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- 大相撲初場所 休場98人、異例の幕開け
- 東京五輪・パラリンピック 2024年への再延期を主張
大相撲初場所が中止にならなかったのは、NHKの利権
日経新聞は11日、「休場98人、異例の幕開け」と題する記事を掲載しました。
10日に初日を迎えた大相撲初場所で新型コロナや怪我の影響で初日から休んだ力士は、全665人中98人にのぼったと紹介。
また関取16人が初日からいないのは戦後最多とのことで、運営面でも苦しい対応に追われそうと報じています。
今回、初場所自体を中止にすべきだったと私は思います。
大相撲の新型コロナへの対応は他のスポーツと比べても甘すぎると感じます。
例えば、テニスの全豪オープンのためにオーストラリアに向かった選手が搭乗したチャーター機で2人の新型コロナウイルスの陽性者が確認されたことを受け、同乗していた選手たちは2週間隔離されることになり、試合前にもかかわらず外で練習もすることもできないという状況に置かれています。
関取16人が休場しかつ横綱も2人休場するという状況ですから、私と同じように初場所自体を中止にしても良いのではないかと感じる人も多いと思います。
なぜ、中止にしないのか?また、なぜそれに対する批判が起きないのか?と言うと、NHKの利権とNHKの強い立場が影響していると私は思います。
大相撲が初場所を中止にしなかったのは、NHKが大相撲の利権を持っているからです。
もし大相撲の放送ができなくなれば、夕方の2時間の放送枠をどのように埋めるのかという話になります。
五輪はNBC、夏の甲子園は朝日新聞、春の甲子園は毎日新聞、そして大相撲はNHKが利権を持っており、結局のところ、こうした利権を確保したいために開催するという構図になっています。
このような背景について誰しもわかっているはずですが、今回の大相撲とNHKについて新聞も他の放送局も遠慮して真っ向から批判していません。
テレビに関して言えば、いまだに「電通とNHKの悪口は言えない」というほど、NHKは立場が強いのでしょう。
しかしそれゆえに、そのような「悪しき関係性」を正すべきだと私は思います。
また、もう1つNHKが抱える問題として私が提言したいのは、番組ごとに価値あるものを提供し、それに見合った料金体系にするべき、ということです。
NHKは受信料を2023年に値下げする方針を発表していますが、そもそも値下げの幅もそれほど大きいものではないし、本質的な問題はそこではないと私は思っています。
私はNHK・BS1で朝のニュース番組を見ていますが、ある日突然ニュースではなくゴルフが放送されることがあります。
視聴者は、それぞれの番組の価値に対してお金を支払うのであって、コンテンツをミックスして見ざるを得ないというようなやり方はやめるべきです。
特にニュース番組は、いつ・どんなときでも放送することが大切です。
世界を見渡しても、BBCにせよ、CNNにせよ、日本のNHKのように土日や正月になるとニュースを報道せずに、内容を変えてしまうことなどありません。
NHKはBSだけで4つもチャンネルを持っているのですから、ニュースだけを放送するチャンネルを作るのは簡単にできるはずです。
そして、その番組はネット配信で有料にしても良いと思います。
私はベルリン・フィルのライブ放送を見るために毎月約20ドル支払っていますが、同じように番組に価値を感じるならサブスクでお金を支払う人は絶対にいるはずです。
そうすることで民放とは違い、広告がなく見やすいという利点も活かされると思います。
今のNHKがどんな基準で、時間帯ごとに番組内容を変えているのか、私には全く理解できません。
ぜひ、ニュース番組を有料化してでも安定した内容を継続的に提供して欲しいと思います。
五輪開催の行方。意思決定者として、菅首相に求められることは?
1992年のバルセロナ五輪から4大会連続でボート競技の金メダルに輝いた、英マシュー・ピンセント氏は11日、東京大会を2024年まで延期すべきとの考えを示しました。
ワクチンを十分に供給されないまま、世界中から何千人も集まるのは「バカげている」としたものです。
また、ニューヨーク・タイムズは15日、国際五輪委員会(IOC)の中で安全な五輪開催は不可能との声が出始めたと報じています。
菅首相はビル・ゲイツ氏と電話会談をして「五輪をやり切る」と言ってみたり、「人類がコロナに打ち勝ったという証として、東京五輪を」などと発言していますが、私に言わせれば全く意味不明です。
今の世界的な状況を見ていると、五輪の開催は極めて難しいと言わざるを得ません。
無観客開催と言っても、審判員などで大量に人員が必要ですから感染対策は非常に難しいはずです。
選手村に入った選手が、ほぼ毎日PCR検査が必要になるというのも全く現実的とは思えません。
3月には五輪の聖火リレーが始まりますが、その途中で中止を発表するなどという事態になったら、目も当てられません。
五輪を無理に開催しようとした日本、IOC、NBCは世界中から批判を浴びることになると思います。
重要なのは、いつまでにどんな基準を満たしていれば五輪を開催するのかという「開催条件」を明確に示すことです。
そして、その条件を国民全員で達成するという流れに持っていくことです。
そうすれば、緊急事態宣言による自粛も、営業時間の時短要請なども、全て五輪開催に関わってきます。
すなわち、日本国民全員が五輪開催に影響力を持っているということになります。
加えて、日本だけが収まっていても他国の状況によっては開催が難しいでしょうから、米国や欧州における条件も決めておくべきでしょう。
こうした条件を明確にした上で、聖火リレーが始まる前に開催するか否かを決定するべきだと思います。
もう1つの考え方として、英マシュー・ピンセント氏の意見のように、一気に「4年ずつ延期にする」という策もありでしょう。
今の状況なら、東京に続くパリやロサンゼルスなども「4年延期」を受け入れてくれると思います。
ただし、年齢的に2020年の東京五輪で最後のメダルを目指していたような選手の立場を考えると、非常に厳しい判断になります。
しかし意思決定者である菅首相は、個別の感情を考慮すべきではなく、条件・基準を明確化して、毅然と意思決定をするしかないと思います。
日本には、第2次世界大戦で東京大会が中止になったという「五輪に対するトラウマ」があります。
それゆえに、何が何でも今回の五輪を開催したいという気持ちを強く持っている人もいます。
80歳を超えて五輪開催に尽力している東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長もその1人かもしれません。
そんな森会長の顔を見ていると文句を言えないという人も多いでしょうが、菅首相は意思決定者として、感情に流されず明確な基準に沿った決断をしてほしいと思います。
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※この記事は1月17日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は東京五輪・パラリンピックのニュースを大前が解説しました。
大前は東京五輪・パラリンピックの中止や延期の決定について、「感情を抜きにして明確な指標を作った上で意思決定する必要がある」と述べています。
意思決定のタイミングと基準を明確にしておかないと、ずるずると後ろ倒しになってしまうことがあります。
思い入れが強いものであればあるほど、客観的な指標を事前に決定しておく必要があります。
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