- 本文の内容
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- 世界企業 米アップル時価総額が1年間で121兆円増
- セブン&アイHD 米スピードウェイ買収を完了
- 水ビジネス大手 仏スエズ買収で最終合意
インテルの時価総額を超えたエヌビディア
日経新聞が世界の約1900社を対象に2020年3月末からの時価総額の増減を集計したところ、米アップルの増加額が121兆円に達したことがわかりました。
半導体の自社開発やEVへの参入など投資家の買いを集めた形とのことです。
時価総額が1年で121兆円増というのは桁違いです。
これも、アップルの可能性や将来の展開について、市場の期待が大きいということでしょう。
私もiPadを愛用している1人のユーザーですが、アップルの強さは際立っていると感じます。
そんなアップルと同様に、時価総額を急速に伸ばしているのがエヌビディアです。
売上も利益もインテルの4分の1程度ですが、時価総額ではインテルを上回りました。
インテルと言えば、言わずと知れた中央演算処理装置(CPU)で世界を席巻した企業です。
市場では圧倒的なシェアを誇っていました。
エヌビディアはゲームで利用される画像処理半導体(GPU)をメインにしてきて、これまでインテルと並び称される企業ではありませんでした。
しかし、近年状況が変わってきました。
瞬時に映像分析するというGPUの技術が、車の自動運転にも活用できることがわかり、世界中で数百の自動車メーカーがエヌビディアと提携し、そのGPU技術を導入することになりました。
エヌビディアはCPUの自社開発にも乗り出し、その設計を買収予定の英アームに任せたいと考えているようです。
CPU分野でも存在感を発揮しつつあり、アームの買収で一気に期待感が高まったと感じます。
その結果、いつの間にかインテルよりも時価総額が高くなりました。
米国と日本では、全く異なるコンビニ市場の実態
米セブン&アイHDは15日、米石油精製大手・マラソンペトロリアム傘下のコンビニエンスストア、スピードウェイの買収を14日付で完了したと発表しました。
一方、これに対して米連邦取引委員会(FTC)は「この買収が独占の懸念がある違法なもの」として非難する声明を発表。
声明に法的な拘束力はないものの、セブン&アイは事業の分離を求める訴訟などのリスクを抱える可能性があります。
報道では分かりづらいのですが、正確に言うと、FTCに属する2名の委員が「個人的に」違法性について懸念を示したというものです。
この買収がFTCによって法的に問題があると指摘されたわけではありません。
争点となるのは、独禁法に抵触するか否かということでしょうが、米国内のコンビニ店舗数を見てみると、私は「独禁法には抵触しない」と判断するほかないと思います。
トップシェアを誇るセブンイレブンでさえシェアはわずか5.9%で、3位のスピードウェイを買収したとしても、シェアは8.5%に過ぎません。
つまり買収が成立しても、シェアの10%にも満たず、とても市場を支配するというレベルではありません。
米国では、日本とは違ってガソリンスタンドに併設されているコンビニの役割を果たす店舗が星の数ほどあります。
それゆえ、トップシェアのセブンイレブンですら10%のシェアにも達していないのです。
また米国のコンビニでは、日本のコンビニのように本部が絶対的な権力を持っているわけではありません。
好きな商品を仕入れて並べている店舗も多く、日本のコンビニとは置かれている環境や条件が全く違うという点を認識しておくべきでしょう。
それはセブンイレブンのセグメント別業績にも如実に表れています。
海外コンビニは、2~3兆円という非常に大きな売上になっていますが、利益は1000億円に満たないレベルです。
一方で、日本国内のコンビニは、1兆円に満たない売上で、2000億円以上の利益を上げています。
つまり、日本国内のコンビニは海外に比べて「売上は半分で利益は2倍」になっているわけです。
委員による個人的な反対意見は、その根拠が薄弱だと思います。
しかし、それでも下手をすると買収完了して統合した後になって、部分的に事業の分割を命じられる可能性もあり得ます。
セブン&アイHDとしては注意して対応する必要があるでしょう。
独禁法に抵触するか否かは、「分母」に注目することが重要
水ビジネスの世界最大手・仏ヴェオリアは同業の仏スエズを買収することで最終合意しました。
スエズの経営陣は買収の条件などに反対。
約8ヶ月にわたって抵抗し、一時はフランス政府を巻き込む論争となりましたが、最終的にスエズが受け入れた形です。
仏スエズの買収は3兆円を超える規模であり、両社を合わせると売上高で5兆円という大きさになります。
フランス国内の水道事業で見ると、この両社が合併するとおおよそ80%のシェアを握ることになるので、市場価格への影響も著しく大きくなるでしょうし、下水処理など水の品質維持に影響が出る可能性もあります。
そのため、フランス国内では十分に独禁法に抵触するレベルだと言えます。
一方で世界的に見ると、「水」は市町村などが扱っているところも多く、ヴェオリアとスエズが一緒になったとしても大した規模とは言えません。
世界レベルでは、この2社が合併したところで独占の弊害はないと思います。
セブンイレブンの事例からもわかるように、独禁法に抵触するか否かを考えるときには、「何を分母」においているのか、という点が極めて重要になってきます。
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※この記事は5月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はセブン&アイHDのニュースを大前が解説しました。
大前はセブン&アイHDの業績について、「海外のコンビニ店舗の収益は国内店舗の2倍以上だが、利益は国内店舗が海外店舗の2倍以上になっている」と指摘し、「その理由は、日本では本部が強制力を持ち、陳列する商品も決められているが、米国の場合は各店舗が自由に陳列する商品を決めているから」と述べています。
同じサービスや商品であっても、地域の特色に合わせた販売戦略を考えることが大切です。
特に、海外展開する場合、人々の価値観や文化を理解した上で自社の提供価値や販売方法を念入りに検討する必要があります。
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