- 本文の内容
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- 新薬承認 新薬の早期承認へ新対策
- 国内ワクチン接種 ワクチン、出足の遅れ響く
- 医療従事者 医師・看護師を一元把握
- 緊急事態宣言 20都府県で病床使用率50%超
リスクを負いたくない厚労省の逃げ姿勢
厚生労働省が2021年度から医薬品の製造販売の承認を早める新たな対策に乗り出す方針です。
臨床試験で薬の有効性を証明する際、一方のグループに偽の薬を投与する代わりに、治験に参加していない患者の診療データ、いわゆる「リアルワールドデータ」を活用できるようにします。
これにより治験参加者が集めにくい場合の打開策になるとのことです。
新薬の承認に関して、日本は他国に比べても絶望的に時間がかかっています。
早く承認することで発生するリスクを負いたくない、という厚労省の保守的な態度の表れでしょう。
この数十年間で、薬による副作用などで厚労省は何度も訴訟を起こされていて、そういう事態を避けたいのだと思います。
他国ではすでにワクチンの接種が始まっているというのに、日本ではいまだに承認すらされていません。
自分たちの立場を守りたいためだけに保守的な姿勢を貫く厚労省を見ていると、まさに「役人らしい」と私は感じます。
日本のワクチン対応の出遅れについて、日経新聞は23日、「ワクチン、出足の遅れ響く」と題する記事を掲載しています。
海外50カ国以上で新型コロナワクチンの接種が始まっている中、日本では承認も終わっていません。
米ファイザーなどメーカーからの供給量や時期も不明確な部分が多く、接種の準備を進める自治体からは困惑の声が上がっています。
河野太郎規制改革相は、野党からの批判に対して「令和の『運び屋』と言われるよう頑張る」と語ったそうですが、現段階で言えば「運び屋」になる以前の問題です。
まだメーカーからワクチンの供給を受けることすら合意できていません。
これでは、菅首相が新年早々に発表した「2月下旬からのワクチンの配布」など全く不可能でしょう。
メーカーと供給量やスケジュールについて調整することはもちろん、ワクチンを接種する場所の確保、体制の準備も必要です。
他国では、野球場やドライブスルーでワクチンが接種できる体制を整えるなどしていますが、日本ではこうした準備も全く進んでいません。
河野太郎規制改革相としては、まず供給側のメーカーと話をすることが大切だと思います。
いつ日本にワクチンが届くのか?という最初の一歩から確実に話を始めるべきです。
そういう前提もなく、「2月下旬から国民にはワクチンを」と言われても、全く実現性がなく意味がありません。
医療従事者の給料を2倍にすれば、求職者は増える
日経新聞は20日、「医師・看護師を一元把握」と題する記事を掲載しました。
政府が今国会にマイナンバーと国家資格の情報を連携する法案を提出する見通しです。
新型コロナの感染拡大で各地の医療従事者が不足し、病床の確保が難しくなっている現状を踏まえ、休職者や離職者に協力を呼びかけやすい体制を整えるもので、2024年度までにシステムを整備する方針です。
全く馬鹿げた話だと思います。
マイナンバーについては、国家資格の情報と連携する以前に出来ていないことが山のようにあります。
その問題を棚上げにして、「マイナンバー」を持ち出すなど、全く本質が見えていません。
推計によると、すでに離職した医師や看護師は約60万人。
その人たちを含めて協力を呼びかけるつもりのようです。
しかし、そんなことをしなくても「給料を2倍にする」という条件を提示すれば、あっという間に医師や看護師を集めることができるはずです。
昨年の7月、東京女子医大でボーナスの不支給によって、看護師400名が退職の意向を示したと大きく報じられたことがあります。
その後ボーナスを支給することで大量退職は回避されたそうですが、これが事実を全て物語っていると思います。
ただでさえ、今、医療現場は大変な状況なのですから、給与が低かったら働きたくないと思うのは当然です。
そもそも離職者が多いのは、その職種に魅力がないからです。
この根本的なことをわかっていないから、「マイナンバーを使って・・・」といったズレた発想をしてしまうのでしょう。
病院の経営も悪化し、高い給料を支払えないという事情もあるでしょう。
それなら「GoToトラベル」ではなく、「GoBackToホスピタル」というキャンペーンにして、数兆円規模の予算をつければ良いのです。
体裁だけ取り繕ってマイナンバーの話を持ち出すのは、要するに何もやりたくない役人の発想です。
そもそも大学や大学院は国から認可されている訳ですから、卒業生名簿からアプローチすることも可能なはずです。
こんな簡単なことすらせず、適当にマイナンバーでお茶を濁すような施策はやめてもらいたいと思います。
緊急事態宣言を解除したとしても、今GoToトラベルで税金を使うべきではない
厚生労働省が22日に公表した統計によると、政府の分科会が示した感染状況を表す6つの指標において20都府県でステージ4(爆発的感染拡大)の目安となる病床使用率50%を超えたことがわかりました。
前週の19都府県を上回ったもので、緊急事態宣言の再発令から2週間が経過し直近の新規感染者の数は減少したものの、今後さらなる病床のひっ迫が懸念されます。
緊急事態宣言の発令条件となったステージ4は、「病床逼迫度・最大確保病床の占有率が50%以上」「うち重症者用の最大確保病床の占有率が50%以上」、そして「感染経路不明割合が50%以上」と明確に定められています。
政府分科会の尾身会長は、緊急事態宣言を解除する条件として「ステージ3へ低下すること」と発表していますが、これは当たり前のことです。
ところが、今のところ政府は緊急事態宣言解除の条件を明言せず、「2月7日まで」という期日のみを設定しています。
そして、「GoToトラベル」を推進したい二階派は、解除後、「GoToトラベル」を復活させる段取りで動いているようです。
特に、最近では「GoToトラベルが諸悪の根源というのは、間違いだった」という報道もあり、その意見に賛同する風潮も出てきています。
確かに、「GoToトラベル」を停止後も感染者は増加しました。
これは、正月前後に外出した人々による影響が大きいと見られています。
こうした背景もあって、ますます二階派は勢いづいています。
実際のところ、感染拡大の原因は様々であるので、「GoToトラベル」だけを原因として批判するのはおかしいと思います。
しかし、だからといって今のタイミングで「GoToトラベル」を復活させる必要があるのか?というと、私はそう思いません。
私はATAMI せかいえを経営していますし、先日も熱海市長と話をして旅行業界の厳しい現状は認識しています。
熱海のホテルも、平均稼働率が1割程度であり、非常に厳しい状況にあると聞きました。
これは非常に大変な事態ですし何とかしなければいけませんが、だからといって、税金を使って普段行けないところに行こう、というのは少し違う気がします。
飲食店一律6万円とせざるを得ない日本独特の事情
緊急事態宣言の発令を受けて、飲食店への時短要請及び協力金を支給することが発表されました。
飲食店の事業規模に違いがあるのに、それを一切無視して協力金を一律6万円とするのはおかしいのでは?という意見もあるようです。
事業規模に応じて協力金の支給額を変えるというのは、理論的にはもちろん納得できますし、もし他国で一律6万円などと言ったら、おそらく暴動が起こると思います。
しかし日本の場合、逆に事業規模に応じて支給額を変えるというのは、現実的ではないと私は思います。
なぜなら、「青色申告」の内容が実態とは異なり、不正確なことが多いからです。
もし収入に比例して支給額を算出することになれば、ほとんど支給を受けられない事業者も大勢出てくるのではないかと私は見ています。
その結果、今以上に大きな不満が爆発する可能性があります。
「去年までの青色申告が不正確だったのだから、支給額が少なくても文句を言うな」と言って、今回を機に「青色申告の問題」に正面から取り組み、是正していこうという政治家は、今の日本にはいないでしょう。
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※この記事は1月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は医療従事者のニュースを大前が解説しました。
大前はマイナンバーと国家資格の情報連携について「大変な業務に見合うだけの給与体制を整える方が重要である」「マイナンバーを持ち出すのは話が違うのではないか」と述べています。
課題から目を背けず、最も改善すべきポイントを突き止め適切な解決方法を考えることが必要です。
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