大前研一「ニュースの視点」Blog

KON898「欧州新型コロナ対策/米新型コロナ対策/国内金融政策/資金調達~アベクロ、アベノミクスを継承するなど論外」

2021年9月20日 国内金融政策 欧州新型コロナ対策 米新型コロナ対策 資金調達

本文の内容
  • 欧州新型コロナ対策 渡航認めるリストから6カ国除外
  • 米新型コロナ対策 新たな感染抑制策を発表
  • 国内金融政策 日銀緩和頼み、空転20年
  • 資金調達 コロナ長期化で資本増強

実態を見れば、日本が外国から除外されるなどあり得ない


欧州連合(EU)は9日、域外からの観光など不要不急の渡航を認めるリストから日本など6カ国を除外したと発表しました。

各国の新型コロナ感染拡大を受けた措置ですが、EUではすでにドイツが日本からの渡航を制限しており、他の加盟国にも制限が広がる可能性があります。

日本はワクチン接種が遅れているものの、世界の各国に比べて感染者数、死者数ともに多くありません。

正しい現状を世界に向けてきちんと説明すれば、このような仕打ちを受けなくて済むはずです。

日本をリストから除外したというドイツと比べて見ても、感染者数も死者数もドイツの方が圧倒的に多い状況です。

私に言わせれば「ドイツに言われる筋合いはない」と思いますし、本来外務省は毅然と強く伝えるべきです。

日本の外務省の力が弱っているから、このような事態を招いてしまったのだと私は思います。



ワクチン接種と感染抑制の関係性をあらためて研究するべき


米バイデン大統領は9日、新型コロナの感染拡大を防ぐ新たな計画を発表しました。

米国内の企業に従業員が働く必須条件としてワクチン接種か週一回の陰性証明を要請することなどを盛り込んだもので、罰則を伴う厳しい措置を取り入れ、感染力の強いデルタ株の影響を抑える考えです。

この計画に従わない雇用主は罰金約150万円を科されることになると言われています。

まさに全体主義国家のような様相を呈してきており、やや心配です。

イスラエル、スペイン、カナダを筆頭にワクチン接種が進んでいる国もありますが、ワクチン接種によって感染者数が抑えられているとは言い切れない状況です。

日本よりもワクチン接種が進んでいる英国の感染者数は、日本を大きく上回っています。

英国の人口は日本の半分以下で、感染者数は約2倍ですから、感染率で言えば約4倍です。

また、英国や米国ではワクチン接種が進んでいるのに、感染者数も死亡者数も増加傾向にあります。

これは、ワクチン接種に安心して、マスクを取って生活し、ときには大規模なスポーツイベントなどが開催されるようになったからだと私は思います。

ワクチン接種をしたとしても、しばらくの間、マスクを外さずに気をつけて生活をするようにすべきかもしれません。

100年前に猛威を奮ったスペイン風邪も落ち着くまでに3年を要しました。

今回の新型コロナも同様に考えれば、もうしばらく、今のような状況が続くと考えた方が良いでしょう。

一方で、経済を回すということも重要ですから、「酒の禁止」「営業時間は20時まで」など、根拠が薄い理不尽な取り決めについては再考する必要があると思います。

あらためて、様々な状況を分析して本当に必要な処置か否かを見極めるべきです。

経済が回らなくなってしまう状況は絶対に避けなければなりません。



黒田総裁の悲劇は、20世紀の経済原理しか知らなかったこと


日経新聞は9日、「日銀緩和頼み、空転20年」と題する記事を掲載しました。

日銀の黒田総裁が日経新聞のインタビューで「デフレの影響が人々のマインドセットに残っている」と述べ、粘り強く大規模な金融緩和を続ける考えを強調したと紹介。

米や欧州の金融機関はインフレ懸念から緩和縮小を探り始めた一方、物価低迷が続く日本は蚊帳の外で、低温経済から抜け出せない現状としています。

黒田総裁の悲劇は、20世紀の経済政策しか知らなかったことです。

低金利とマネーサプライでコントロールするという方法は、私に言わせれば時代遅れであり、政策そのものがズレていたと言わざるを得ません。

私は何度も主張していますが、今21世紀の日本は低欲望社会です。

20世紀の成長期時代、高欲望社会とは、全く根底から違うということです。

低欲望社会においては、人々はお金を持っていても積極的に使おうとしません。

低金利とマネーサプライで市場をお金でジャブジャブにしても効果はないのです。

日本において、20世紀型の経済政策が通用しなかったということについて、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン氏も、ニューヨーク・タイムズ紙で「予想外」だったと認めています。

そんな状況に追い打ちをかけるように、安倍政権は「人生100年」などと発表し、定年の年齢を引き上げ「70歳まで働かなくてはいけない」と示唆しました。

貯蓄推奨の低欲望社会において、こんなスローガンを打ち出したら、なおさらお金を使わなくなるのは当たり前です。

おかげで日本のGDP成長率は低迷し、他国がインフレ懸念する中、日本だけは早々にインフレ懸念すら必要ない状況になっています。

低欲望社会を前提とした政策を考えるなら、日本には1800兆円の貯蓄が眠っているわけですから、低金利にするのではなく、むしろ金利を高くするべきなのです。

たった1%金利を上げるだけでも、約18兆円も「使えるお金」を増やすことができます。

20世紀型の古い経済観念に囚われた人たちには退いてもらって、今後は新しい日本の経済政策を考えられる人に活躍してほしいと心から思います。

総裁選に出馬表明をした高市早苗氏は、アベノミクスを強化していきたいなどと発言しているようですが、アベクロ、アベノミクスを継承するなど論外だと私は思います。



資金調達が可能なうちに、資本を増強しておくしかない


日経新聞は10日、「コロナ長期化で資本増強」と題する記事を掲載しました。

2021年4月~9月の増資や劣後債発行などによる調達額が約3兆7800億円と、前年比18%増加したと紹介。

目立つのが運輸や外食などのコロナの影響が大きい業種で、財務の悪化を軽減しながら運転資金や中長期の成長投資の原資を確保する動きとしています。

航空会社、交通会社などは経営的に非常に苦しい状況にありますが、今はまだ資金調達が可能な状況です。

積極的に利用するのは良いことだと思います。

世界的に見ても、日本航空、ルフトハンザ航空など、錚々たる企業が大規模な資金調達を行っています。

このまま赤字が続けば、最終的にはフィリピン航空のように破綻の道しか残されていませんし、状況が悪化すればするほど資金調達もできなくなりますから、今のうちに手を打っておくのは当然だと思います。



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※この記事は9月12日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は国内金融政策のニュースを大前が解説しました。

大前は日本の低欲望社会への変化や日本人の性質と経済政策のずれを指摘し、「黒田氏は今の日本の経済の現状を分かっていない」「新総理はぜひ日本の経済政策を新しく考えてほしい」と述べています。

固定観念に囚われていては、世の中の変化に対応することはできません。

今の時代を大きな視点で捉える力が求められます。



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