大前研一「ニュースの視点」Blog

KON840「国内感染者数/緊急事態宣言/観光支援事業/国内旅行~都民全員に縄をかける小池都知事」

2020年8月3日 国内感染者数 国内旅行 緊急事態宣言 観光支援事業

本文の内容
  • 国内感染者数 1日の新規感染者数966人で最多
  • 緊急事態宣言 「慎重に判断すべき」62%
  • 観光支援事業 GoTo、見誤った世論
  • 国内旅行 4連休に観光施設など閉鎖

取り締まるべき場所を明確にせず、都民全員に縄をかける小池都知事


国内で23日に確認された新型コロナウイルスの新規感染者数が966人となり、1日あたりの最多を更新しました。

国内の累計感染者数が26日に3万人を超えるなど、感染の拡大が鮮明になっています。

西村経財相が今になって、新型コロナウイルス感染防止のガイドライン(指針)を守らずに感染者を発生させた場合、感染症法に基づいて店名を公表する方針を発表しましたが、遅すぎます。

こんなことは1ヶ月前に実施しておくべきことです。

今、新型コロナウイルスの感染が広がっているのは日本全体ではなく、大都市です。

兵庫、名古屋、大阪、東京もしくはそれに隣接した地域に集中しています。

またそれらの地域の中でライブハウス、キャバクラ、ホストクラブなど、いわゆる「3密」の状況が発生しやすい場所に限定されています。

かつて「O157感染症」が発生したときには、すぐに店名まで公表されて営業停止命令が下されましたし、それによって閉店に追い込まれたところもありました。

今回の新型コロナウイルスの感染に関しては、今頃になってようやく店名公開すると言うのですから、対応が遅れているのは明らかです。

政府と小池東京都知事の間に対策・方針についてギャップがあるという指摘もあるようです。

しかし、私に言わせれば、政府にお伺いをたてる必要などなく、小池都知事が自分で判断してすぐに対策を実施すればいいのです。

そのような自発的な対策を打つこともなく、小池都知事は都民に向かって「東京以外へ外出するのは控えてくれ」などと発言しているので、呆れるばかりです。

これでは東京都民1300万人全員に手錠をかけているも同然です。

本来、手錠をかけるべきところを見極めて対策を打ち出すべきなのに、それを全く行っていません。

都知事としての役割を全く果たせていないと思います。

若い人が集まってしまうライブハウスや演劇場など、取り締まるべき場所は明白です。

そういった場所を野放しにしているので、感染者が増えているのでしょう。

そんな状態だから、東京以外の地域から東京がウジ虫のように嫌われてしまうのです。

行政の怠慢としか言いようがありません。

日経新聞社とテレビ東京が行った世論調査結果によると、再び緊急事態宣言を発令することについて、「慎重に判断すべき」62%、「速やかにすべき」33%でした。

また国内旅行の需要喚起策である「GoToトラベル」の開始時期については、「早すぎ」80%となり、「妥当」15%を大きく上回りました。

国民の声としては妥当な意見だと思います。

以前の緊急事態宣言の結果、結局あまり効果があったとは言い難いですし、行政としては取り締まるべきところを取り締まっていない状態ですから、それをせずに緊急事態宣言を発令するのはいただけません。




「GoToトラベル」は利害関係のための施策、時期が適切ではないのも当然


日経新聞は25日、「GoTo、見誤った世論」と題する記事を掲載しました。

政府の観光支援事業「GoToトラベル」が22日から開始しました。

しかし、政府与党の方針はこれまでに二転三転し混乱を招いた他、新型コロナウイルスの1日の新規感染者数が過去最高を更新するなど不安も広がっています。

「GoToトラベル」については様々な意見があるようですが、この時期に強引に開始したのは、「4連休をあてにしたかった」ということでしょう。

オリンピックを見据えて7月に4連休を設定してしまったので、旅行業界としてはこのタイミングを逃したくありません。

そこで、"観光族議員"のドンと呼ばれる二階幹事長ら利害関係者が、4連休に間に合うように無理やり設定したのが今回のキャンペーンです。

もともと考えるべき順序が間違っているのですから、適切な時期かどうか議論することすら無駄だと私は思います。

本来であれば、行楽の秋ぐらいの時期が妥当だったかもしれません。

そんな利害関係で設定されたキャンペーンですから、東京以外の地方からも反発の声があがっています。

政府の「GoToトラベル」が22日から開始したことを受けて、青森県むつ市は23日から4連休の間、公共の観光施設やレクリエーション施設を閉鎖しました。

感染拡大のリスクを減らすためとのことで、むつ市の宮下市長はこれまでも実施の延期を求めていたとのことです。

私はバイクで2回ほど行ったことがあります。

今回閉鎖の対象となった恐山を見下ろすことができる展望台などがありますが、それほど観光名所が豊富な地域ではありません。

「GoToトラベル」に対して「政府による人災」と厳しく批判した宮下市長が今回の件で一躍有名になったので、その意味で「観光効果」があったと言えるかもしれません。

また「GoToトラベル」から東京都を外すというのは、何かと小池都知事と対立することが多い菅官房長官の意見が大きく影響しています。

小池都知事としては、東京都民に対して「外出しないように」と自ら声高に叫んでいますから、菅官房長官の意見に不満はあっても、行き掛かり上何も言えなくなってしまったといったところでしょう。

この件に関しては、菅官房長官が一枚上手でした。

最近の小池都知事を見ていると、記者発表の場に出てきても、感染者数を淡々と発表しているのみで特に何も言うこともありません。

完全に菅官房長官にしてやられたといったところだと思います。

何1つ有効な施策を打てていないので、仕方ないところでしょう。




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※この記事は7月26日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は国内感染者数のニュースについて大前が解説しました。

大前は、東京都の対応について「手錠をかけるべきところを見極めて対策を打ち出すべきなのに、それを全く行っていない」 と述べています。

問題解決においては、問題の発生場所をしっかり見極めることが大切です。

また、単に分析をするだけでなく、解決策を実行に移すための意思決定のタイミングも鍵になります。

限られた情報の中で、いかに意思決定を行うのか。

リーダーとしての力が問われます。


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