大前研一「ニュースの視点」Blog

KON876「国内新型コロナ対応/個人事業主/みずほFG~今の日本の政治はあらゆることが曖昧」

2021年4月19日 みずほFG 個人事業主 国内新型コロナ対応

本文の内容
  • 国内新型コロナ対応 コロナ、統治の弱点露呈
  • 個人事業主 個人事業主を登録・識別する番号制度を検討
  • みずほFG 金融、IT競争力が左右

日本を統治する仕掛けを全面的に見直す良い機会にせよ


日経新聞は7日、「コロナ、統治の弱点露呈」と題する記事を掲載しました。

政府が初めて緊急事態宣言を発令してから7日で1年が経過しました。

この間に、デジタル化の遅れや国と地方の曖昧な責任、権限や既得権などが臨機応変な対応を妨げたほか、政治主導の動きの鈍さなど日本の統治機構の弱点が浮き彫りになりました。

新型コロナが明らかにした脆弱さを一から見直すべき時に来ているとしています。

この指摘は正しいと思います。

一連の事態が落ち着いたら、日本を統治する仕掛けを反省して作り直さなければいけません。

その意味では、日本にとって「良い材料」にもなり得るとも言えます。

今の日本の政治は、国がやるべきこと、地方がやるべきこと、またどんな基準で政策を実施するのかなど、あらゆることが曖昧です。

例えば、新型コロナウイルス感染拡大における「重症者用のベッド数が足りない」という問題についても、病院の善意に任せるべきなのか、それとも病院免許の取り下げを条件にしてでも国が強制的に命じるべきなのか、いまだに曖昧です。

明確な決断をしないまま、重症者用ベッドの使用率が50%を超えてくると大変だと慌てふためいて、国民に出歩かないでくれと呼びかけています。

こんな場当たり的な対応に国民は行動を縛られ、迷惑しています。

国が専門家の意見を聞きながら政策を実施していると言っても、結局どこに向かおうとしているのか全く見えてきません。

統治の仕掛けが欠如しているから、このような事態を招いてしまうのだと思います。

幸い、日本は新型コロナウイルスの感染者数も死亡者数も少ないので、このような頼りない政治であっても何とかなっていますが、もし英国のような事態に陥っていたら、今の日本の政治では全く対応できなかったと思います。




個人事業主を識別する番号制度の設計はプロに依頼するべき


政府が個人事業主を登録・識別する番号制度を作る見通しが明らかになりました。

2023年10月から消費税の税額表(インボイス)を導入するのに合わせ、課税事業者に13桁の登録番号を割り振るもので、法人は既存の法人番号を引き続き使う一方、個人事業主には新たな番号を付与し、補助金の支給や社会保険、税務などの手続きを一元管理できる仕組みを検討するということです。

今頃になってこんなことを言い出すなんて、なんて呑気なのか?と私は思います。

消費税を導入した時に、欧州型のインボイス制度も導入するという話だったのに立ち消えになっていました。

そして、企業はあくまで名前であるということで、個人事業主を含めた統合的な番号は付与されることなく、今に至っています。

個人事業主にも番号制度を導入するなら、その道のプロに依頼して設計してもらうようにすることが重要だと私は思います。

例えば、日立のような大企業は様々な企業と関係性を持っていて、それをリレーショナルデータベースとして把握できる番号制度にする必要があります。

取引が盛んな相手、資本が入っている相手などを番号のサブカテゴリーとして把握できるようにします。

こういった関係性を把握できるような番号体系を構築する設計はなかなか難しいものがあります。

政府の中で適当に議論するのではなく、きちんとプロに依頼してほしいと思います。




みずほFGに見るシステムベンダーの構造的な問題


日経新聞は6日、「金融、IT競争力が左右」と題する記事を掲載しました。

一連のシステム障害を受けて、みずほFGがまとめた報告書によると、基幹システムの運用を担う専門の人材を減らしてきたことが明らかになったと紹介。

金融庁の統計によると、米大手銀行は全従業員に占めるITエンジニアの割合が30%なのに対して、日本は4%に留まり、システムの維持・更新に追われ、中長期的な競争力を生む投資が手薄になっているとしています。

ゴールドマン・サックスは、10年以上前から「投資銀行はテクノロジーカンパニー」と認識し、エンジニアの採用を積極的に行っています。

今では新規採用の約半数はエンジニアで、給与も技術力も高い人材を揃えています。

それに対して、日本の金融機関では、いまだにエンジニアの割合がわずか4%というのですから、呆れて開いた口が塞がりません。

そして日本の金融機関において、エンジニアの割合以上に大きな問題なのは、システムを提供しているシステムベンダーです。

特に、今回問題を起こしたみずほFGの場合、日本IBM(旧富士)、富士通(旧第一勧銀)、日立製作所(旧興銀)、NTTデータという4社のシステムベンダーが担当していて、各社が有機的に機能しているとは思えません。

合併前の3社(富士・第一勧銀・興銀)時代からシステムを担当していたベンダーがそのまま居残っていて、それぞれの会社が「仕事を失いたくない」という気持ちで争っているはずです。

そこにやや中立的なNTTデータが絡んできて、ますます混乱を極めています。

2019年までに約4500億円を投じてMINORIへ全面移行したということですが、その結果として毎週事故を起こしているのですから、お話にならないレベルだと私は思います。

みずほFGに見られる「各ベンダーが絶対に仕事を失いたくない」という問題は非常に深刻です。

システムに対する責任者が曖昧になり、さらにシステムを刷新しようとしてもお互いを牽制しあうため、刷新のスピードが非常に遅くなります。

つまり問題の根源は、システムを提供するシステムベンダー側にあり、「彼らが答えを持っていない」ということです。

この構造が是正されない限り、また同じ問題を繰り返す可能性が高いと思います。

とは言え、1つのベンダーに任せるとなると、血を見る戦いが繰り広げられることになるでしょうから厄介です。

みずほFGだけでなく、昨年システム障害を起こした日本取引所も全く同じ問題を抱えていますし、地方自治体のシステムについても同様です。

技術力、人材以前の構造的な問題だということを認識し、抜本的な解決に乗り出すことが重要だと思います。




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※この記事は4月11日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はみずほFGのニュースを大前が解説しました。

大前はみずほFGに複数社のベンダーが入っていることに触れ、「問題の根源は、システムを提供するシステムベンダー側にあり、彼らが答えを持っていないこと」「この構造が是正されない限りまた同じ問題を繰り返す可能性が高い」と述べています。

問題を解決する際は、目の前の事象にとらわれず、根本的な課題を突き止める必要があります。

物事の全体像を把握した上で、今後どのように課題解決を進める必要があるか考えることが大切です。


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