- 本文の内容
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- 米エヌビディア CPUへの参入を発表
- マイクロソフト 米ニュアンスを買収
- グラブ SPACで米ナスダック上場へ
- 東南アジアIT大手 IT2強統合へ、シーに挑戦状
米エヌビディアはインテルを超える企業へ成長できるか
米半導体大手・エヌビディアは12日、CPU(中央演算処理装置)事業へ参入すると発表しました。
この日公開したCPUをエヌビディアのGPU(画像処理半導体)と合わせて使うと、AIに学ばせるための計算が現在の最速システムの10倍の速さで行えるとのこと。
2023年に米エネルギー省やスイスの研究機関へスーパーコンピューターを納入する計画です。
エヌビディアは英アームを買収すべく動いているなど、今勢いを増している台湾出身の創業者が経営する米国企業です。
今後は、自動運転でGPUが使われる可能性も高く、インテルに肩を並べる規模の会社に成長していくと期待されています。
かつてCPUと言えばインテルの独壇場でしたが、今はアップルを筆頭に他社のCPUを使わずに自社で製造する企業が増えています。
デファクトスタンダードとして市場を席巻していたインテルの時代はもう過ぎ去り、受託生産で技術を磨いていくしかないという時代に突入しています。
このような時代の流れにおいて、今後エヌビディアがどこまで成長できるのか注目したいところです。
音声認識サービスは、単なる文字化にとどまらない幅広い用途が期待できる
米マイクロソフトは12日、音声認識大手のニュアンス・コミュニケーションズを197億ドル(約2兆1500億円)で買収すると発表しました。
ニュアンス社は音声認識サービスの老舗で、アップルの音声認識アシスタント機能・Siriに基盤機能を提供していたとされており、ニュアンス社が抱える病院や医師の顧客基盤とAI技術を確保し、医療分野のクラウドサービスを強化する考えです。
音声認識サービスと言えば、アップルのSiriを思い浮かべる人も多いと思いますが、マイクロソフトにとっても音声認識技術は、単なる文字入力の補助にとどまらず、今後インプットシステムとして重要度が増していくと思います。
音声認識から文字化する技術は、特に医師や弁護士の業界では非常に重宝されています。
例えば、処方箋を書く時、医師が話している内容を自動で文字化することにより、医療クラークなどがメモをする労力を大幅に減らすことができます。
今後、このような文字化する技術に加えて、さらにAI技術を活用して「文章を綺麗に整理する」というレベルまで発展していくと思います。
書類整理の領域まで含めて幅広い用途が考えられます。
マイクロソフトは豊富な資金力を活かして、リンクトイン、スカイプ、ギットハブ、モヤンなど様々な会社を買収してきました。
その中でも、今回のニュアンス社は高額ですが、期待も大きいはずです。
音声認識技術を活かして、マイクロソフトワードなどのソフトの利便性が飛躍的に向上する可能性もあると思います。
現状、マイクロソフトワードの音声認識機能を使っても上手に変換されない言葉もあり、スムーズに利用できない場面があります。
特に日本語の場合には、カタカナ文字、英文字などが文章に混ざってくるので、英語など他言語に比べても音声認識は難しいと思いますが、ニュアンス社の技術を取り込むことで、このあたりにもチャレンジして精度を高めて欲しいと思います。
世界規模に成長する東南アジア企業の勢い
東南アジアの配車大手・グラブは13日、SPAC(特別目的会社)との合弁を通じて年内にも米ナスダック市場に上場すると発表しました。
企業価値は396億ドル(約4兆3000億円)にのぼり、上場時に約5000億円の資金を調達し、料理宅配や金融事業の成長を加速する考えです。
SPAC(特別目的会社)による上場は、すでに上場しているSPACに合併する形で上場を果たすという手法で、近年非常に流行している上場のやり方です。
グラブは上場後、配車サービスだけではなく、ネット専業の銀行としての業務も拡大していく方針です。
そうなると、シンガポールやインドネシアを中心とした東南アジア企業の中核企業として成長していく可能性も大いにあると思います。
同じく成長著しい東南アジア企業として、シンガポールのシー、そしてシーに対抗するために統合を発表したインドネシアのゴジェックやトコペディアの今後には注目したいと思います。
日経新聞は14日、「IT2強統合へ、シーに挑戦状」と題する記事を掲載しました。
インドネシアの配車大手・ゴジェックとネット通販大手・トコペディアの統合交渉が最終段階に入ったと紹介。
統合が実現すれば、デジタルサービスに関わるサービスを幅広く提供する巨大企業が誕生し、時価総額で大きく先行するシンガポールのシーを追いかけるとしています。
ゴジェックとトコペディアはインドネシア内では競争相手でもありますが、シンガポールのシーに対抗するために統合するということです。
シンガポールのシーはテンセントが出資している、ニューヨーク証券取引所に上場している企業です。
モバイルゲーム、電子商取引、決済を手掛けていて、すでに14兆円を超える時価総額を誇る巨大企業に成長しています。
ゴジェックとトコペディアが統合してもスケール的に見劣りしますが、それでもインドネシア勢としては、手を取り合ってシンガポール企業のシーに対抗しようということでしょう。
翻って日本の企業を見てみると、この領域で目立った企業はほとんどありません。
東南アジアの企業が次々と米国の証券取引所に上場するといった状況で、勢いのある東南アジア企業と日本企業の差は大きく開いてしまったと感じざるを得ません。
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※この記事は4月25日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は米マイクロソフトのニュースを大前が解説しました。
大前は音声認識システムについて、AIとの組み合わせによる活用方法や、日本語入力における懸念点について指摘しています。
最新テクノロジーに関するニュースが日々飛び込んできます。
自社のビジネスではテクノロジーをどうやって活用できるか、またどのような懸念点があるのか、自主的に考えてみましょう。
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