- 本文の内容
-
- 欧州デジタル規制 EU、巨大ITに包括規制
- 米グーグル 米10州司法長官がグーグル提訴
- 米アップル 個人情報の扱いを開示
- 中国ネット企業 アリババ・テンセント系罰金
- 個人情報問題 閲覧情報ひそかに追跡
欧州による米IT大手に対する規制は、極めて厳しい
日経新聞は16日、「EU、巨大ITに包括規制」と題する記事を掲載しました。
欧州委員会は15日、包括的なデジタル規制案を公表しました。
デジタルサービス法とデジタル市場法の2つの法案から成るもので、2000年に制定した現行法を抜本的に見直し大きく進展した現代のIT産業に合わせた制度を作る方針です。
米国でも中国でも欧州でも、各地で稼ぎ過ぎたGAFAなどを対象に規制が始まっています。
かつて米国では資本を独占し巨大化した石油会社などが、価格を釣り上げるなど自由競争を阻害する要因になると指摘を受けて、企業分割を余儀なくされたことがありますが、今回、欧州では企業分割の話は出ていません。
代わりに、重たい罰金を払わせるという方針です。
デジタルサービス法案は、欧州の人口約10%に相当する4500万人以上の利用者を抱えるサービスを対象とし、違反した場合には「世界での売上高の最大6%を罰金」とするそうです。
利益ではなく売上の6%ですから、非常に重たい罰金だと思います。
また、プラットフォーマーが自社サービスを優遇したり、あるいは逆に他社のサービスを冷遇するのを規制するデジタル市場法案でも、罰金を「世界での売上高の10%」と定めるようで非常に重たくなっています。
これには、対象となるほとんどの企業が米国企業のため、「米国企業に対するいじめ」だと米国が強く反発しています。
欧州はこのまま実行する動きを見せていますが、さすがに罰金額が売上の10%というのは大きすぎるので、今後も米国と欧州は長い間揉めることになると思います。
やりたい放題と指摘を受けるグーグルの行方
日経新聞は18日、「米ネット広告寡占にメス」と題する記事を掲載しました。
テキサス州など米10州の司法長官が16日、反トラスト法(米独占禁止法)違反の疑いで米国のグーグルを提訴しました。
グーグルが運営する取引市場の利用と手数料収入を増やすことを最優先し、他の取引市場を使いにくくしたと主張するものですが、グーグルは「当社の手数料は業界平均より低い」などと反発しています。
提訴を主導したテキサス州のパクストン司法長官は、「(野球の)投手、捕手、打者、そして審判をひとりで兼務しているような状態にある」とグーグルの影響力の大きさを指摘していますが、グーグルとしては「成功者を罰するとは何ということか」と反発したいところでしょう。
グーグルが指摘を受けているのは、広告市場における寡占です。
特にフェイスブックと情報をやり取りして、お互いに「情報を寄せ合って」活用していると言われています。
フェイスブックに加え、さらにクレジットカード会社から情報をもらっているとも言われています。
グーグル、フェイスブック、クレジットカード会社の情報を集めてきて分析すれば、かなり正確に個人の趣味趣向やお金の使い途を把握できます。
それを分析した上で広告を打つことができれば、非常に高い広告効果を見込めるのは確かでしょう。
このような動きについて、米10州の司法長官は「現代における独占であり、寡占体制が目に余る」と主張しています。
またグーグルがユーチューブを買収したように、将来の競争を排除する動きも目に余るものがあり、やりたい放題だと指摘しています。
たしかに、個人の承諾を得ることなく、個人の情報を寄せ集めているとしたら、それは大きな問題であり改善されるべきでしょう。
アップルは事前に開示することで、取り締まり回避を狙う
米アップルは14日、同社が配信する全180万のアプリを対象に個人情報の扱いの開示を開始しました。
アプリの開発者は各国地域の規制への対応に加えて、アップルに個人情報の扱いについて申告する義務も生じることになります。
アップルのプラットフォームについても、グーグルと同じようなことが言えます。
アップルのプラットフォーム上で動くアプリやソフトウェアを開発している企業も、おそらく5社に1社ぐらいの割合で、徹底的に個人情報を集めて分析しているのではないか、と私は見ています。
アップルのセグメント別売上高を見ると、iPhone本体の売り上げは下降していますが、サービス部門が大きく伸びています。
アップルのプラットフォームを使ったアプリなどの広告効果が高いことを物語っていると思います。
個人情報を集め、それを活用して効率的な広告を展開しているのでしょう。
そういった状況において、アップルは約2800万のアプリ開発者すべてに開示を求め、取り締まると発表しました。
これは、グーグルなどへの規制の動きを踏まえて、自ら先に開示してしまおうということでしょう。
後になって規制当局から取り締まられる可能性を回避するための動きだと思います。
中国に、本気でアリババなどを規制して取り締まる気持ちはない
日経新聞は15日、「アリババ・テンセント系罰金」と題する記事を掲載しました。
中国規制当局はM&Aの際に申請がなかったことは独占禁止法違反にあたるとして、アリババ集団やテンセントの子会社に罰金を科しました。
米国の動きに反応するように、中国でもアリババとテンセントへの罰金を科したとのことです。
しかし、罰金額は2014年から2017年のM&A関連でたったの800万円です。
アリババにとって800万円といえば、痛くも痒くもないレベルでしょう。
中国としては、自分たちも米国と同様に規制をしているという姿勢を見せているつもりでしょうが、完全にポーズだけで、本気で規制して取り締まる気がないのは火を見るより明らかです。
デバイスフィンガープリントの規制が遅れる日本
日経新聞は19日、「閲覧情報ひそかに追跡」と題する記事を掲載しました。
日経新聞がネット通販など主要100社のサイトを解析したところ、22社でデバイスフィンガープリントの利用を確認しました。
ユーザーの閲覧記録などを追跡するクッキーの代替技術として注目されるものですが、利用者の行動を追跡して分析することが可能な手段であれば、欧州ではユーザーの同意を得ることが義務付けられている一方、日本は規制の対象外になっているとのことです。
これは日本も早急に対策をするべき案件だと思います。
クッキーに代わる代替技術として使われているデバイスフィンガープリントを利用すれば、ユーザーがインターネットの中でどのように動いたのか克明に知ることができます。
こうした情報を集めてメールアドレスと紐づければ、承諾のない広告メールを送り付けることも可能です。
もちろん、スパムメールフィルターによってスパムメールを事前に除去することも可能ですが、私の実感で言えば、スパムメールフィルターの精度はそれほど高くありません。
笑い話のようですが、友人のダニエル・ピンク氏からメールが届くと、「ピンク」という言葉に反応してメールがスパム扱いになってしまいます。
スパムメールフィルター自体は本質的な改善解決にはならないでしょう。
本人の了承を得ることなく勝手に動作を追跡して、デバイスフィンガープリントのデータを取得して活用するというのは、日本でもすぐに規制しなければならないと私は思います。
---
※この記事は12月20日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は個人情報問題のニュースを大前が解説しました。
大前は「デバイスフィンガープリントについて、日本も欧州と同様規制すべきである」「本人の了承なくデバイスフィンガープリントを追跡するのはとんでもないこと」と述べています。
技術開発が進み、ユーザーのインターネット上の行動履歴は検索履歴や購買履歴といった個人情報も含め簡単に把握できるようになりました。
技術が進化し、ルールも変化する中で、企業が正しく行動することが問われています。
▼【無料進呈中】ABS(アタッカーズ・ビジネススクール)が贈る「起業の5ステップ」
残業減少、副業解禁やリモートワークの拡大が進んだ今、起業も選択肢にしたい。
起業を考えてみたものの、何から始めたらいいのかわからない…そんな方にまず始める5つのステップを無料進呈!
https://bit.ly/37zU8aE