- 本文の内容
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- 仏ルノー 連結最終赤字約1兆円
- 米国小売り大手 アマゾン、ウォルマート猛追
- 米スタンダードコグニション 米無人店舗新興、150億円調達
- テマセクHD ホー・チンCEOが退任
日産は、今こそルノーから離れるチャンス
仏ルノーが先月19日に発表した2020年12月期連結決算は、最終損益が80億800万ユーロ(約1兆円)の赤字となりました。
赤字幅は過去最大で出資先の日産自動車の業績低迷などが響いたとのことです。
今のルノーから見ると、グループPSA(旧プジョー・シトロエン・グループ)がフィアット・クライスラーと一緒になって目の上のたんこぶが、さらに倍の大きさになっているという状況です。
そのような中、日産が主な原因となって大きな赤字になっています。
ただ、そもそもルノーの失敗は、仏マクロン大統領に責任があると私は思います。
マクロン大統領がゴーン氏に働きかけて、無理矢理にでも日産を資本的に取り込むように促し、それが例のクーデターにまで発展してしまったのだと私は思います。
ゴーン氏とマクロン大統領が一緒になって、かつてのナポレオン的な発想で、ルノーで1000万台生産して世界トップに躍り出るという夢を見た結果です。
この無理な背伸びが今の大きな赤字を生んでしまいました。
一方、日産の側から見ると、今はルノーから離れる絶好のチャンスと言えます。
ただ、ロシアやブラジルでは完全にはルノーと手を切れないところもあります。
ロシアについては、三菱に協力をあおぐのが良いでしょう。
もともとロシアの事業についてはルノーに担う力はなかったので、渡りに船だと思います。
ブラジルについては、すでにルノーの工場で生産をしているため、ルノーを完全に切り離すのは難しいでしょう。
業務提携を維持しつつ対応していくことになると思います。
ウォルマートは、まだアマゾン恐怖症から逃れられない
日経新聞は先月20日、「アマゾン、ウォルマート猛追」と題する記事を掲載しました。
米ウォルマートとアマゾンドットコムが発表した決算で、両者がともにオンライン消費の好調で売上高を伸ばしたものの、2年前までは倍近い開きがあった差が縮まったと紹介。
2021年にはワクチン接種が広がり、経済活動が正常化に向かうと見られる中、リアルとネットの垣根を超えた競争がさらに激化しそうだとしています。
ウォルマートはアマゾン恐怖症に陥っていました。
そのアマゾン対策の1つとして、「オンラインで買って店舗でピックアップしてもらう」というやり方を確立しました。
これが功を奏して、アマゾン恐怖症対策としては一息ついたと私も感じていました。
ところが、ウォルマートとアマゾンの売上高の推移を見てみると、世界最大の小売業者であるウォルマートの売上高に、アマゾンの売上高がもう目と鼻の先まで追いついてきています。
2017年はウォルマートの売上高が12兆円であるのに対し、アマゾンは4兆円弱でした。
それがわずか数年で、アマゾンの売上高は10兆円を超えて、ウォルマートに追いつこうとしているのですから、驚異的だと思います。
株価の推移を見ると、アマゾンは将来性を買われて、うなぎのぼりです。
一方、ウォルマートはアマゾン恐怖症を克服して回復基調にありましたが、実売額でアマゾンに追いつかれつつあるということで、ここに来てやや下落傾向です。
米国全体の小売売上高に占めるeコマースの比率で見ると、全体としてはまだ15%ほどです。
それほど大きな伸びを見せているわけではありません。
つまり、eコマースの中でもアマゾンの伸び方だけが異常だということです。
実店舗の販売は新型コロナ感染拡大の影響で縮小していることもあり、ウォルマートとしては「一難去ってまた一難」というところでしょう。
さらなるアマゾン対策が必要かもしれません。
世界初の無人店舗を展開したのは46年前の日本・熱海だった
日経新聞は先月18日、「米無人店舗新興、150億円調達」と題する記事を掲載しました。
米スタートアップ企業・スタンダードコグニションがソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから1億5000万ドル(約158億円)を調達したと紹介。
同社はスマホ決済を使った商店の無人化技術に強みを持ち、今後5年間で5万店に導入する目標を掲げているとのことです。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドも出資し、5万店の導入を目指すということで話題になっていますが、ここで思い出したいのは、無人店舗を世界で初めて実現したのは日本だということです。
1975年、八百半デパートが三菱重工と共同開発した無人スーパー「ヤオハン・オートマチック・コンビニエンス・ストア」を熱海にオープンさせているのです。
ところが、当時の日本では全く受け入れられず、成功しませんでした。
私も大いに期待して注目していましたが、当時を振り返ると、「自分で手にとって目で見て買いたい」という主婦のニーズを満たせなかったのが敗因だと思います。
特に、大根やネギなどの生鮮食品に関しては、自分で手に取って触って確かめたいという人が多かったのです。
スタンダードコグニションは、この日本の敗因を研究する必要があると思います。
瓶詰めのジュースなどは問題ないでしょうが、生鮮食品などは自分で手にとって確かめて買うという消費行動は今でもそれほど変わっていないと感じます。
日本の経験を研究し、生鮮食品は品目から外すなど検討してみる価値はあると思います。
テマセクHDは投資プロ集団
シンガポールの政府系投資ファンド・テマセクHDは先月9日、ホー・チンCEOが10月1日付けで退任すると発表しました。
ホー・チンCEOはリー・シェンロン首相の妻で、2004年以来17年間にわたりCEOを務めてきましたが、後任には投資部門テマセクインターナショナルのディルハン・ピレイ・サンドラセガラCEOが、現職と兼務で就任するとのことです。
シンガポールは一族郎党を重用するという「ネポティズム」が強い国です。
リー・クアンユー元首相は、息子であるリー・シェンロン氏を首相にし、またその息子の妻が巨大な政府系ファンドのCEOを務めています。
今回ようやく、その流れの1つが断ち切られようとしています。
テマセクHDは政府系ファンドとして、世界の政府系ファンドのトップ10に入っています。
日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、巨大な政府系ファンドです。
投資先を見ると、金融、テレコム・メディア、消費・不動産、インフラ・運輸、ライフサイエンスにも積極的に取り組んでいます。
国別にみると中国が29%で、シンガポールの24%を上回ってトップです。
次いで、北米が13%、(中国・シンガポールを除く)アジアで13%、そして欧州で10%となっています。
なお、政府系ファンドとしては、ノルウェー政府年金基金がダントツです。
世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金は、日本の会社にも細かく投資をしています。
一時期、ゾゾタウンなどにも投資をしていましたが、よくそんな日本の小さな会社まで注目して投資をしているものだと私も感心しました。
テマセクHDもノルウェー政府年金基金と同様、鋭い観点を持った投資のプロ集団と言えます。
今後の動向に注目したいと思います。
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※この記事は2月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は米国小売り大手のニュースを大前が解説しました。
大前は「ECを中心に展開するアマゾンが約3年で世界最大の小売業者であるウォルマートの売上高に迫るとは想定されていなかった」と述べています。
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