- 本文の内容
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- 自民党総裁選 岸田文雄氏が新総裁選出
- 緊急事態宣言 9月30日で全面解除
岸田氏が河野氏を逆転したシナリオ
自民党総裁選の投開票が先月29日に行われ、岸田前政務調査会長が新総裁に選出されました。
岸田氏は党本部の会見で「丁寧で寛容な政治を行う」と表明するとともに、閣僚党役員人事については中堅若手の登用を進める考えを示しました。
党員・党友票で圧勝した河野氏が有利と見られていましたが、安倍氏が応援する高市氏が岸田氏陣営に協力することで、河野氏を上回りました。
高市氏の政策などを聞いていると、彼女はもはや「女性版の安倍氏」とも言える存在でした。
その高市氏で獲得した議員票114票を一気に岸田氏に移しました。
もともと「河野対岸田」という対立では勝ち目がないと判断していたのでしょう。
その劣勢を覆すために、高市氏を出馬させたとも感じます。
もちろん、この筋書きを描いたのは岸田氏ではありません。
こういう戦略を得意とするのが、「安倍氏、甘利氏、麻生氏」の3人です。
3人の戦略に見事にはまってしまったという面もありますが、もっと本質的な点として、河野氏は議員票を獲得できなかった理由を考えるべきだと思います。
歯に衣着せぬ発言でも注目を集めることが多い河野氏ですが、私に言わせれば、「自分が言いたいことを言って、やりたいことをやるのが改革」だと勘違いしているところがあったと思います。
一時的に目立った存在にはなれるかも知れませんが、それでは議員票を獲得することはできません。
今回の総裁選では、そういった「河野太郎氏の青さ」が目立つ結果となったと感じます。
組閣人事に見える、安倍・甘利氏の影響力の強さ
総裁選の結果を踏まえた人事に目を向けると、「安倍氏、甘利氏」の影響力が増し「河野氏」への懲罰的とも言える人事になったと言えます。
麻生氏は副総理兼財務大臣から副総裁のみに専念させる形になっていますが、甘利氏を幹事長に置くことで、安倍氏と麻生氏にとっては政権を「操りやすい形」となっており、「安倍傀儡」であることが明確にわかります。
その他組閣人事を見ると、外務大臣の茂木氏、防衛大臣の岸氏が再任となっています。
岸氏は体調不良が伝えられていたのに再任となったのは、安倍氏の弟ということを配慮した妥協人事だと私は思います。
そして、経済産業大臣に就任した萩生田氏は安倍氏の側近中の側近です。
経済再生大臣には、西村氏が外されて山際氏。
デジタル大臣には、就任したばかりだった平井氏から牧島氏へ代わることになります。
あれほど毎日頑張っていた西村氏が再任されないというのは、明らかに河野氏が敗北した影響でしょう。
河野氏を支援していた小泉進次郎元環境大臣も再任されることはありませんでした。
そして、河野氏本人も、行政改革担当大臣から広報本部長という明らかな閑職に就くことになりました。
これほど露骨な人事は、私もほとんど記憶していないほどです。
官房長官の松野氏は、国民とコミュニケーションを取るという重要な役割を担うことになります。
その役割を務めることができるのかどうか、数ヶ月様子を見てみないとわかりません。
現在のところ、唯一評価できる点は、二階氏を降ろしたことでしょう。
今回岸田氏は自民党の役員任期を1年とし、最大3回までと決めることで二階氏を追い出すことに成功しました。
菅前首相は同じことを試みましたが返り討ちに遭いましたし、今まで誰も実現できなかったことでした。
14日に衆議院を解散し総選挙に臨むことになりますが、今回の総裁選で4人も出馬して盛り上がったこともあり、自民党は支持率を向上させています。
一方、野党は情けない状態が続いていて、何も新しいことを打ち出せていません。
野党が全体で1つにまとまることも難しいでしょうし、おそらく総選挙で野党は自民党にまともに対抗できないでしょう。
今このタイミングで、全国一斉に宣言解除された理由は?
政府は先月30日、新型コロナ対策で発令していた緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を全面解除しました。
約半年ぶりに全国で宣言と重点措置が発令されていない状態になります。
約1ヶ月間は行動制限を残して段階的な緩和を探り、経済再開に向けて新型コロナとの共存が試される段階となります。
色々な方面から指摘を受けていますが、「全面解除」は良いとして、結局のところ感染者数が下がった理由がわからないという点に大きな問題があると私は思います。
ワクチン接種の効果だという人もいるかもしれませんが、英国や米国の例を見ると、むしろワクチン接種が逆効果になっているような数字も出ていて、感染者数が減った説明にはなりません。
症状が表れていなくても間接的に感染してしまった人たちが大勢いて、体内に抗体ができた結果だという説もありますが、これも明確に証明できていません。
政府分科会の尾身会長も言葉を濁すばかりで、全く話にならないと私は思っています。
100年前のスペイン風邪は発生から3年ほど経過した頃から急激に感染者数が下がりました。
ワクチン接種などの対策の結果ではなく、自然と減少していったと言えます。
今回の新型コロナも、同じようになる可能性はあると思います。
一向に明確な理由がわからないまま、今回全面解除となったのは「選挙」のタイミングに合わせたという見方もあります。
19日に選挙が公示されるとなると、今このタイミングで全国一斉に解除とするのは「絶妙なタイミング」だと言わざるを得ません。
ここで少し気が緩んで再度2~3週間遅れで感染者数が伸びても、その頃には12月に入っているでしょうから、選挙への影響はありません。
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※この記事は10月3日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は自民党総裁選のニュースを大前が解説しました。
大前は、「自民党は各総裁候補の政策の違いに注目を集めることが出来た一方、野党は新しいことを何も言えず国民の支持を集められなかった」と指摘しています。
変化の早い時代だからこそ、リーダーは進むべき道を提示する必要があります。
形のないところから新しい姿を創り出す、構想力の有無が問われています。
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