大前研一「ニュースの視点」Blog

KON896「自民党総裁選/日本の政治家~岸田氏が一歩前へ出た総裁選の行方は?」

2021年9月6日 日本の政治家 自民党総裁選

本文の内容
  • 自民党総裁選 岸田文雄氏が立候補表明
  • 日本の政治家 政治家に必要な要素とは

岸田氏が一歩前へ出た総裁選の行方は?


自民党の岸田文雄前政調会長は、先月26日、菅首相の任期満了に伴う総裁選に立候補すると表明しました。

岸田氏は会見で「国民の間には政治が現場の声に応えてくれないという切実な声が溢れている」として、立候補の理由を説明。

総裁選には菅氏、岸田氏のほか、高市早苗前総務相も意欲を示しており、9月29日の投開票に向けて論戦が繰り広げられることになります。

岸田氏の派閥・宏池会には40人以上所属していますから、総裁選の出馬条件となっている20人の推薦人を確保するのは簡単でしょう。

一方、前回の総裁選で野田聖子氏が20人の推薦人を集められずに出馬を断念したように、高市氏については同様の心配があると私は見ています。

岸田氏と同様、推薦人の確保には全く心配がないのが石破氏です。

しかし、この期に及んでも出馬を逡巡しているというのは、2回も総裁選に出馬した経験者なのに情けないと私は感じます。

岸田氏はいち早く手を挙げたことで、国民からの視認性が上がっていて、やや有利に動いているかもしれません。

まだ態度を決めかねている派閥も多いでしょうが、現時点においては菅氏と岸田氏が有力候補です。

二階氏は菅首相の続投で良いという見解を示しており、二階派は菅氏を推すと考えられます。

本来、二階氏の思惑は小池都知事を担ぐことだったと言われています。

解散総選挙を受けて、小池氏が都知事を辞任し、衆議院選挙で当選したあかつきには二階派のトップに就き、一気に総裁選に出馬するというシナリオです。

ところが、諸般の事情で総裁選と解散総選挙の順序が逆になったので、このシナリオは使えなくなりました。

前回の総裁選では議員票が多かったのですが、今回は党員票が多いので、その点ではどのような展開になるのか面白みが増していると思います。




強い志を持ち、シングルイシューで取り組む政治家が、今の日本にはいない


総裁選を控え、あらためて、構想力があってリーダーに成り得る政治家がこれからの日本にはどれほど出てくるのか、そういう政治家になりたいという若者がどのくらいいるか、と考えると懸念を抱かざるを得ません。

こうした状況を生み出した一つの要因は、新聞だと私は思います。

かつては各新聞が独自の世界観を持っていましたが、今や失われています。

政治担当、経済担当などがバラバラに分かれているのも問題だと思います。

また、政治家のなり手の面で、米国などでは、若いうちに会社を上場させて多額の資産を得た人が、将来的に政治の世界へ乗り出すという場合もありますが、今の日本にはこういうルートから政治家を志す人をほとんど見かけません。

若い頃から大きなビジョンを持ち、高い志があった政治家といえば、中曽根元首相を思い出します。

若い頃から首相になりたいという強い願望を持っていましたが、当初は自分に派閥がなく、首相になる道のりなど全く見えなかったはずです。

しかし、諦めることなく、首相公選制を呼びかけ「首相を選挙で選ぼう」と自らが首相をなれる道を切り拓こうとしました。

私は数年間、中曽根元首相のアドバイザーを務めましたが、まさに「強い志」を持った人物だったと思います。

今の日本を見ていると、こういう人物が出てくる可能性は極めて低いと感じます。

今の日本の制度では、推薦人20人という条件などが障壁となって、実力や実績がある人でも首相になれるとは限らないという状況です。

今回の総裁選にあたっても、茂木外務大臣は能力的に見ても、今までの実績を見ても、総裁選に出馬しても全くおかしくない人物だと私は思います。

しかし、誰も彼を推薦していません。

当然、20人の推薦人を確保できないので、出馬すらできないでしょう。

首相公選制を呼びかけて状況を打開しようとした中曽根元首相のように、こういう状況においても、一貫したビジョンや志を持つことは重要だと思います。

三公社五現業の民営化を掲げた中曽根元首相、郵政民営化を掲げた小泉元首相。

2人とも若い頃からこれらの問題を提起し、「シングルイシュー」として集中して取り組み、最終的に成果を上げました。

小泉元首相が郵政民営化を成し遂げたときには、最終的に自民党議員からも支持をされない中で、解散総選挙に持ち込んで数々の刺客を放って選挙に勝ち、実現にこぎつけました。

私は2人ともよく知っていますが、首相になってからも「殺気立っている」と思うほど、自らが取り組んでいる問題への意欲は、人並み外れて高かったと思います。

今の日本を見渡しても、こういう人はなかなか見つかりません。

枝葉末節にこだわるばかりで、政権を取りたいなどと発言している野党の政治家を見ていると、情けなくなります。




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※この記事は8月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は自民党総裁選のニュースを大前が解説しました。

大前は「政治家、特に首相になるには強い意志や明確なビジョンを持って伝え続けることが重要」と述べています。

激動のビジネス環境において、リーダーはぶれない強い意志を持つことが求められます。

さらに、自分の持つ意志を諦めずに表現し続けることで、自組織や顧客からの信頼が得られ、最終的に大きな成果に結びつきます。



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