大前研一「ニュースの視点」Blog

KON843「ファミリーマート/セブン&アイHD/米企業~ファミリーマートの苦戦は伊藤忠の能力不足が原因」

2020年8月24日 セブン&アイHD ファミリーマート 米企業

本文の内容
  • ファミリーマート ファミマ、アジアで苦境
  • セブン&アイHD 米スピードウェイ買収を発表
  • 米マクドナルド 成長なきマック「売り時」
  • 米ウォルトディズニー 休園で狂う「成長の方程式」
  • 米ロード・アンド・テイラー 米連邦破産法11条の適用申請

ファミリーマートの苦戦は、伊藤忠の能力不足


日経新聞は7日、「ファミマ、アジアで苦境」と題する記事を掲載しました。

ファミリーマートがタイで合弁会社の出資を引き上げたほか、中国では現地のパートナーとの訴訟が続き、撤退の観測も浮上していると紹介。

部分的な現地化しかできなかったため大衆層を取れず、意思決定にも時間がかかったことが要因との見方もあり、ファミリーマートの完全子会社化を目指す親会社の伊藤忠商事が反転攻勢の鍵を握るとしています。

この見解は「逆」だと私は思います。

今ファミリーマートが混乱している状況を生み出しているのは、伊藤忠の能力不足が原因だからです。

伊藤忠はコンビニ以外の分野で、中国の中国中信集団(CITIC)、タイのチャロン・ポカパンなどと手を組み、1兆円規模の巨大ファンドを組成し大きな動きを見せていました。

ところが、チャロン・ポカパンはタイでセブンイレブンと手を組むなど、伊藤忠がコントロールできているとは言えない状況でした。

結局、中国でも上手くいかず、タイは撤退する羽目になっています。

報道を読むと、伊藤忠がファミリーマートを完全子会社化して立て直すという論調ですが、このファミリーマートの苦境を生み出したのは伊藤忠です。

そもそも、伊藤忠はファミリーマートの最大株主であり、50%以上を保有しているのですから、言い訳できる要素はないと私は思います。

伊藤忠の能力不足が露呈しただけであり、これからファミリーマートを完全子会社化したところで、成功する見込みはほとんどないと私は見ています。




セブンイレブンの買収は、活用法次第で大化けする可能性


セブン&アイ・ホールディングスは3日、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムのガソリンスタンド部門であるスピードウェイを210億ドル(約2兆2000億円)で買収すると発表しました。

セブン&アイは今年3月、買収額で折り合わず一旦は断念しましたが、長期的な成長には米国市場が欠かせないとして再び買収に乗り出した形です。

このセブンイレブンによるスピードウェイ買収は使い道を間違えなければ、かなり功を奏するのではないかと私は思います。

現在セブンイレブンは米国で約9000店舗を展開し、コンビニ業界のトップシェアです。

米国でセブンイレブンに次いでいるのは、アリマンタシォン・クシュタールで約6000店舗です。

セブンイレブンが買収を成功させて、スピードウェイの約4000店舗を取り込むと、全体で13000店舗となり大きく2位を突き放す形になります。

圧倒的な店舗数を確保した上で、リアルとサイバーの接合拠点として活用できれば大いにチャンスがあるでしょう。

サイバーで注文したものをリアルの店舗でピックアップするというニーズは年々高まっていて、13000店舗を展開できるとなると、米国内でもかなり大きな影響力を持てると思います。

今後ガソリンの需要は減っていくので、スピードウェイについてもガソリン事業の期待はできないと思いますが、コンシェルジュ的なサービスを提供する場、あるいはEコマースを補完するリアルの拠点として、大いに役立てられると思います。

買収後の活かし方次第だと私は見ています。




縮小均衡で利益を出している日本マクドナルドの実態


日経新聞は5日、『成長なきマック「売り時」』と題する記事を掲載しました。

米国のマクドナルドが保有する日本マクドナルドの株の一部を売却する見通しと紹介。

日本事業は5年前の異物混入による低迷から回復し、コロナ禍においてもテイクアウト需要を取り込み堅調な業績を上げていますが、米国マックは成長が乏しいと判断し売却に動くと見られています。

日本のマクドナルドは好調だと言われていますが、実際のところは縮小均衡することで利益を出しているに過ぎず、昔に比べると売上も利益も減少しています。

それにも関わらず、日本マクドナルドの株価は高い状態で推移していますから、「今が売り時」だと米マクドナルド本社が判断するのは、親会社から見れば当然の判断だと言えるでしょう。

マクドナルドの世界的な展開を見ると、欧米などではほとんどが直営店で、一部の国はライセンス料のみで展開しています。

日本では藤田田氏の藤田商店と米国マクドナルドで、合弁企業の日本マクドナルドを設立して展開したため事情が異なります。

米国マクドナルド本社は、フランチャイズフィーを受け取っているものの、日本マクドナルドの株式は50%しか保有していません。

マクドナルド全体のセグメント別業績を見てみると、海外事業も米国事業も利益を出していますが、日本、中国、南米などの海外ライセンス事業だけが縮小しています。

この状況にも関わらず、日本においてはメディアが報じたこともあり、マクドナルドはV字回復を成功させたと認識されていて株価が高くなっています。

米マクドナルド本社としては、ある程度株を売却したところで35%ほど残しておけば、経営に対する影響力を発揮することはできます。

それでも、ライセンス料を受け取りながら約1000億円のキャッシュを得ることができるのですから、ありがたい話でしょう。

日本で言われているほど、日本マクドナルドの経営は成功しているわけではありません。

「縮小均衡で利益を出しているに過ぎない」ということを米マクドナルド本社に見透かされてしまった、ということです。




映画とテーマパークのダブルパンチは、さすがにディズニーでも苦しい


日経新聞は6日、『休園で狂う「成長の方程式」』と題する記事を掲載しました。

米ウォルトディズニーが、約19年ぶりの最終赤字に転落したと紹介。

新型コロナウイルスの影響で大作映画の公開が全て先送りになったほか、稼ぎ頭だったテーマパークの再開もままならない現状で、キャラクターを中心にリアルとデジタルの両面からファンを育てる成長の方程式は新型コロナウイルスで狂ったとしています。

中国のシネコンも非常に厳しい状況に追い込まれていますが、ディズニーも映画やテーマパーク事業が大苦戦し、苦境に立たされています。

2020年4~6月期の業績は47億2100万ドル(約5000億円)の赤字に転落しています。

セグメント別の業績を見てみると唯一健闘しているのは放送部門です。

動画配信部門はNetflixにあおられてスタートしたものの、新型コロナウイルスのタイミングに間に合わず、Netflixに一人勝ちを許す形になりました。

映画は制作したものの公開できない状況、テーマパークも閉鎖しています。

ディズニーが四半期で数千億規模の損失を計上するのは非常に珍しいことですが、新型コロナウイルスの影響も踏まえ、そういう時代なのだと認識するしかないでしょう。

映画とテーマパークという2つの大きな稼ぎ頭がほぼ止まってしまったのは、ディズニーにとっても大きな痛手となりました。




破綻企業リストに新たにロード・アンド・テイラー


米老舗百貨店ロード・アンド・テイラーが2日、米連邦破産法11条の適用を申請しました。

同社は1826年にニューヨークで創業し、米国で最も古い百貨店とされますが、近年はネット通販の台頭などで不振が続いていたほか、新型コロナウイルスの感染拡大で全米38店舗が営業休止になったことなどが響いた形です。

ブルックスブラザーズ、JCペニー、ニーマン・マーカス、Jクルー、ディーン&デルーカなど、破綻した企業リストにまた新たにロード・アンド・テイラーが追加されることになりました。

アマゾンエフェクトという見方もあると思いますが、ネットを強化しているウォルマートなどが生き残っているところを見ると、ロード・アンド・テイラーはその方向性を見出すのが遅れ、間に合わなかったということだと思います。




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※この記事は8月16日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はファミリーマートのニュースを大前が解説しました。

大前は「日経新聞は伊藤忠が鍵を握ると書いているが、むしろ伊藤忠の能力不足がこの苦境を生み出している」と述べています。

いくら原因を考えても、問題の発生場所がずれていたら、適切な解決策を立案することはできません。

まずは広い視野と高い視座をもって、「どこで問題が起きているのか」を突き止めることが大切です。


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