大前研一「ニュースの視点」Blog

KON858「米エヌビディア/トコペディア/中国自動車市場~EVの製造拠点としての中国は過渡期に過ぎない」

2020年12月7日 トコペディア 中国自動車市場 米エヌビディア

本文の内容
  • 米エヌビディア 売上高約4900億円
  • トコペディア 米グーグル、テマセクから出資
  • 中国自動車市場 中国産EV、輸出始動

エヌビディアは自動運転で期待される超注目銘柄


先月18日、米エヌビディアは2020年8-10月期の決算について、売上高が前年同期比57%増の47億2600万ドル(約4900億円)だったと発表しました。

二本柱であるゲームとデータセンター向け半導体がともに好調で、2四半期連続で過去最高となりました。

エヌビディアはGPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)に強みがある会社です。

ゲーム業界で20年以上の実績を誇り、最近はロボット、AI、自動運転における活用が注目されています。

ソフトバンクから英国のアームを買収したことで、アームのCPUを取り込み、AIコンピューティングでさらに飛躍する期待を抱かせます。

今後、世界中で大きな需要が見込まれる自動運転において、グラフィック技術は極めて重要ですし、世界でも超注目銘柄の1つと言えるでしょう。

株価も好調でコロナ禍の影響も受けずに急上昇しています。

コロナ禍でゲーム市場の需要が高まったことも追い風になっています。

数々のゲーム機に、エヌビディアのグラフィック技術が使われています。





慎重なテマセクホールディングスが出資を決めたトコペディアとは?


インドネシアのネット通販大手・トコペディアが、米グーグルとシンガポールの政府系投資会社テマセクホールディングスから追加の出資を受けたことが分かりました。

出資額は約3億5000万ドル(約370億円)で、インドネシア政府が主導する経済のデジタル化を見据え、トコペディアの事業を側面支援する考えです。

インドネシアのユニコーン企業には、バイクによる配車サービスを展開するゴジェックなど数千億円規模の企業がいくつかあり、トコペディアもその1つです。

トコペディアはEコマースのプラットフォームを提供していますが、日本の楽天などよりも進歩が早いと感じます。

東南アジアの企業は、中国企業をお手本にして急速に進化しているのが特徴です。

トコペディアには米国セコイア・キャピタルや中国アリババなども投資していますが、今回シンガポール政府系ファンドであるテマセクホールディングスが出資を発表したのは注目すべきでしょう。

テマセクホールディングスは、投資判断が非常に慎重なことで知られていますから、そこに意味があると思います。





EVの製造拠点としての中国は過渡期に過ぎない


日経新聞は先月21日、「中国産EV、輸出始動」と題する記事を掲載しました。

米テスラや独BMWが2021年初めまでに、中国から欧州へ電気自動車(EV)の輸出を開始すると紹介。

中国政府がメーカーに補助金を出すなどして現地販売や製造を強化していることから、バッテリーなど関連部材の企業も集積しており中国が世界を主導するEV強国として存在感を増しているとしています。

ガソリンエンジン車の歴史を振り返ると、日本から世界中に輸出された結果、日本メーカーは世界中から叩かれて、世界各地で現地生産が行われるようになりました。

今EVにおいては、中国が製造拠点として名乗りを挙げているという形です。

独BMWもEVを中国で製造すると発表しています。

中国政府からの補助金もあり、部品やバッテリーも安いので、メリットも大きいでしょう。

また、テスラも米国に加えて、中国の上海で製造していますから、中国がEV製造の拠点になっているのは確かです。

しかし、現在テスラはベルリン近郊に大規模な工場を建築中です。

製造拠点としての中国は、ドイツまでの「つなぎ」という考えでしょう。

将来的には他にも主要市場が出てくるでしょうから、テスラだけでなく中国以外で製造するメーカーは出てくると思います。

中国におけるEVの製造拠点というのは過渡期的な動向だと見るべきです。

中国は「2060年までに温室効果ガスの実質的な排出量をゼロにする」との目標を打ち出し、さらにEVに注力していく流れです。

欧州は総じてハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)が出遅れているので、ほとんどEVにシフトしていくと思います。

EVについて、当初は日産や三菱が世界に先行していましたが、今となっては中国や米国企業に追い抜かれた形になっています。

日本メーカーは、うっかりすると世界の後塵を拝する結果になってしまうので早く動いてほしいところです。

一方、自動運転においては、日本は極めて遅れています。

先日、国土交通省がホンダのレジェンドに対し、自動運転レベル3の型式指定を付与したと発表しました。

しかし、私に言わせれば、自動運転の技術においてはほとんど勝負にならないほどGM、ウェイモ、テスラなどが日本企業に先行しています。

トヨタは実証都市「コネクティッド・シティ」を東富士(静岡県裾野市)に設置し、データを収集して自動運転に活かしていくと発表していますが、これでもテスラの足元にも及ばないと私は思います。

今、町中を走っているテスラ車は、手を離してもある程度運転できるレベルに達しています。

テスラは、そのリアルな走行データを常時吸い上げて自動運転に活かすことができます。

ホンダがレベル3の認可を受けたと喜んでいる場合ではなく、自動運転において日本メーカーは、はるかに世界から遅れているのだと認識するべきだと思います。





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※この記事は11月29日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はエヌビディアのニュースを大前が解説しました。

大前はエヌビディアの事業について、「エヌビディアのGPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)は20年以上ゲームに使用されてきたが、グラフィック技術を活かして自動運転車の開発にも取り組んでいる」と述べています。

自社が既に持っているノウハウとトレンドを組み合わせることで、ビジネスチャンスを広げられる可能性があります。

日々のニュースから、「自社なら何ができるだろうか」とアイデアを出してみることからスタートしましょう。

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