大前研一「ニュースの視点」Blog

KON844「日本郵政/世界クルーズ船大手/世界航空大手/国内旅行業界~事業の多角化を進めた鉄道会社がとるべき道とは?」

2020年8月31日 世界クルーズ船大手 世界航空大手 国内旅行業界 日本郵政

本文の内容
  • 日本郵政 豪トールHDの事業売却を検討
  • 世界クルーズ船大手 クルーズ船の悪夢再び
  • 世界航空大手 航空需要蒸発、主要36社赤字2.3兆円
  • 国内旅行業界 主要48社の取扱額、6月は92.9%減

日本郵政 豪トールHDの事業売却を検討


日本郵政が傘下のトールHDの事業を売却する検討に入ったことがわかりました。

トールは日本郵便が2015年に約6200億円で買収しましたが、業績不振が続き、2017年には4000億円の減損処理を強いられていました。

減損処理までしたのに、最終的には売却することになったというのは情けない限りです。

日本郵便のセグメント別業績を見ると、郵便・物流事業と金融窓口事業はある程度利益を出していますが、トールが担っていた事業である国際物流事業が大きく足を引っ張っています。

トールの買収は、元東芝の西室氏が日本郵政で展開した施策です。

西室氏が自身の存在感を示すために、離れ業として打ち出した施策だったと思いますが、それが全くうまく機能せずに終わってしまいました。

同じように官僚が民営化した事例でも、JTは日本郵政ほど傷つくことはありませんでした。

JTの場合には財務省からの天下りなど人材も豊かで、ある程度国際化に成功できましたし、M&Aもいくつか成功させています。

日本郵政は、途中で経営陣も変わり、上手くいかない典型的な事例になってしまいました。




クルーズ船業界、航空業界、国内旅行業界はすべて壊滅的


国際情報サイト・ニュースフィアは14日、「クルーズ船の悪夢再び」と題する記事を掲載しました。

約3ヶ月の休業期間を経てようやく営業を再開した世界のクルーズ船大手ですが、またもや乗客や乗組員から新型コロナウイルスの感染者が発生して立ち往生しています。

万全の感染対策をとっているにも関わらず発生しているもので、今後は寄港地の確保なども課題としています。

クルーズ船事業が置かれた状況は非常に厳しいと言わざるを得ません。

クルーズ船の有力国として有名な英国では、クルーズ船が稼働していない為、今は海岸にずらりとクルーズ船が並んでいる状態。

一部の観光客は、めったに見られない一列に並んだクルーズ船の様子を撮影するなど楽しんでいるようですが、何とも皮肉な話です。

クルーズ船業界は約15兆円という巨大な産業で、雇用人数は120万人にのぼります。

顧客の数と同じぐらいスタッフの数も多いという労働集約型の業界です。

世界シェアを見ると、カーニバル:47.4%、ロイヤルカリビアン:23%、ノルウェージャン:9.5%となっていてほぼ寡占化している業界です。

世界のクルーズ船の客数は近年伸びていて、「ようやく時代が来た」と思われるタイミングでしたが、今回の新型コロナウイルスの影響で一気に下がってしまいました。

ダイヤモンドプリンセス号のような悪夢を二度と起こしてはならないと思うと、どれほど完璧な対策をとっていると言われても、誰も積極的に利用できないのは当然と言えるでしょう。

120万人の雇用が失われ、転職もままならないとしたら、悲劇としか言いようがありません。

日経新聞は8日、「航空需要蒸発、主要36社赤字2.3兆円」という記事を掲載しました。

夏場になりましたが、当初の予想を覆し需要は回復せず、有利子負債の合計金額は23兆円にのぼると警鐘を鳴らしています。

航空業界も、クルーズ船業界と同様、ほぼ死に体のような状況です。

関連して、国内旅行業界も壊滅的な状況です。

5月から若干上向いたとは言え、6月の主要48社の取扱額は、前年同月比で92.9%減です。

GoToトラベルキャンペーンによって回復を目指しましたが、岩手県など一部の地域で都心からの観光客を敬遠する動きも出てきてしまい、手も足も出ない状況です。




これまでとは異なった多角化の視点も必要


こうした状況を見ていると、事業の多角化においても「どのようなリスクを想定するのか?」という点は重要だと感じます。

例えば、事業の多角化を進めた鉄道会社の多くが、ホテルやターミナルビルのデパート事業などに手を出していますが、今回の新型コロナウイルスの影響を受けて、多角化した事業も全て共倒れになっていて上手にリスクヘッジができているとは言えません。

これこそ新型コロナウイルスの恐ろしさとも言えますが、今回の事態は100年に1度と言えるような状況ですから、多角化そのものが全く無駄だと結論づけるのも違うと私は思います。

今は社会インフラでもある鉄道事業を中心に生き残ることを考え、その上で今後に備えて従来と違うやり方を模索するべきです。

例えば、一部の鉄道会社はすでに手を出していますが、病院や学校など少し異なった事業を経営するのも良いでしょうし、あるいは、鉄道と自動車は相性が良いので、その組み合わせで事業を捉え直すと大きなチャンスになるかもしれません。

鉄道と車を上手に連携させることで、二酸化炭素の発生量を少なくするような移動手段を実現することもできます。

そのような発想を持っていると、突破口をいくつも考えることができるはずです。




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※この記事は8月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は国内旅行業界のニュースを大前が解説しました。

大前は、事業の多角化を進めた鉄道会社について、「鉄道事業を中心に生き残ることを考え、その上で今後に備えて従来と違うやり方を模索するべき」と述べています。

事業がうまくいっていないときには、一度すべてを取っ払って、ゼロから考えてみることが大切です。

自社ができることは何か?

自社の資産や強みを再度認識することで、新たな突破口が見えてくるかもしれません。


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