大前研一「ニュースの視点」Blog

KON830「国際教育/学校年度~9月入学と留学は切り離して議論すべき」

2020年5月25日 国際教育 学校年度

本文の内容
  • 国際教育 国際教育交流、コロナで危機
  • 学校年度 G20、4月入学は日印のみ

来日留学生の実態にも注視すべき


日経新聞は4日、「国際教育交流、コロナで危機」と題する記事を掲載しました。

4月入学の外国人留学生の多くが来日できていないほか、ほとんどの日本人留学生も帰国や留学が中止になっています。

しかし、新型コロナウイルス感染前から留学制度の拡大に伴う頻繁な渡航などが問題視されており、対面と遠隔を融合した国際教育への移行が急務としています。

この議論は半分「イカサマ」だと私は思います。

来日外国人留学生といっても、実際のところ、留学生の顔をしながらアルバイトだけをし、学位を取らずに帰ってしまう人もいます。

来日留学生が日本の低賃金労働層を担う構図になっている一面にも注目すべきでしょう。




9月入学と留学は切り離して議論すべき


日経新聞は12日、「G20、4月入学は日印のみ」と題する記事を掲載しました。

4月入学はG7で日本のみ、G20でも日本とインドのみと紹介。

時期のズレが留学の壁になり、日本の大学の国際化が遅れる一因にもなっているとし、新型コロナウイルス感染拡大で9月入学の議論が活発化する現在、米欧などに時期を合わせる好機としています。

これもまた留学に関するでたらめな議論だと思います。

今回検討している9月入学は、4月入学の遅れに対処できなかったという「日本の恥」をさらしているに過ぎません。

4月から入学が遅れ、5月、6月の目処も立たないため「9月入学だったら間に合うのでは?」という安易な考えです。

そもそも、「なぜ9月入学が適しているのか?」ということについては、何一つ本格的に議論されていません。

もし9月入学を実施したいのであれば、私は実施しても良いと思っています。

しかし、今のまま、なし崩し的に実施したとしても、つじつまが合わないところが出てきます。

例えば、今年度に関して言えば、延長期間を含めた17ヶ月分の授業をどのように消化させるのか?という基本的な問題も議論されていません。

当然のことながら授業料の問題も出てくるでしょうし、来年4月入学の予定を立てている人にとってみれば、急に9月入学と言われても困る場合もあるはずです。

こうした議論を横に置いて、「国際的に留学が楽になる」という耳障りがいい表現でごまかしていると私は感じます。

国際交流が活発化すると言いますが、そもそも、今は日本から海外の大学・大学院に留学する学生は決して多いとは言えません。

特に世界の一流大学に日本から留学する学生は、劇的に減少しています。

逆に9月入学になれば、「海外から優秀な留学生が日本に来る」という意見もあるようですが、海外の優秀な学生にとって日本に留学するメリットがいかほどにあるのでしょうか。

アジア人の留学生なら、欧米の一流大学を卒業した人と比べ、出世にとって不利なのは明白です。

日本に来る留学生がいるとすれば、シンガポールと中国の学生で、欧米の一流大学に合格できず、かつ、日本への留学で奨学金を獲得できた場合だけでしょう。

また、日本の大学に留学するためには日本語を学習する必要があります。

中国やインドの学生にしてみれば、英語だけで欧米の一流大学に留学できるなら、あえて面倒な日本語を学ぼうと思うでしょうか。

つまり、将来の出世の役にも立たないし、日本語学習という余計なものまで必要になるのですから、海外から日本に留学するメリットはほとんどない、と言えるでしょう。

今、9月入学にすることで留学生をたくさん受け入れられると議論している人たちは、こうした事実を知らないのでしょう。

9月入学に変更しただけで、大学の国際化が進み、留学が活発化するなど幻想です。

ゆえに、この議論そのものが時間の無駄だと私は思います。

こんな絵空事の議論をするのではなく、「コロナウイルス感染拡大の影響でぽっかりと空いてしまった、この3ヶ月の時間をどうやって取り戻すべきか?」という点に絞って議論したほうが良いと思います。

実態も知らないまま「留学」のことまで含めて考えようとしても、事態が複雑になるだけで何一つ問題は解決しないでしょう。




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※この記事は5月17日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は学校年度のニュースを大前が解説しました。

大前は「コロナウイルス感染拡大の影響で空いてしまった3ヶ月をどうやって取り戻すべきかという点に絞って議論すべき」と述べています。

問題を解決しようと議論しているうちに、似て非なる議題にすり替わってしまうことがあります。

いま解決したい問題はなにか?
候補に挙がっている施策は問題解決に繋がるのか?

本質的な課題は何か、見極めることが大切です。


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