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- 国内財政 政府債務残高、GDP比突出
- 少子化問題 出生数、2021年80万人割れも
増加し続ける債務残高。返済の道を真剣に検討しなければ、日本は危うい
日経新聞は先月25日、「政府債務残高 GDP比突出」と題する記事を掲載しました。
国際通貨基金(IMF)が10月に公表した報告書によると、日本政府の債務残高は10月時点のGDP比で266%と米国のほぼ2倍に達すると紹介。
主要国で日本に次ぐ高さのイタリアでも161%で、2020年度に新規国債発行が当初予算の32.6兆円から過去最大の112.6兆円に膨らんだことなどが響いたとのことです。
これは非常に由々しき問題であり、将来的にこの問題によって日本は大恐慌に陥る可能性さえあると私は見ています。
今の日本では、国が借金をすると、金融機関が買い、それをまた日銀が買って、我々国民の前からお金が消えているかのように見えます。
この中に年金などのお金も組み込まれているので、非常に恐ろしいと感じます。
日本は約20年前からGDP比で150%を超える債務残高でした。
その後、他国がなかなか150%を超えない状況の中、日本だけはGDP比260%を超えるようになってしまいました。
国の費用負担として最も大きいのは、社会保障関係費で、2020年には35.9兆円も計上されています。
1985年には9.6兆円でしたから、35年で3.7倍に膨れ上がっています。
日本が社会保障費で対処していることについて、税金で負担せずそれぞれ保険を活用するなど、別の形で対応している国もあります。
日本もそのようなことを検討するべきだと思います。
社会保障関係費に次いで割合が大きいのは国債費で23.4兆円です。
利払いだけでも非常に大きな金額になっています。
当然のことながら、このような財政状況をずっと持続することはできません。
いつかどこかで破綻するのは目に見えています。
現状、日銀がETFを買い、株を買い、国債まで買いまくって、このような厳しい現実を隠しながら抱え込んでいます。
しかし、日本人は国民が危機感を持っていません。
日本の国債は、米国などのように他国が買っているわけではないので危険性はそこまで高くない、という意見もあります。
たしかに他国が保有する日本国債の割合は高くありませんが、いざ投げ売りしようと思えば、レバレッジをかけることができるので、決して安全とは言えません。
今のところ世界は、「日本人が落ち着いて買っているから大丈夫だろう」という見方をしてくれています。
しかし、実態としては日銀が仕組んでいるに過ぎないというカラクリに気づいたら、一気に投げ売りされる可能性もあると私は思います。
日本の将来性を考えるとき、人口が世界で最も早く減少しているという側面も見逃せません。
人口が減少することは、すなわち雇用人口も減少します。
給料を稼いでくる人がどんどん少なくなっていくので、債務を返済することはますます難しくなるのは自明です。
日本の状況は決して楽観視できませんし、そう考えて対応するべきだと思います。
先日、格付け会社フィッチ・レーティングスが日本国債の格付け見通しを「安定的」から「弱含み」に変更しました。
これに対し日本は増税による対策が可能という意見もありますが、実際には非常に難しいでしょう。
長年、政治家が甘やかしてきたために、日本国民は増税に対して非常に強い抵抗を示します。
日本においては、増税という政策は非常に実行しづらい方法なのです。
それゆえ、野党などは消費税をゼロにしよう、とアピールしています。
しかし、そんなことを言っていても債務残高は増えるばかりです。
どうやって返済するのかを、きちんと向き合っていかなくてはいけないと思います。
夫婦別姓など議論する前に、少子化や晩婚化問題に対処すべき
日経新聞は先月25日、「出生数、来年80万人割れも」と題する記事を掲載しました。
日本の少子化が想定を超える早さで進んでいると紹介。
結婚しない人の増加や晩婚化に加え、新型コロナの感染拡大で妊娠を控える傾向が重なったもので、2021年の年間出生数は80万人を割り込む試算が現実になれば、公的な推計に比べて10年以上も少子化が前倒しになるとしています。
少子化問題は、日本国債暴落のトリガーになるかもしれないほど深刻なものだと私は思います。
妊娠届出数を見ると、この数十年間減少傾向にあり、特に2020年は新型コロナウイルス感染症によって、妊娠する人が減少したとも言われています。
実際のところ、経過や重症度に関して妊婦と非妊婦は変わらないという報告もあり、実態は不明ですが、心情としては不安になるのも仕方ないかもしれません。
そして、日本全体の出生数と死亡数を見ると、数年前に死亡数が出生数を上回ってからも、年々に死亡者数は増加しています。
一方、かつて200万人を超えていた出生数は減少傾向を加速させ、80万人を割り込むレベルになってしまいました。
これから先は毎年60万人もしくはそれ以上の人口が年々減少していく状況になります。
また、婚姻件数の減少からも人口減少が加速していく流れにあることがわかります。
母親の年齢別出生数を見ると、昔は25歳から29歳が圧倒的に多く、 さらに24歳以下も非常に多かったことから、現在と比較すると出産年齢が低かったということが分かります。
30歳から34歳という年齢層の割合も高かったのですが、2人目の出産という人も多かったと思います。
今は35歳から39歳、さらには40歳以上の出産も増えてきています。
高齢出産はリスクが高く、強く推奨できるものではないかもしれません。
しかし、これはすでに日本の中に起こってしまった大きな構造変化であり、簡単には変わらないでしょう。
国にとっては、非常に由々しき問題です。
晩婚化そのものは世界的な傾向ですが、日本の場合には結婚して子供を作っても生活に不安があるというマイナス感情があるため、結果として晩婚化してしまっているのが問題だと思います。
フランスやスウェーデンのように子育て支援の制度が整っていないことも、晩婚化が増えている要因でしょう。
また、戸籍の問題もあります。
フランスでは事実婚で生まれた子を国が認めていて、日本のような戸籍問題が発生しません。
フランスでは生まれる子供の約60%が、両親が結婚していない子供です。
私は制度の整備により、出生数を増やしていくことは可能だと思います。
しかし今の日本では、こうした大切な議論をする以前に、夫婦別姓制度など些末的なことで喧嘩をしていて、とても議論がそこまで進んでいません。
晩婚化や少子化の問題は日本の力をどんどん削ぎ落としています。
2014年、日本創成会議の座長を務めていた増田寛也氏(現在日本郵政社長)が、2040年時点に20~39歳の女性人口が半減する自治体を「消滅可能性都市」と見なし、同時点までに人口1万人を切る523の自治体は、とりわけ消滅の危険性が高いというレポートを発表していました。
非常に残念ですが、そんな恐ろしい事態が現実になりつつあると思います。
それほど今の日本の状況は、切羽詰まっていると私は認識しています。
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※この記事は12月27日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は少子化問題のニュースを大前が解説しました。
大前は少子化が進んでいる原因について、新型コロナウイルスや生活への不安、さらに他国と比較し子育て支援制度の不足や戸籍問題を原因に挙げています。
1つの問題を引き起こす原因は必ずしも1つであるとは限りません。
正しく原因を分析するためには、幅広い視点を持つ必要があります。
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