大前研一「ニュースの視点」Blog

KON905「キーエンス/サイバーエージェント/日立建機/JT/SBIHD/食べログ~日立建機は売却すべきではない」

2021年11月8日 JT SBIHD キーエンス サイバーエージェント 日立建機 食べログ

本文の内容
  • キーエンス 人へ投資が高収益の源
  • サイバーエージェント ゲーム頼みの最高益
  • 日立建機 株価が一時前日比7%高
  • JT 加熱式たばこ、なぜ出遅れた?
  • SBIHD 新生銀TOBの条件変更否決
  • 食べログ グルメサイトで店の点数急落、独禁法違反の恐れも

キーエンスの営業手法の強み


日経新聞は先月29日、「人へ投資が高収益の源」と題する記事を掲載しました。

センサー大手のキーエンスが先月28日に発表した2021年4~9月の連結決算は純利益が前年同期比68%増となり、3年ぶりに過去最高を更新しました。

強みは営業力を支える高い給与水準で、平均年収は1700万円台と10年で3割増加したとのことです。

日本全体の平均年収が伸びていない中、キーエンスは給与水準が上昇しています。

キーエンス創業者の滝崎氏は、昔から「儲からない仕事は取るな」という姿勢でした。

そしてキーエンスでは、理系でも文系でも必ず営業を経験させます。

その営業手法は徹底した「ソリューション営業」です。

相手の工場の中に入り込んで業務のボトルネックを見つけます。

そして、そのボトルネックを解消するシステムを提案するというものです。

例えば、システムによってボトルネックを解消することで利益が240億円増加することがわかれば、提案されたシステムが24億円だったとしても顧客にとっては高くないはずです。

もしそれでも高いと言われるのなら「今まで通りの業務を続けてください」と安易な値引き営業をしない方針です。

一般的な企業の営業手法は基本的には自社の商品を買ってくれという「モノ売り」の営業スタイルが圧倒的に多いでしょう。

そのようなモノ売り営業をせず値引きをしないからこそ、キーエンスは高収益を維持できています。

1つ誤解して欲しくないのは、キーエンスの労働分配率は決して高くなく、むしろ低い水準であるということです。

つまり、給与が高いと言われていますが、実際の収益から見るとまだまだ高い給与を払う余力さえあるということです。

日本ではトヨタに次ぐ時価総額を誇るキーエンスは、1980年代からずっとこのような経営を継続しています。




サイバーエージェントは赤字のメディア事業を継続するのか?


日経新聞は先月28日、「ゲーム頼みの最高益」と題する記事を掲載しました。

サイバーエージェントが成長事業と見込むネットテレビAbemaが苦戦しているとのことです。

昨期の決算で電通グループが大幅な赤字に陥る市場環境においても、サイバーエージェントは堅調に利益を出していました。

セグメント業績を見ると、インターネット広告、ゲームが大きな黒字を出している一方で、ネットテレビAbemaのメディア事業は赤字が続いています。

メディア事業については藤田社長が自ら陣頭指揮をとっている事業で、非常に強い思い入れを感じます。

すでにAbema事業の収益化の目処が立っているのかもしれませんが、メルカリが赤字でも米国で展開しようとしているように、血まみれになろうともやり抜きたいという意向なのかもしれません。




日立建機は売却すべきではない


先月27日の東京株式市場で日立建機の株価が4日続伸し、一時、前日比7%高の3720円まで上昇しました。

前日の取引終了後に発表した2021年4~9月期の連結決算が市場予想を上回ったこと、また2022年3月期の通期決算を上方修正したことなどが好感されました。

キャタピラーもコマツも好業績を出していますし、世界化に成功した日立建機ならこのくらいの業績を出すのは当然だと私は思います。

この日立建機を日立グループは売却する動きを見せていますが、非常にもったいないと思います。

これだけの好業績を出していて株価も上昇傾向です。

さらに言えば、生活家電などが低迷しもはや世界的に「日立」の名前を広めるのが難しい今、日立建機があれば「日立(HITACHI)」の名前が付いている商品を欧米に広めることができるというのも大きなメリットだと私は思います。

なぜこんな優良企業を売却しようとするのか、私には全く理解できません。




経営者とは思えない弱腰姿勢のJT寺畠社長/強気の姿勢を示すSBI北尾社長


日経新聞は先月28日、「加熱式たばこ、なぜ出遅れた?」と題する記事を掲載しました。

JTの寺畠社長が日経新聞のインタビューに応じ、米のフィリップ・モリス・インターナショナルに加熱式で差をつけられたことに対して「消費者を見ていなかった、ニーズの変化に気づけなかった」と語りました。

消費者のニーズに気づけなかったというのは信じられない発言です。

正直、経営者としては、出直したほうが良いと思えるほどです。

一方で、相変わらず強気な態度でTOB交渉を続けているのがSBI北尾社長です。

先月28日、SBIホールディングスの北尾社長は新生銀行に対するTOBについて、「買付価格を一銭も増やすつもりはない」と語りました。

SBIは9月10日にTOBを開始し、新生銀行株の48%を上限に1株2000円で取得して子会社化する方針ですが、新生銀行はSBIが買付上限を撤廃した上で取得価格を引き上げればTOBに賛同すると表明していました。

北尾社長が怒っている表情を久しぶりに見ました。

「長年公的資金を返していないのは新生銀行(元長銀)だけで、これでは泥棒と一緒だ」と強い調子で語っていました。

北尾社長はこうした強気の交渉が天才的に上手な人なので、今後の展開には注目したいと思います。




食べログは独禁法違反になる可能性が高い


日経新聞は先月31日、「グルメサイトで店の点数急落、独禁法違反の恐れも」と題する記事を掲載しました。

焼き肉や韓国料理の飲食チェーンを展開する韓流村が食べログを運営するカカクコムを相手に起こした訴訟で、公正取引委員会が裁判所に意見書を提出したとのことです。

評価制度のロジックが明確であれば問題ないのでしょうが、評価ロジックも理由もわからないまま低評価を付けられれば店舗経営に影響が出るでしょうし、このような問題に発展するのは必然と言えるかも知れません。

現在の状況を見ていると独禁法に抵触しているのでは?という方向で調査をしているようです。

このままなら、裁判所が独禁法違反という判断をする可能性が高いと私は見ています。




---
※この記事は10月31日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はサイバーエージェントのニュースを大前が解説しました。

大前はサイバーエージェントがメディア事業に取り組んでいる要因として「メディア事業の収益化の目途が立っており、注力したいと考えているのではないか」「他の事業の業績が良く、メディア事業に取り組む余力があるのではないか」とデータや他社の状況から推測しています。

データ同士を比較したり、複数のデータを組み合わせて分析することで、筋の良い仮説を創ることが出来ます。

意思決定を行う際には関連するデータを複数収集・分析し、総合的に判断することが大切です。



▼3分であなたのグローバル人材度をチェックしてみませんか?
世界の大前研一から特命を受け急遽世界一周のビジネストリップへ!
果たして、あなたはグローバル人材として通用するのか!?
http://www.ohmae.ac.jp/ex/english/biztest/?utm_source=lte_mail&utm_medium=mail&utm_campaign=20211105_lte

問題解決力トレーニングプログラム

問題解決力トレーニングプログラム

大前研一 ニュースの視点 Blogトップへ

  • メルマガ

    ニュースの視点メルマガ登録

最近の投稿記事

ニュースの視点メルマガ登録

ブログの更新情報

バックナンバー

  • facebook
  • twitter

各種ソーシャルメディアで様々な情報をお届けしております。

大前研一 ニュースの視点