大前研一「ニュースの視点」Blog

KON893「米感染者数/米ワクチン接種/国内新型コロナ治療~菅首相の『伝え方』はあまりにお粗末」

2021年8月16日 国内新型コロナ治療 米ワクチン接種 米感染者数

本文の内容
  • 米感染者数 感染者の4分の3がワクチン接種者
  • 米ワクチン接種 職員にワクチン接種義務付け
  • 国内新型コロナ治療 感染拡大地域で入院を重症者に制限

ワクチン接種をしても、感染を抑えることはできない状況


米疾病対策センター(CDC)は先月31日、マサチューセッツ州で発生した新型コロナのクラスターを分析したところ、感染者の4分の3がワクチンを接種済みの人であったことを明らかにしました。

また、デルタ株に感染したワクチン接種者からは未接種者と同等のウイルス量が確認されたとのことで、他者に感染させる可能性があることから、あらためてワクチン接種者にもマスクの着用を推奨する考えを示しました。

私は毎日、英国の統計をチェックしていますが、英国では約6割の人がワクチンを接種した上で、リラックスした日常生活を送るようになっています。

その結果として、人口は日本の約半分なのにもかかわらず、一日あたりの感染者数を見ると直近1週間では2万人を超え、死者数も日本を上回っている状況です。

マサチューセッツ州、英国、いずれの状況から見ても、感染抑制という点においてワクチン接種の効果に疑問を感じざるを得ません。

そもそもワクチンの効果が薄いのか、あるいはデルタ株に対応するためには別のワクチンを開発する必要があるのか。

また、ワシントン大学の発表によると、PCR検査を受けていないために新型コロナへの感染が発覚していない人が多数存在しており、実際の感染者数は2倍超に達する見込みとのことです。

これが事実とすれば、ものすごい数だと思います。

こうした状況の中で日本と世界を比較してみると、日本では感染者数、重症者数は増えていますが、死者数はそれほど増えていません。

海外と日本の状況は全く違います。

その上、日本では英国のように、気軽にパブに出掛け、サッカー観戦に6万人が押し寄せることもなく、無観客でオリンピックを開催しました。

ワクチンを接種したところで、英国の感染者数も死者数も非常に多い状況に陥っています。

これはデルタ株を理解する上で非常に重要な数字として受け止めるべきでしょう。

現状では、ワクチンを接種していても感染は広がっていますから、キャリアとしてウイルスを保っているという可能性は高いと言えます。

そのような状況を受けて、ニューヨーク市のデブラシオ市長やカリファルニア州のニューサム知事は職員に新型コロナワクチンの接種を義務付けると発表しました。

また、米国のグーグルやフェイスブックも出社する際にワクチンの接種を義務付けるほか、アップルは出社再開の時期を当初の9月から少なくとも1ヶ月延長する方針を示しました。

グーグルもフェイスブックもリモート勤務も可能ですから、ワクチン接種自体は強制ではありませんが、この決定は物議を醸しています。

フランスでは、ワクチン接種を義務づけることは差別だとして、反対する市民運動が広がっています。




1年半経過しても、何一つ行政の仕掛けは機能していない


政府は2日、新型コロナの感染が急拡大する地域では入院対象を重症患者に絞り、それ以外は原則自宅療養とする方針を示しました。

これに対し、野党各党が撤回要求で一致したほか、与党も再検討を求める方針を示しましたが、菅首相は「病床を一定程度空かせて緊急な方に対応しようということを丁寧に説明して理解してもらう」と述べ、撤回しない考えを示しました。

そもそも、病床を空かせるために、重症化していない人は自宅で療養と言われても、実際のところ自宅で感染している人が多いのですから、おかしな話です。

新型コロナウイルスが感染拡大し始めた初期の頃に考えていたように、政府がホテルなどを借り上げて、そこに専門家を置いて経過を診るようにすべきだと思います。

また、「どういう場合に入院できるのか」というのも明確ではありません。

棄民政策だと批判を受けていますが、菅首相の「伝え方」があまりにお粗末だと私は感じます。

「入院したい人はできる」などと言ってみたり、あのような物言いでは、国民が不満を募らせるのは致し方ないでしょう。

こうした政府の発表は明らかに思慮が足らないと言わざるを得ません。

これでは今後の選挙に大きな影響が出てくると思います。

では政府として、具体的にどのような対策を取るべきなのか?私は法律を整備して、積極的な施策を講じるべきだと思います。

現状、ロックダウンなどの権限を自治体に委譲することについては厚労省が抵抗しています。

厚労省は自ら責任を負って決定をしたくないくせに、権限だけは自分たちで維持しておきたいという態度です。

それゆえ、自治体の長が病院に対して、コロナ病床を増やせと命じることができません。

新型コロナウイルス感染拡大から約1年半も経過しているのに、コロナ病床は心もとなく、患者に対応できないなどと言っているのですから、怠慢以外の何ものでもないでしょう。

また、現場の医療関係者の話を聞くと、現場で対応する人が足りない、あるいはエクモ(ECMO)の使い方を知っている人も少ないという声も聞きます。

しかし、これについても、1年半の間に対応できたはずです。

エクモ(ECMO)にしても、トレーニングをして扱える人を増やすことは可能だったでしょう。

これらを見ても、行政の仕掛けが1年半も経っているのに何一つ機能していないことが証明されていると思います。

新型コロナウイルスへの対応は、国にとって非常に大きな問題です。

法律を整備して国が積極的に対応するべきだと私は思いますが、そのような意見に対して、歴史的には必ず野党が反対をしてきました。

国家総動員法のように、国家が直接命令できる権限を持つことは、「戦前回帰」「赤紙と同じ」だという理由です。

しかしながら、今の状況はパンデミックであり、人命が懸かっている極めて重大な問題ですから、国家的に対処すべきものだと私は思います。

その上で、意味不明な自宅療養を押し付けるのではなく、できる限り早くコロナ病床を抜本的に増やし、少なくとも重症患者用の病床を2~3倍にするべきです。

医師会にしても、生意気な顔をして登場しているだけで、結局のところ具体的なことは何もしていません。

政府を含め、誰一人として責任を持って具体的な対策を取っていないのは非常に残念でなりません。




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※この記事は8月8日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています



今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は国内新型コロナ治療のニュースを大前が解説しました。

大前は厚労省や野党、医師会の対応に触れ、「誰一人として責任を持って新型コロナウイルスへの対応に具体的な対策を取ることが現状出来ていない」と述べています。

目標達成のためには、責任と決定権を持つリーダーの存在が重要となります。

今改めて、日本のリーダーの在り方が問われています。



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