- 本文の内容
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- フィンテック キャッシュレス、実らぬ還元競争
- 台湾TSMC 熊本に半導体工場建設を検討
- 東芝 2020年7月株主総会の調査報告書まとめ
フィンテック キャッシュレス、実らぬ還元競争
日経新聞は7日、「キャッシュレス、実らぬ還元競争」と題する記事を掲載しました。
日本のキャッシュレス決済比率は主要国の最下位グループに沈んでいると紹介。
クレジットカード決済にかかる手数料やポイント還元競争によるマーケティング費用が中小店舗にしわ寄せされて、導入が進まないことが要因としています。
また、キャッシュレスが停滞すれば日本経済が生産性向上の好機を逃すだけでなく、フィンテックで世界と戦っていく銀行、証券、保険などの重荷にもなりかねないとしています。
日本はクレジットカードの権威が高くなっていますが、フィンテックが発達した今、デビットカードを優先すべきでしょう。
クレジットカードに固執する日本とは違って、中国では一気にデビットカード決済が広まりました。
また、日本には全銀システムというものがあり、これも本来のフィンテックの在るべき姿とは程遠い存在です。
銀行とのやり取りには全てこの全銀システムを通す必要があり、やり取りのたびに手数料がかかります。
本来フィンテックの技術を活用すれば、このようなシステムを通すことなく、安全性が高い取引が可能です。
そうすると、支払い時の手数料は0.2%程度に抑えることができるはずで、実際に中国のアント・ファイナンシャルは、この程度の手数料を実現しています。
日本もフィンテックの分野で世界と戦うと標榜するのであれば、このレベルを目指すべきです。
しかし、そうなると現状の高い手数料で稼いでいる日本のクレジットカード会社などは収益が大きく減少します。
キャッシュレスで還元と言いつつ、いまだに高い手数料を取っているのは時代遅れだと私は思います。
日本は20世紀の技術を21世紀も固執して使い続けていると言えるでしょう。
また、日本はキャッシュレスの決済比率が非常に低い国ですが、国民に現金を好む理由をアンケートで聞いたところ、「お金の管理がしやすい」という回答が最も多かったとのことです。
このあたりは国民性もあるのかもしれませんが、現金のほうがお金の管理がしやすいというのは私には全く理解できません。
台湾TSMC 熊本に半導体工場建設を検討
台湾のTSMCが日本政府からの要請を受けて日本で初となる半導体工場を熊本県に建設する検討に入ったと日経新聞が報じています。
現行、最先端となる5ナノとは差があるものの、自動車やスマホなど多くの製品で活用されている技術を導入すると見られ、ソニーや自動車大手への供給を想定するとのことです。
九州はシリコンアイランドとも呼ばれ、大分には東芝、熊本にはNECの工場がありました。
その中でも熊本は、世界一の半導体メモリー工場とうたわれた九州日本電気の工場があった土地で、TSMCが工場を建設するにもうってつけの場所と言えるでしょう。
ただし、今のところTSMC側は公式見解を示しておらず、熊本工場の建設は憶測の域を出ていません。
TSMCが日本に工場を作ろうとするのは、米国との関係性があるからです。
本当は直接米国内に半導体工場を建設したいのでしょうが、それは現実的に厳しいでしょう。
それゆえ、米国と良好な関係を保っていて、半導体工場を建設しても問題がない日本を拠点としながら、米国を含め本格的に展開していきたいという狙いなのだと思います。
東芝 2020年7月株主総会の調査報告書まとめ
東芝は10日、2020年7月の株主総会の運営に関する調査報告書を専任弁護士から受け取ったと発表しました。
報告書はモノ言う株主に対して東芝が経済産業省と緊密に連携して対応したと指摘。
一部の株主は経産省の圧力により議決権を行使しなかったとして、総会が公正に運営されたものではないと結論づけたとのことです。
今回の選任弁護士の報告書は、よく踏み込んで書かれたものだと感じました。
経産省が露骨に東芝側に立って根回しをしている状況が見事に指摘されています。
NTTが総務省幹部の接待問題で騒がれていますが、この問題はより深刻だと私は思います。
世界に冠たる日本の大企業について、経産省が株主に圧力をかけるなどということは考えられないことですし、絶対にあってはいけないことです。
日本企業を守るのが自分たちの役割だと勘違いした経産省の勇み足でしょう。
そもそも日本企業を守るどころか、過去を振り返ってみると、家電業界にせよ、半導体業界にせよ日本が衰退した原因を作ったのは経産省だと私は思います。
半導体業界で言えば、日米半導体交渉において経産省の役人が主導してソニーの盛田氏とともに米国のモトローラ社などと交渉を行い、「日本が強すぎるので2割程度は輸入をする」と取り決めました。
当初は米国から輸入する予定でしたが、米国の半導体には民生用のものがなかったため、韓国を経由することになりました。
その結果、日本が韓国に半導体の技術を教え、それが命取りになって、今では韓国の後塵を拝するに至っています。
まさに、半導体業界の衰退は経産省に原因があったと言えるでしょう。
東芝が今のような状況に陥ったのは自業自得ですが、そこに経産省が首を突っ込んでいくのは、明らかに役割を逸脱していると思います。
今回の件については、もっと綿密に調査を行い、経産省の「誰」が、ハーバード大学のファンドに働きかけをしたのか?という点まで明らかになれば、本当に大きなニュースになる可能性が高いでしょう。
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※この記事は6月13日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は東芝のニュースを大前が解説しました。
大前は日本の半導体事業が衰退した理由について触れながら、「経産省から株主へ不当な圧力をかけることはあってはならないこと」「経産省が企業と関わる範疇を超えており、きちんと調査されるべき」と述べています。
適切な規律がないと、企業経営に大きな問題が生じる可能性があります。
コーポレートガバナンスに取り組むことで企業への信頼が高まるだけでなく、長期的には企業価値の向上へ繋がります。
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