大前研一「ニュースの視点」Blog

KON869「長期金利/国内株式市場/特別買収目的会社~日経平均3万円台は、消極的な選択の結果に過ぎない」

2021年3月1日 国内株式市場 特別買収目的会社 長期金利

本文の内容
  • 長期金利 米10年物国債利回りが一時1.3%
  • 国内株式市場 日経平均終値が3万84円
  • 特別買収目的会社 「空箱上場」米で400社

米国債の利回り上昇が、日本経済に与える影響は?


16日のニューヨーク市場で米10年物国債の利回りが、一時1.3%と先週に比べて0.1%上昇し、約1年ぶりの高水準となりました。

米政府の経済対策に加え、新型コロナの新規感染者数が減少傾向となり、今後の景気対策への期待が高まったことなどが要因と見られています。

長期金利をマイナスにしたいという思惑もあったと思いますが、今は1.3%まで上昇し明らかにインフレ傾向になっています。

米10年物国債の利回りはずっと低い水準でしたが、それでは「売れない」ために、無理にでも利回りを上げざるを得ない状況だと思います。

このような動きが米国で起きると、世界中のお金が米国へ流れることになります。

そして、それは「日本も金利を上げないといけない」状況を生み出します。

そうしなければ、日本からどんどんお金が出ていってしまうからです。

実はこれが非常に恐ろしいことであり、日本が警戒すべきことです。

自国だけの問題ではなく、他国に引っ張られた結果、金利を上げざるを得ない状況になります。

つまり「他律的に日本の金利が決まってしまう」ということです。

ここに現代貨幣理論(MMT)の問題点があると私は思います。

現状は欧州もゼロ金利に近いので、それほど心配する状況ではありません。

しかし、今後の米国次第で日本からどんどんお金が逃げていく可能性は十分に考えられます。

国際バランスの結果として、日本は「悪いインフレ」に陥ってしまうかもしれません。





日経平均3万円台は、消極的な選択の結果に過ぎない


15日の東京株式市場で日経平均株価の終値が3万84円となり、1990年8月以来の3万円台となりました。

巣ごもり関連企業などの業績改善に加え、日本でも新型コロナワクチンの接種が始まることを受けて、コロナ後の経済回復への期待が高まったことが要因と見られています。

1989年12月に最高値3万8915円を記録した日経平均株価。

当時、証券会社が提灯持ちのように株高を煽っていました。

今回の株高はバブル当時とは異なり、「金余り」が原因です。

一向に銀行の預金金利も上がらないため、要するに「株以外にお金を置いておく場所がない」から、株にお金が流れているのです。

おまけに、株は安心できるという心理も働いていると思います。

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の日本株買い、日銀によるETF(指数連動型上場投信)買いなど、政府主導のプライス・キーピング・オペレーション(PKO)の動きが見られるからです。

政府が輪転機を回して、市場をお金でジャブジャブにしている状況を考えると、ある意味では今の株式市場はリーズナブルな状況だと感じるかもしれませんが、私は危うさを感じざるを得ません。

業績が好調な企業は1/3に過ぎず、2/3の企業は業績が悪く苦しんでいます。

すなわち、実体経済は全く改善していません。

私はバブル当時も、「実体経済が伴わない今の株価は高すぎる。9000円から1万2000円が妥当」だと主張していましたが、今回の株高についても同様の感想を持っています。

私なら、このような危険な相場には手を出したくありません。




特別目的会社の「空箱上場」には何1つ本質はなく、非常に危険


日経新聞は20日、「『空箱上場』米で400社」と題する記事を掲載しました。

買収だけを目的に上場した空箱のような会社・特別買収目的会社(SPAC)が米国で存在感を高めています。

年初からの買収額は9兆円に迫り、米国のM&A市場全体の3割に達するとのことで、EV(電気自動車)関連など成長期待の高い企業が短期間で上場する反面、売上高ゼロの企業が相次ぎ買収されるなど危うさもあるとしています。

このような会社は規制すべきだと私は思います。

内容が伴わない企業を上場させ、上場していない会社を買収して中身を入れていくというのは、あたかも弁当箱だけを先に買っておいて、後から弁当の中身を詰めていくようなものです。

全く本質ではありません。

なぜ、このようなおかしな空箱上場が好まれるのかと言えば、内容のある会社の上場は大変だからでしょう。

利益を含め、あらゆる条件を満たしていないと上場はできません。

その点、空箱上場であれば、中身もない代わりにあれこれと指摘されることもない、というわけです。

そして、企業の中身で判断できないため、例えばある有名企業が投資しているといった「期待感だけ」で株価が高くなりやすいという特徴も好まれているのだと思います。

SPACは主に有名経営者や投資銀行が手がけていて、投資家のメリットとして通常のプライベート・エクイティ(PE)投資より短期間で投資を回収できる可能性があります。

しかし、私に言わせれば何1つ本質的なものはなく、非常に危険だと思います。

企業の事業などを正当に評価・審査することもなく、皆で寄って集って「お囃子(おはやし)」をしているだけに見えます。

にもかかわらず、SPACによるIPOの状況を見ると、件数も調達金額もこの数年で激増しています。

こんなことが許されるなら、株式市場はローラーコースターになってしまいます。





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※この記事は2月21日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は国内株式市場のニュースを大前が解説しました。

大前は日経平均の上昇について1990年当時の状況と比べながら、「個人が銀行への預金より増加の可能性がある株式投資を積極的に行っている」「実体経済が伴っていないという事実に留意する必要がある」と述べています。

発生している現象に対して、多様な観点から原因を考察することが大切です。

また、過去に起きた同様の現象と比較し、相違点や今後の予測を行うことで、次に取るべき行動を計画することが出来ます。



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