大前研一「ニュースの視点」Blog

KON897「日ロ関係/北方領土~北方領土問題は、安倍前首相が解決しておくべきだった」

2021年9月13日 北方領土 日ロ関係

本文の内容
  • 日ロ関係 北方領土に経済特区創設へ
  • 北方領土 ロシア人男性が難民申請

北方領土問題は、安倍前首相が解決しておくべきだった


ロシアのプーチン大統領は3日、極東ウラジオストクで開催した東方経済フォーラムで演説し、北方領土に日本企業などを誘致するための特区を創設すると表明しました。

また、プーチン氏は、「日本との平和条約がないことはナンセンス」と述べ、平和条約締結交渉の進展に意欲を示しました。

まだこの問題が解決していないのかと思うと、残念でなりません。

安倍前首相は、在職中に約30回もプーチン大統領と会談したのに、この問題を全く進捗させることなく終わりました。

私に言わせれば、経費の無駄遣いでしかなかったと思います。

一昨年の東方経済フォーラムで、プーチン大統領は「領土の話よりも、平和条約を締結する方が先決」という意向を示していました。

すなわち、領土問題は条約を締結し、国と国の関係が出来上がってから考えるべきことである、という主張です。

日本がロシアと平和条約を締結した上で善意を示すのであれば、領土問題についても何かしら優遇できる可能性があるので、ぜひ投資をして欲しいという思惑でしょう。

ロシアからすれば、領土返還と言われても、そもそも第二次世界大戦後に米国から譲られた領土であり、「日本に返還する」ということ自体が筋違いであるという認識です。

また、数年前に領土問題について協議した時、谷内正太郎氏がロシアのラブロフ外相から「日本領になった時には日米安全保障条約の対象になるのか」と問われた際、「日米安保の対象になる」と回答したことが致命的でした。

日米安保の対象となるということは、米軍が駐留することを意味します。

これはロシアにとって大きな内政問題に発展する可能性があり、それを解決しない限り領土を引き渡すことなどできないというのは当然と言えるでしょう。

そのような事情を踏まえて、日米安保の対象外とする代わりにロシアから統治権を譲り受ける、というのが最善の落とし所だったと私は思います。

しかし残念ながら、当時の安倍前首相にはそれを実行に移すだけの裁量と器量がなかったということでしょう。

このような経緯から考えれば、今回の経済特区というのは当然の帰結です。

しかし、この言い方では日本から反発を受けるのも当然で、プーチン大統領にしても日本の国内事情をもう少し勉強しておくべきだと思います。




難民受け入れ、観光地として見る北海道の課題


北方領土の国後島から泳いで渡航したとされるロシア人男性が、札幌出入国在留管理局に対し、難民認定申請したことが明らかになりました。

入管難民法では難民申請の手続き中の外国人は送還が停止されるため、当面は日本国内にとどまることになるとのことです。

この難民申請というのも、私に言わせればおかしな議論です。

北方領土について、日本はロシアの領土ではなく自国の領土だと主張しているわけですから、難民申請の受け入れ云々ではなく、「引越し」と定義すれば良いと私は思います。

日本政府からすれば、国後島から網走に居住を移したという「引越し手続き」をすれば良いだけの話です。

実は、日本に居住したいと思っているロシアの若者の中にはこのことを理解していて、最近では難民申請をせず居住権が欲しいと主張する人もいるようです。

一方で、北海道経済に目を向けると、最近第2のニセコとして富良野市の北の峰地区が注目を集めています。

しかし、幾度となく北海道に足を運んでいる私に言わせれば、改善すべき点はたくさんあります。

富良野といえばラベンダー畑が有名ですが、ほぼファーム富田に限られているので、実際に足を運ぶと少し残念に感じます。

富良野の街全体をラベンダーで覆って、見渡す限り美しい景観が広がっているぐらいのことを実現してほしいと思います。

また、スキー場のレベルも高いわけではなく、旅館も少ないですし、非常にもったいないと感じます。

こうした課題は富良野に限ったものではありません。

ニセコのスキー場にしても気温が低すぎて危険だと感じるところがありますし、観光地としての北海道には改善できる点がたくさんあります。

逆に言えば、その課題点を変えていくことができれば、もっと魅力的な土地になれる可能性は十分あります。

ぜひ、良い方向へ大きく変化してほしいと思います。




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※この記事は9月5日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は日ロ関係のニュースを大前が解説しました。

大前は安倍晋三氏がロシアと会談を重ねていたにもかかわらず交渉が難航した経緯について述べた上で、経済特区創設へ向けてロシアは日本の事情を理解すべきだと指摘しています。

複雑な課題の解決においては、交渉をうまくリードする力が必要です。

交渉の明確な目的や双方の立場を理解した上で、課題解決のために双方で何が出来るか前向きな姿勢で話し合うことが大切です。


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