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三越伊勢丹HD
伊勢丹吉祥寺店を閉店へ
ブックオフ
大日本印刷が筆頭株主に
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●百貨店というビジネスモデルの限界
12日、三越伊勢丹ホールディングスは、2010年3月上旬に伊
勢丹吉祥寺店を閉店すると発表しました。
ここ数年赤字が続いており、収益の改善は難しいと判断したも
のですが、伊勢丹が都内の店舗を閉鎖するのは、八王子店の閉
鎖以来、30年ぶりとのことです。
今回の閉鎖対象となったのは吉祥寺店ですが、注目すべきは新
宿本店だと私は思います。
というのは、伊勢丹の新宿本店は、伊勢丹の売り上げの約半分
を背負う大黒柱といえる店舗であり、伊勢丹全体の調子の良し
悪しは、新宿本店の調子に依存するところが大きいからです。
そして、ここ数年の伊勢丹の主要店舗別売上高の推移を見ると、
今回閉鎖される吉祥寺店よりも、売上高の総額が大きいだけに、
新宿本店の方が売上高の下落額は大きい、という事実が分かり
ます。
つまり、吉祥寺店という1店舗について収益の改善が難しいと
いったレベルの話ではなく、むしろ伊勢丹の屋台骨そのものが
揺らぎ始めていることを示唆している、と見るべきだと思います。
※「伊勢丹の主要店舗別売上高の推移」チャートをみる
伊勢丹などの「百貨店」は、その名の通り「百貨」を売り物に
しています。
つまり、「あそこに行けば何でも揃っている」というのが百貨店
の魅力であり、ビジネスモデルの根幹になっています。このコ
ンセプトが、今の時代にマッチしなくなってきています。
今の消費者が求めているのは、百貨ではなく、「一貸」店だから
です。安くてお洒落な洋服が欲しいと思えば、ZARAやH&M
に行ってしまうのです。
また、百貨店で数万円の高級アパレルを購入する人が急速に
減少しているというのも、伊勢丹にとって厳しい状況になって
きていると思います。
東京メトロ副都心線が開通し、新宿本店の真下に駅ができまし
たが、大きな効果は生まれていません。
おそらく、この路線を使う若い女性は、一度は新宿に立ち寄って
伊勢丹で「見学」をしたとしても、実際にはもっと安い値段で
「原宿」で購入するというスタイルなのだと私は思います。
結局、若者客はZARAやH&Mに、そして年配客はしまむらに
持っていかれてしまったというのが現在の状況です。
ZARAやH&Mには長蛇の列ができて賑わい、ユニクロ(売上高:
5865億円)やしまむら(売上高:4110億円)が4000億円を超える
レベルにまで売上を順調に伸ばしているというのは、逆に
百貨店にとっては厳しい現実そのものだと言えるでしょう。
百貨店というビジネスの在り方そのものにメスを入れて、再考
しなければならない時期が来たのだと私は思います。
●ブックオフへ出資している本当の狙いは?
13日、ブックオフコーポレーションは、大日本印刷が筆頭株主
になったと発表しました。
中古書籍を安値で販売するブックオフは出版各社の収益を圧迫
してきましたが、今後はブックオフが開拓した中古市場と販路
を活用する方針に転換するとのことです。
というのが「建前」としての発表であって、本当の狙いは
「ブックオフをつぶす」か、あるいは「ブックオフの価格統制
をする」ことにあると私は思っています。
現在ブックオフに出資している会社は、大日本印刷を筆頭に、
講談社・集英社・小学館などです。
※「ブックオフへの出資関係」チャートをみる
これらの会社は、中古本の市場を活用して販路を広げようなど
とは考えていないと思います。
彼らの思考にあるのは、「自分たちが新本販売にあたって困るこ
とがないようにしたい」ということだけです。
出資することでブックオフに対して価格支配力を持ち、ブック
オフをつぶしてしまうか、あるいは中古本の価格をまろやかに
できるという目論見があるのでしょう。
もしかすると、新古本の処理場としてブックオフを活用しよう
と考えているかも知れませんが、その程度で終わりでしょう。
結局は、ブックオフの値段を思うように操作したいために出資
(投資)しているのであって、私には「まじめ」な出資(投資)
とは思えません。
世界に目を向ければ、アマゾンがキンドルを発売し、電子書籍
の新しい市場を作り上げようとしている時代に、日本の出版業
界は何とも情けない限りです。
そもそも、日本の出版業界がブックオフというビジネスに脅威
を感じていること自体、私に言わせれば、ナンセンスです。
本屋がブックオフの仕組みを作ってしまえばよいのです。
例えば、売り場面積の20%くらいを店内ブックオフのようにして、
「返本するくらいならこのコーナーに置いて半値で売ってくれ」
という仕掛けにすることも出来るでしょう。
これは本を買う側にとってもメリットは大きいと思います。わ
ざわざブックオフを探す必要はなく、本屋に行けば新しい本を
定価でも買えるし、新古本のような本を半値くらいでも買える
ようになります。
再販制度が崩れるという指摘はあると思いますが、それを考慮
に入れても魅力的な仕掛けになるのではないかと私は思います。
このビジネスモデルは、かなり以前から私は発表しているので
すが、日本の出版社や本屋はどこも実行していません。
古い体制にしがみつくことに必死になっているのでしょう。ア
マゾンがキンドルを日本に普及させようとしても、それを受け
入れようとしない風潮も感じます。
日本の出版業界には、自らの古い利権を守ることだけでなく、
頭を切り替えて新しい市場を作り出すことを、ぜひ考えてもら
いたいと思っています。