- 本文の内容
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- 国内新型コロナ対策 若年層、働き盛り世代の移動抑制求め
- 観光支援事業 「GoToトラベル」東京発着分の利用自粛要請で合意
- 国内雇用情勢 10月の完全失業率3.1%
高齢者と基礎疾患がある人に自粛を求める意味不明な対応
新型コロナウイルス対策を助言する厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」は3日、都道府県をまたいだ移動歴がある人の方が、ない人よりも他人にうつす頻度が高いとの分析結果を公表しました。
中でも20~50代の働き盛りの世代が他の地域に感染を広げているということで、これらの人々の行動を抑えることが重要と指摘しました。
激しく移動しているのは働き盛りの世代と若年層なのに、政府はなぜか「GoToトラベル」について、65歳以上の人や基礎疾患がある人に利用の自粛を求めるという、意味不明な提言をしています。
そもそも65歳以上の高齢者や基礎疾患がある人たちの多くは、政府に言われなくても自粛しています。
今さら、敢えて言う必要など全くありません。
実際のところアドバイザリーボードから何を言われたとしても、菅首相を始めとして何が何でも「GoToキャンペーン」を残したい人たちが、アドバイザリーボードの意見も聞こえないふりをして、話を進めているのではないかと私は見ています。
旅行業界から「GoToキャンペーン」をやめないでくれと頼み込まれて、政府は国民よりもそちらに目を向けてしまっているのだと思います。
産業別の就業者数を見ると、宿泊・飲食サービス業は420万人です。
決して小さくはありませんが、大きすぎもしません。
国全体の問題を俯瞰してみて、特別扱いしなければならないほどでもない、と私は感じます。
それよりも、医療福祉関係の従事者が新型コロナウイルスへの対応に追われ、仕事が休みなく続き疲労困憊しています。
こちらの方がより重要な問題なのに、国として何1つ政策を取れていないのがおかしいと言わざるを得ません。
国が何もしないので、病院ごとに必死に対応していますが、コロナに引っ掻き回されて病院経営も苦しい状況になり、冬のボーナスも出ない病院が多いと聞きます。
本来ならば無条件でサポートすべき医療従事者を、このような状況でほったらかしているのは国の怠慢でしょう。
重病者のための施設準備も遅れています。
今の何倍も準備しておかなければ、いざという時の備えにはなりません。
一切まともな対策をせず、国民が動き回る方にお金を捻出するというのは、あきらかにおかしな施策だと思います。
完全失業率3.1%は全く安心できる数字ではない
総務省が1日発表した10月の完全失業率は3.1%で前月比0.1ポイント上昇。
2017年5月以来の水準になっています。
また厚生労働省が同日発表した10月の有効求人倍率は1.04倍と前月比0.01ポイント上昇しましたが、1倍を割る地域が多く、雇用情勢は依然として厳しい状況とのことです。
ここで重要なのは、雇用形態別の就業者数の推移を見ることです。
すると、正規雇用はほぼ横ばいで大きく状況は変わっていませんが、非正規雇用は大きく減少していて、コロナ禍の影響を色濃く受けているのが分かります。
統計においては完全失業率3.1%とのことですが、この数字は実態を正しく表したものではない、と私は前々から指摘しています。
求職活動を行うなど、ハローワークと接点がある人でないと、失業者としてカウントされにくいからです。
ゆえに、雇用保険に加入していない人、あるいは就業希望はあるが直近は職探しを諦めた人などは計算に含まれません。
もしこれらの人たちも含めて失業者数を計算すれば、今回の何倍もの数に膨れ上がると思います。
完全失業率3.1%と聞くと、それほど危機感を覚えませんが、実際にはこの何倍もの数に達している可能性が高いでしょうから、決して安心できる数字ではありません。
これは今に始まったことではなく、日本の雇用統計にずっとつきまとっている問題です。
現実的に仕事がなくて困っているのは、非正規も正規も同じですから、全部含めて実態を把握しなければ意味がないと私は思います。
こうした状況の中で、経済的な苦を理由に大学を退学する学生も増えています。
医療従事者と同様、こういう人たちにこそ、国は今すぐに支援をするべきでしょう。
「GoToキャンペーン」は今すぐやらなければならないものとは思えません。
菅首相にせよ、自民党の二階幹事長にせよ、国としてより重要な問題に目を向けていません。
自分たちが掲げた「GoToキャンペーン」を意固地にやり続けたい、という姿勢にしか見えず非常に残念な限りです。
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※この記事は12月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は国内雇用情勢のニュースを大前が解説しました。
大前は完全失業率・有効求人倍率、雇用形態別就業者の対前年同月増減数の推移に触れ、「完全失業率だけでは、非正規従業員を含めた雇用状況を正確に把握できない」「実際の雇用情勢は完全失業率の数値よりもかなり深刻だと考えられる」と述べています。
データの定義を正しく理解しないと、状況を誤って理解してしまう恐れがあります。
また、複数のデータを参照・分析し、総合的に状況を判断する心がけが必要です。
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