大前研一「ニュースの視点」Blog

KON889「静岡県熱海市/土砂災害/熱海市行政~熱海市や静岡県がどこまで責任を追及できるのか注目」

2021年7月19日 土砂災害 熱海市行政 静岡県熱海市

本文の内容
  • 静岡県熱海市 死者11人、安否不明者16人
  • 土砂災害 危険地域は「住まない地域」として定義するべき
  • 熱海市行政 これからの熱海・伊豆山地区の復興への不安

土石流の発生原因について、どこまで追及できるのか


静岡県熱海市で3日に発生した大規模な土石流で、これまでに11人の死亡が確認され、安否が不明な人は15日時点で16人となりました。

住民基本台帳に基づく氏名の公表などで多くの所在が確認でき、引き続き懸命な捜索が続いています。

一方、静岡県の川勝知事は土石流が始まった地点の盛土が流されたとして、因果関係を追及する方針を示しています。

氏名を公表したことにより、様々な情報が集まってきた結果、現在のような状況が判明しています。

氏名を公表したことについて批判もありましたが、もし公表していなければ未だに見つかっていない人が多いと思います。

色々なプライバシーの問題はありますが、今回のような場合には氏名公開の必要性もあると感じます。

川勝知事は盛土に問題があるとして、責任の所在を追及する姿勢を示しています。

また、難波副知事も記者会見でその点を指摘していました。

難波副知事は、名古屋大学の修士論文で「傾斜地における安全性」をテーマにしていたということです。

そのため、この問題については豊富な知識があるようで、途中からマイクを取って詳細な説明をしていました。

この盛土の問題に関して、崩落した土地の所有者がZENホールディングスの麦島善光氏であると判明しています。

麦島氏は伊豆でも手広くビジネスをしている人物です。

認可の限度を超えていたのかどうかなど、熱海市や静岡県がどこまで責任を追及できるのか、注目したいと思います。




危険地域を定義し、居住させないようにすべき


広島にも今回の熱海と同じような危険地域が多いのですが、全国には危険地域が18万箇所もあると言われています。

今回ほど規模が大きいものではなくても、土砂災害は年間で数千件も発生していて、死者が100人を超える年もあります。

激しい土石流に巻き込まれたら、とても逃げる時間はありません。

そのため、私は常々このような危険地域に居住するということ自体を考え直す必要があると主張してきました。

東日本大震災の後にも述べましたが、危険地域は「住まない地域」として定義するべきだと私は思います。

1000年以上の歴史を振り返れば、津波に襲われやすい場所、洪水が何度も起きている場所など、大きな災害がある場所はかなり特定できています。

過去に大きな災害があった場所には、家を建てさせないようにするべきでしょう。

あるいは、もし家を建てたいのなら、リスクを承知で完全に自己責任として建ててもらうしかありません。

津波や洪水などに比べて、がけ崩れは初めて発生することが多いため、予想が難しい災害です。

とは言え、専門家が見れば、雨の影響によるがけ崩れの可能性をある程度は予測することは可能でしょう。

専門家の意見を参考にして、危険地域に住んでいる人たちを移転させるなどの対策が必要だと思います。




熱海市の行政執行能力に不安を感じる


いざ、危険地域から移転するとなると、移転する場所を用意する必要がありますし、資金的な面で援助や補助をする必要も出てきます。

その点において、これからの熱海・伊豆山地区の復興に私は不安を感じています。

というのは、今回の熱海市の動きを見ていると、行政執行能力が極めて低いと言わざるを得ないからです。

土砂災害について、朝の6時に静岡県から危険性を伝えられていたのに、それが熱海市長には伝わっていなかったそうです。

また、復興に協力するボランティアとして2000人以上が手を挙げたのに、熱海市が対応できずにパニック状態に陥ったりしています。

今回の災害で流された熱海・伊豆山地区の家屋に加え、さらに周辺も危険地域に含まれてくるでしょうから、約300~400軒の家を「新たに」用意する必要があります。

その場所をどのように確保するのか、新しい家をどのように建てて、どのように移転してもらうのか。

これは、新しい村を一から作るのと同義です。

そのような場所が熱海に残されているのかさえわかりませんが、そういう作業をテキパキとこなさなければなりません。

もちろんお金もかかりますが、それ以上に行政として明確な「指針」を示すことがまず重要です。

東日本大震災の際にも同じ問題がありましたが、何1つ指針を示すことなく終わってしまいました。

その結果、石巻市などを見るとよくわかりますが、昔の場所に戻ってしまった人もいれば、山の上に移り住んだ人、どこか別の地域に移り住んだ人もいて、バラバラの状況です。

津波プレーンや土石流プレーンを定義して、「この場所には住んではいけない」と指針を示すのは、行政の指導力なしにはできません。

そのような指針を示してくれるなら、それを実現するためにお金を使うべきだと私は思います。

GoToトラベルで2兆円近くのお金が余っているなどと言われていますが、全く無駄遣いです。

行政が明確な指針を示す前提で、このような復興作業にこそ、そのような「余ったお金」を使って欲しいと思います。




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※この記事は7月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は静岡県熱海市のニュースを大前が解説しました。

大前は東日本大震災後の復興について触れ、「災害危険性が高い地域に関しては、行政が指導力を持って居住を制限する区域を予め指定する必要がある」と述べています。

中途半端なバランスを取ることが、結果として、多くのデメリットを生んでしまうことがあります。

リソースの配分など、トップの意思決定には大胆さが求められます。


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