- 本文の内容
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- ソフトバンクグループ 米IT関連株を多数保有
- 楽天 楽天のEC連携、対アマゾンに活路
- 音声配信市場 音声配信ラジコ、迫る1000万人
- 国内電力大手 EV充電の定額サービス
新しいソフトバンクグループの投資戦略は、IT型ウォーレン・バフェット
米国証券取引委員会(SEC)が先月17日に開示した内容によると、ソフトバンクグループが6月末時点で、アマゾン・ドット・コムやアルファベットなど、米国のIT関連株を多数保有していたことがわかりました。
同社は、新型コロナウイルスへの対応で保有資産の現金化を進めていますが、得た資金の一部を成長が見込める銘柄に投じたと見られています。
「ソフトバンクグループが今何をやっているのか?」ということを把握するのは、かなり難しくなっています。
おそらくソフトバンクの社員ですら、全容を把握して理解している人はほとんどいないでしょう。
これまでソフトバンク・ビジョン・ファンドは、未上場の企業に投資して支配をしていく、という形を取ってきました。
しかし今後は、GAFAのような上場しているIT関連株に投資していく、というスタイルへ方針を転換したようです。
ソフトバンクグループは4.5兆円の資金を調達しました。
アリババ株、TモバイルUS株、そして携帯子会社のソフトバンク株も影響力を維持できるギリギリまで売却しています。
今後は、得た資金を活用してIT型ウォーレン・バフェットのような立場で、資産運用会社として機能していくのだと思います。
楽天の「対アマゾン」施策がほとんど失敗する理由
日経新聞は先月27日、「楽天のEC連携、対アマゾンに活路」と題する記事を掲載しました。
楽天がカナダのEC大手・ショッピファイとの提携で米国の出店者を取り込み、楽天市場の魅力を高める戦略を打ち出したと紹介しています。
楽天はこれまで、対アマゾンの秘策として自社物流の整備や送料の無料化などを進めてきましたが、アマゾンキラーの異名を持つショッピファイとの連携で活路を開く考えとのことです。
この楽天の施策がどのくらいうまくいくのか?
私はやや疑問を感じています。
アマゾンと楽天は、そもそもビジネスモデルが根本から異なります。
アマゾンは自ら販売するモノを購入し、自らの倉庫で管理して、物流まで展開しています。
一方の楽天は、楽天「市場」の名の通り、市場として商品を陳列する場を提供しているに過ぎず、商品の管理や物流は楽天ではなく出店者が行っています。
このようなビジネスモデルの根本的な相違が、現在の両者の大きな差を生んでしまっているのだと私は思います。
ショッピファイと提携することで、北米で売れているものを楽天で扱えるようにするというのは、ある程度効果を見込めるかもしれません。
しかし、それほど大きなインパクトは残せないでしょう。
これまでにも楽天はアマゾンを追いかけて対抗策を取ってきましたが、成功していません。
代表例は、アマゾンのKindleに対抗した電子書籍端末「Kobo」です。
様々なキャンペーンを実施し、一部の出版社には無料配布なども行ったようですが、今となってはKoboを利用している人などほとんど見かけません。
結局のところ、重要なのは根本的なビジネスモデルです。
楽天がアマゾンの経営形態にいかに近づけるかということが肝であり、その土台をコツコツと作り上げていくしかないと私は見ています。
ここには近道はありません。
楽天が根本的な変革を目指す時、出店者との交渉にもさらに気を配る必要があるでしょう。
楽天は送料の強制的な無料化施策などで出店者の反感を買い、結果として公正取引委員会に睨まれています。
今後は、ますます出店者と対立しないように交渉することが重要だと思います。
セブンイレブンが24時間営業の継続をフランチャイズ側に要求したことで、一部のフランチャイズ店舗が公正取引委員会に駆け込んで、大きな問題になりました。
楽天と出店者の間にも全く同じような構造の問題が存在すると私は見ています。
ラジコは広告モデルではなく、有料会員を増やす方向を追求すべき
日経新聞は先月21日、「音声配信ラジコ、迫る1000万人」と題する記事を掲載しました。
新型コロナウイルスの感染拡大で在宅時間が増える中、音声配信サービスの市場が活気づいていると紹介。
国内のネットラジオ最大手・ラジコの月間利用者数は1000万人が視野に入り、民放の動画配信サービスに迫る勢いのほか、ポッドキャストが浸透している米国では広告価値が高まり買収も起きているとのことです。
音声配信のラジオサービスはパソコンでもスマホでも気軽に聴くことができ、大きく成長するのは予想されていました。
定番のラジオ番組だけでなく、実に様々なチャンネルがあります。
例えば、小説やニュースを朗読してくれるチャンネルもあり、車に乗っている時などに好きな音楽やラジオを聴く以外に、小説やニュースを聴くという用途にも使えます。
そういった全ての番組を月額350円の有料会員になれば聴き放題になるのですから、人気が出るのも頷けます。
このような音声配信サービスは海外にもたくさんあり、大きな需要があるのは間違いありません。
ただし、「1000万人規模の会員を抱えているなら、さらに広告効果を期待できるのではないか?」ということですが、この点は注意するべきです。
あまり広告色を強めすぎると、結局のところ従来の民放と同じになってしまいます。
そうではなく、あくまで有料会員を増やしていく形を目指し、そこに活路を見出すべきだと私は思います。
定額充電し放題サービスの伸びしろはあるが、まだ不便さは否めない
東京電力ホールディングスと中部電力が電気自動車(EV)向けの充電で、定額サービスを開始する見通しが明らかになりました。
まずは企業向けに全国に約7000基の充電器を1台あたり月額5000円前後で利用できるようにするもので、世界的な脱炭素でEV向け需要は拡大が見込めると想定し、新たな収入源に育てる考えとのことです。
1回の充電で500キロ走行できる車も出てきています。
充電し放題で月額5000円であれば、ガソリンよりもかなり安いですし、大きくサービスとして成長する可能性はあるでしょう。
とは言え、7000基という数ではガソリンスタンドの25000基には遠く及びません。
いくら5000円という価格を安く感じても、近くに充電器がなかったり、あるいは近くにあっても混雑して順番待ちすることになったりしたら、「面倒で使いたくない」という人も多いでしょう。
あるいは、家庭用の充電器と充電の「形」が違っていたら、それだけで利用するのが面倒だと感じる人はいるはずです。
このような様々な「不便さ」を解消できれば、使い放題で月額5000円で日本中どこでも充電できるとなれば、今のハイブリッド車も含めて幅広く利用されるようになって、大きく伸びていくと思います。
15年後には、ガソリン車・ハイブリッド車・電気自動車が三つ巴でそれぞれが同じくらいのシェアになっていると予想されます。
そういった状況で、どこまで利用者を伸ばせるのか注目したいところです。
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※この記事は8月30日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は楽天のニュースを大前が解説しました。
大前は「アマゾンの経営形態にいかに近づけるかということが肝」「近道はない」と述べています。
いくら対策を講じても、根本的な問題を解決しない限り、問題がなくなることはありません。
急いで対策をとるのではなく、 その業界のKFS(Key Factor for Success)を特定し、徹底的に強化することが一番の近道になります。
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