な部分はなかったのかといった、細かい状況を1つ1つ確認する必要があると思います。
非常に微妙な判断を迫られていて、予断を許さない状況だと思います。
百貨店が不動産屋で稼ぐ「高島屋モデル」はもう古い
日経新聞は9日「三越伊勢丹、不動産で稼ぐ」と題する記事を掲載しました。
三越伊勢丹ホールディングスが百貨店事業中心の収益構造を見直し、不動産と金融で5割を稼ぐ構造を目指していると紹介していました。
ここからECの展開にも注力するのではないかという見方もあるようです。
百貨店が不動産で稼ぐというのは高島屋が打ち出した戦略であり、タイムズスクエアが成功事例になっていますが、私に言わせればこの戦略自体がそもそも時代遅れです。
今、百貨店の従来型事業は変化を余儀なくされています。
例えば大阪梅田の阪急百貨店には、かつて芦屋方面から阪急電車に乗って通ってくれる常連客が大勢いました。
しかし高齢化が進み、段々と百貨店に足を運ぶことが減ってきています。
このような高齢の富裕層をメインターゲットと考えると、百貨店がEコマースに注力しても意味がないことがわかります。
高齢のお客さんがEコマースを使わずに家にいながら買い物ができるようにすることが重要です。
つまり、充実させるべきなのはEコマースではなく「外商」です。
直接家に出向いて商品の説明をし、注文を取ったら、後日家まで商品を届けるのです。
東京の高島屋でも、新宿店や日本橋店よりも高齢者が近くに住んでいる二子玉川店の方が盛り上がっているそうですが、まさに同じ理由でしょう。
こうした百貨店を取り巻く状況を踏まえて、三越伊勢丹の考え方が問われていると思います。
不動産で稼ぐという「高島屋モデル」を踏襲すれば良かったという時代はとっくに終わっています。
これから先、EC弱者とも言うべき高齢の富裕層に対していかにアプローチしていけるかという点が重要です。
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※この記事は11月14日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は大手百貨店のニュースを大前が解説しました。
大前は「ターミナル駅にある百貨店の店舗まで足を運べず、ECサイトの利用が難しい高齢者への外商サービスが今後重要性を増す」と述べています。
外部環境の変化によって自社にとっての機会や脅威も大きく変わっていきます。
機会を活かせる自社の強みは何か、逆に脅威に対してどのような対策が出来るか定期的に見直すことが大切です。
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