- 本文の内容
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- 西武園ゆうえんち 熟慮2年、昭和レトロで勝負
- 国内航空会社 経営統合で基本合意
- 資生堂 時価総額で花王を上回り
- 循環型事業 中古家電事業を拡大
- ノジマ スルガ銀行との資本業務提携解消へ協議
リニューアルした西武園ゆうえんちの成功は難しい
日経新聞は先月30日、「熟慮2年、昭和レトロで勝負」と題する記事を掲載しました。
西武園ゆうえんちが開業70年の古さを逆手に取り、昭和の日本の町並みをイメージした施設として新装オープンしました。
手掛けたのは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン再建の立役者であるマーケターの森岡毅氏で、コロナ禍で再建の難易度が高まる中、森岡氏の手腕が試されるとしています。
少々持ち上げすぎの記事だと私は感じました。
USJの再建にあたっては、ゴールドマン・サックス、マイケル・キム氏のファンド・MBKパートナーズなどが250億円規模の資金を投じて、ハリーポッターなどの人気アトラクションを日本へ持ち込んだことが、大きな成功要因の1つでした。
今、西武グループは鉄道も含め、あらゆる事業が難航していて様々なトラブルを抱えています。
その中で、西武園ゆうえんちのリニューアルにあたり、USJの再建を手がけた森岡氏に託したとのことです。
リニューアル当初は人が集まったとしても、将来的に成功する可能性は低いと私は思います。
巨大な資金を投じたハリーポッターレベルのアトラクションであれば、遊んだ時に十分にその貨幣価値を感じられると思いますが、西武園ゆうえんちで同じような体験を実現するのは難しいと感じます。
国内航空会社が「合併」しない本当の理由
国内の新興航空会社であるエア・ドゥとソラシドエアは先月31日、経営統合に基本合意しました。
コロナ禍で旅客需要の低迷が長引く中、再編による経営効率化で活路を見出す考えです。
今回の記事では誤解してしまう人もいるかも知れませんが、この経営統合は間接部門を共通にして経費削減をしようという程度のもので、会社を合併するという「経営統合」ではありません。
なぜ合併による完全な経営統合ではなく、本社機能などの間接部門だけの共通化に留めたのかと言うと、羽田空港の発着便「枠」を失いたくないからです。
日本の航空会社の場合、羽田空港にいくつ発着便の「枠」を持てるかで利益が決まると言っても過言でもありません。
今、エア・ドゥとソラシドエアは、それぞれ羽田空港に20便以上の「枠」を持っていますが、もし合併して1社になってしまうと、おそらく持っている「枠」の半分は返すことになるでしょう。
これは大きく利益を損ねることを意味します。
それを避けたいが為に、間接部門の共通化のみで合併はしないのです。
ANAホールディングスは、ソラシドエアに約17%、エア・ドゥにも約13%出資しており、他にも多くの国内航空会社に出資しています。
大きな影響力を持ち、主導権も持っていると思いますが、それでもANAホールディングスは合併をしていません。
出資している各航空会社をタコ足のように使いながら、羽田空港の発着便「枠」を確保し、共同運航便を増やしています。
羽田空港そのものが国内・国外の便数を増やしましたが、それでも限界があります。
成田空港は遠すぎて評判が悪いですから、この状況は今後も続いていくと思います。
エア・ドゥとソラシドエアは、今回の統合によって多少のコスト削減は実現できるでしょうが、新型コロナの影響がこのまま続いてしまうと、この程度の経費削減では限界があると私は思います。
花王は資生堂と比べ物にならないほど、安定している
資生堂の時価総額が2日、約35年ぶりに花王を上回りました。
資生堂は高価格帯の化粧品に資源を集中させるなどの構造改革が評価され、4月以降投資家の買いがふくらんでいました。
一方、花王はオムツなどの既存事業が伸び悩むほか、化粧品事業をテコ入れするものの収益への貢献はまだ小さく、成長性の評価に差が出た形となっています。
こうした投資家、証券会社の見解は、大きく間違っていると私は思います。
資生堂の時価総額が花王を上回ったのは、あくまでも資生堂の魚谷社長が示した「不採算事業を捨てて、ハイエンドの化粧品に集中する」という方針がわかりやすく、ウケが良かったという側面が強いと私は思います。
もともと資生堂と花王の収益力は根本的に異なっており、比較にならないほど花王が安定しています。
セグメント別の業績を見ると明白です。
新型コロナの影響を受けて、資生堂は日本・中国・トラベルリテールなど、各セグメントの利益が激減しています。
日本でも利益が700億円から100億円に減少し、欧州や米国ではセグメント利益が赤字に転落しています。
一方、相対的に花王は新型コロナの影響は限定的で、売上も利益も堅調です。
メインのファブリック&ホームケア事業は、売上が伸びて利益も800億円あります。
スキンヘアケア事業でも500億円の利益、ケミカル事業でも270億円の利益を出しています。
唯一、化粧品事業は新型コロナの影響をまともに受けて400億円の利益が25億円に減少していますが、それでも赤字セグメントはありません。
全体としてみれば磐石です。
一体、投資家や証券会社は何を見ているのか?私には疑問でなりません。
また、資生堂が経営資源を集中するというハイエンドの化粧品事業には、ロレアル、エスティローダーなど世界の強豪企業がひしめいています。
中国での販売が好調だったことが評価されているようですが、それでもたかだか180億円程度の利益に過ぎませんし、前途多難だと私は見ています。
ヤマダホールディングスが中古家電事業を拡大するのは、大いに意義がある
ヤマダホールディングスが中古家電事業を拡大する見通しです。
中古専門店の店舗数を今後2年で2倍に増やすほか、家電の再生や再資源化、焼却処分までをグループで完結する体制を整えるとのことです。
メルカリを見てもわかるように、アパレルでも循環型事業が旺盛ですし、米国では中古商品の交換市場がネット上で広がっています。
これまでのヤマダホールディングスは、大量販売を行うことで、販売台数に比例してメーカーと交渉して、期末にキックバックをもらう、という典型的な量販店のビジネスモデルを採用してきました。
しかし、ここに来てその方針を大きく変える決断をしたということでしょう。
中古家電事業を拡大して、必要な修理も手掛けることで末永く利用してもらうというのは非常に良いことだと思います。
家電だけでなく、TOTOなどのトイレ製品などにも対応範囲を広げるべきだと思います。
今、家電メーカーは部品を5年間しか持っていませんが、実際にはトイレや家電製品は10~15年使い続ける人も多いはずです。
ヤマダホールディングスのような企業が、市場を拡大させ、中古品でも新品同様の部品で修理・メンテナンスできる体制を築いてくれれば、大きな影響があると思います。
こうした取り組みこそ、SDGs(持続可能な開発目標)につながっていく重要なものだと私は思います。
ノジマもヤマダホールディングスのように新しい道を模索せよ
家電量販大手・ノジマがスルガ銀行に対して資本業務提携の解消を申し入れたことが明らかになりました。
スルガ銀行の再建加速を狙ったノジマが、独自の取締役人事案を提案したのに対して、スルガ銀行が拒否したことを受けたものです。
ノジマが保有するスルガ銀行株を売却すれば、争奪戦が始まる可能性もあるとのことです。
自分たちの息がかかった取締役を半数以上送り込んで、スルガ銀行の経営そのものを効率化したいという狙いなのでしょう。
しかし、そもそも量販店のノジマと相性が良いとは思えないスルガ銀行の経営に乗り出すこと自体に私は疑問を感じます。
スルガ銀行の書類改ざんなどの不正融資が発覚してから、約3年が経過しようとしています。
もともと静岡県内ではトップクラスの銀行でもあり、銀行として「悪い部分」の切り離しが終われば、経営は安定するはずです。
スルガ銀行側としても、その目処がついたので、もうノジマは必要ないという判断をしたということでしょう。
株式を約18%保有していると言っても、ノジマが取締役の半数を推薦したというのは、少々調子に乗りすぎた結果だと感じます。
量販店は厳しい状況が続いていますから、ノジマもヤマダホールディングスのように、ぜひ新しい道・活路を見出してほしいと思います。
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※この記事は6月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は循環型事業のニュースを大前が解説しました。
大前は「家電だけでなくトイレ等も含めて循環型モデルへ移行すべき」「循環型モデルへの移行は持続可能な開発へ繋がり、非常に重要なこと」と述べています。
近年、ビジネスにおいてサスティナビリティ(持続可能性)が注目されています。
人々の関心も高まっており、循環型社会の中に自社のビジネスモデルをいかに組み込むか検討する必要性が高まっています。
社会課題を解決することが、経済価値の創出にも繋がっていきます。
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