- 本文の内容
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- 世界中銀 日米欧中銀の資産増、リーマン後の4倍
- 世界株式市場 世界株、時価総額最高に
- REIT 「安定配当」妙味揺らぐ
- 国内商社大手 バフェット氏率いる投資会社、5大商社株を5%超取得
世界で中銀が日銀と同じ政策を取り始めた
日経新聞は3日、「日米欧中銀の資産増、リーマン後の4倍」と題する記事を掲載しました。
コロナ禍に対応するための積極的な資産購入により、日米欧の主要3中銀の総資産がこの半年間で合計618兆円増加しました。
これはリーマンショック後の4倍のペースで、中銀は当面危機対応を緩められないものの、緩和の副作用が強まる懸念もあります。
今の中央銀行の役割は、政府が乱発した国債その他を買い取り、それによって世の中にキャッシュを供給することです。
実は、世界の中でこのような動きをいち早く見せていたのは、アベノミクスを展開した日銀です。
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、トランプ政権下で米連邦準備理事会(FRB)も恥も外聞もなく同様の動きを見せ始め、ついには慎重なドイツも根負けして欧州中央銀行(ECB)も折れました。
このようにして、世界のほとんどの中央銀行がゼロ金利政策をとるようになっています。
行き場のない資金が株式市場に集まっている
日経新聞は2日、「世界株、時価総額最高に」と題する記事を掲載しました。
世界の株式時価総額は8月末時点で89兆ドル(約9400兆円)で、月末ベースでは2019年12月以来、8ヶ月ぶりに過去最高を更新しました。
米中が牽引し、コロナ禍による消失分を取り戻したものですが、3日のニューヨーク市場ではハイテク株が急落し、ダウ平均が一時1000ドル安となるなど過熱感を警戒する動きも出ています。
政治家は新型コロナウイルス感染拡大に対して、お金を乱発することで景気を戻すという安易な施策に走っています。
本質的なコロナ対策は時間がかかり大変ですが、お金を乱発するのは非常に簡単です。
冷静に見てみれば、企業業績は上向いていません。
大多数の企業の業績は悪化しているのが現状です。
ニトリや任天堂、あるいは米国GAFAなど、ごく1部の企業はコロナ禍の影響も受けずに改善していますが、ほとんどの企業は地獄の一丁目を迎えるというほど、厳しい状況に追い込まれています。
それでも株価が上がっているのは、2つのトリックがあります。
1つは、ダウ平均などに企業を選定する際に、株価が上がりやすい企業を恣意的に選んでいるのでしょう。
もう1つは、結局のところ他に資金の行き場がなく、株式市場しか行き着くところがない、ということだと私は思います。
日本は、85年のプラザ合意で極端な円高に振れた影響もあって、見かけ以上に経済が膨らんだ結果、バブル景気を迎えました。
当時は株式市場だけでなく、土地も値上がりし、そこから絵画、ゴルフ場などにも資金が流れていきました。
ところが、今回の世界的なお金の流れを見ていると、そのような兆しはなく、あくまでも株式市場に限った動きになっています。
物流系REITとその他REITで明暗が別れた
日経新聞は2日、「『安定配当』妙味揺らぐ」と題する記事を掲載しました。
REIT(不動産投資信託)相場が足踏みしています。
新型コロナウイルス感染拡大でホテル、商業施設、オフィス市況の先行きが不透明なほか、最大の魅力だった安定配当成長が揺らいでいるため、と紹介しています。
ホテルを作ってREITに組み込んでしまえば、賃貸料収入を原資として配当にできるため、非常に安定していました。
しかし、ホテル、商業施設、オフィス市況が落ち込んだことで、REITも同様に暴落する状況になっています。
とは言え、全てのREITが暴落しているわけではなく、Amazonを筆頭に物流系のREITは相変わらず堅調で、外国ファンドなども入ってきていて価格が上昇しています。
REITが全般的に落ち込んでいるわけではなく、物流系は上昇しているものの、その他が下がっているというのが正確な状況です。
このような動きを見ていても、不動産へ資金が流れていた80年代後半の状況とは異なっているのが見て取れます。
バフェット氏の日本商社への投資は、「日本のETF」投資と同じ
ウォーレン・バフェット率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイは先月31日、日本の大手商社5社の株式を発行済株式数の5%超まで取得したと発表しました。
これについて、バフェット氏は「世界で合弁事業を展開しており、提携関係はさらに増えるだろう」と説明しました。
ウォーレン・バフェットと言えば、その投資手法の代表格はコカコーラ。
米国の一般市民に近い安定した企業の株を買うというのが、バフェット流です。
アップルの株を6%ほど保有していますが、基本的にはGAFAのような企業への投資はほとんど行っていません。
そんなバフェット氏は、日本への投資に出遅れていましたが、ここに来て日本の5大商社に手を出した、ということで話題になっています。
しかし、私に言わせれば「ついにウォーレン・バフェットでさえも焼きが回ったのか」と思います。
日本の商社というのは、何にでも手を出してビジネスをしている企業です。
ゆえに、日本の商社に投資したというのは、「日本のETFを買った」のと同様だと私は思います。
ある意味では安定志向のバフェット流と言えるかもしれませんが、確固とした選定眼も持たず「日本のETFを買うような投資判断をする」というのは、バフェット氏にしては情けないと感じます。
決して、日本の商社を見極めて投資したということではないでしょうし、逆に日本の商社の内情を知ったうえで投資しようと考えたのであれば、それも大いに問題があると私は思います。
実際の日本の商社の実力を見てみれば、伊藤忠にせよ、三菱商事にせよ、世界的に見ればたいしたことはありません。
米国という遠い場所から眺めていたからこそ、投資に至ったのかもしれません。
とはいえ、バークシャー・ハサウェイの総資産から見れば、日本の5大商社に5%ずつ投資する金額は、雀の涙ほどであり、全体に及ぼす影響はほとんどありません。
日本からすると、「ウォーレン・バフェット、いらっしゃいませ」といった歓迎ムードですが、バークシャー・ハサウェイからすれば、それほどでもないのでしょう。
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※この記事は9月6日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は世界株式市場のニュースを大前が解説しました。
大前は80年代後半の状況と比較しながら、株価が上がっている理由を説明しています。
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