- 本文の内容
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- 安倍政権 内閣支持率40.4%
- 緊急経済対策 現金10万円を一律給付へ
- デジタル行政 「しょせんは民・民の話」
- 人工呼吸器 異業種参入の手続きを短縮
現金給付10万円の肝は、行政的な手続きを少なくする方策
共同通信社が行った世論調査によると、安倍内閣の支持率は40.4%で3月末の前回の調査から5.1ポイント減少しました。
一方、不支持率は43%で前回から4.2ポイント増加。
支持、不支持の逆転は2月中旬以来となります。
ここに来て安倍政権に対する疑念がどんどん大きくなってきているのは、現金給付や休業補償などの経済対策が曖昧で遅れていることが大きな要因でしょう。
そんな中、めぐりめぐって、ようやく現金10万円を一律給付するという発表がありました。
政府与党は16日、国民1人あたり10万円を給付する方針を決定しました。
所得制限を設けず、外国人を含めた住民基本台帳に記載されている全員を対象とする方針で、それまで打ち出していた「減収世帯へ30万円給付する」措置は撤回するとのことです。
問題になるのは、現金10万円を国民一人ひとりに配布する方法・仕組みが日本にはない、ということです。
鳴り物入りで導入されたマイナンバーも、銀行口座とマイナンバーが必ずしも紐づけされていないので、今回の10万円給付の振り込みには使えません。
それゆえ、麻生副総理が言うように「欲しい人は取りに来い」という話になってしまうわけです。
この10万円給付の実施にあたって一番重要なことは、いかに行政的な手続きを少なく抑えて届けることができるか?という点に尽きると思います。
私ならば、携帯電話料金の自動引き落としに紐付けされた銀行口座を活用することを考えます。
NHK受信料でも同様に考えられますが、NHKの場合には家庭ごとにしか把握できません。
携帯電話であれば、個人単位で把握することが可能です。
もちろん、1人で複数台の携帯電話を保有している人は、プログラムで重複チェックする必要がありますが、大した手間ではないはずです。
まず携帯電話に紐づいた銀行口座に10万円を給付しておいて、銀行口座を持っていない子供、自動引落としにしていない高齢者など、この仕組みで対応できない人には、個別に取りに来てもらうなどの方法を取れば良いでしょう。
これだけでも行政コストは1/6~1/7に減らすことができると思います。
このように行政の手間を徹底的にかけない方法を集中的に考えることが重要です。
日本の役人は均一的に物事を考える癖があるので、ぜひ参考にしてほしいところです。
今さらドコモやauの仕組みに世話になりたくない、という役人もいるかもしれません。
しかし、今まで自分たちが作ってきたシステムが電子化されていないのが根本的な問題なのですから仕方ありません。
マスクの配布に約230億円もかかったと言われていますが、こんなバカなことを繰り返すのは絶対にやめてもらいたいと思います。
あまりに無駄なコストで、もはや日本郵政に対する補助金であり、選挙対策としか思えません。
現金10万円給付の次に考える必要があるのは、大きな減収などがあって困っている人たちへの対策です。
家賃を猶予する必要がある人もいるでしょうし、自粛で閉店したため収入が途絶えている人などには補償が必要でしょう。
減収世帯への30万円給付がなくなったとのことなので、別の施策を急いで考えるべきです。
素早く対応しないと、次々と倒産する可能性があります。
今こそ、どうやって助けることができるのか、知恵を絞ることが重要だと思います。
そもそも、竹本氏をIT担当相に任命したことが間違い
竹本直一IT担当相は14日、日本のはんこ文化がテレワークの妨げになっているとの指摘に対し、「民・民の取引で支障になっているケースが多い」との認識を示しました。
一方、役所の届け出はデジタル化が進んでいるとし、「役所との関係ではそういう問題は起きない」と説明しました。
このような機会に、はんこ自体を使わないという動きが起こってきています。
IT担当相であれば、それを実現するプランを考案して話すべきなのに、驚くほどに見当違いな発言です。
そもそも、日本の役所でデジタル化が進み、ほとんどはんこを必要としないシステムができているなど、「どの口が言っているのか?」と言いたくなります。
私に言わせれば、役所に提出しなければいけない書類で、はんこがいらないものの方が少ない、と思います。
竹本IT担当相は、「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」(はんこ議連)の会長も務めているので、何があってもはんこがいらないシステムを作り上げるとは言えないのでしょう。
しかし、そうであれば、このような人をIT担当相に任命することが間違いです。
安倍首相の任命責任が問われて然るべきでしょう。
はんこ自体を使わない動きを追い風に、弁護士ドットコムなどは、非常に取引が活発になっています。
なお、弁護士ドットコムの創業者である元榮氏は、アタッカーズビジネススクールの出身で、現国会議員です。
IT担当相として、よほど元榮氏のほうがふさわしいと私は思います。
規制緩和・規制撤廃があると、新しい需要が生まれる
厚生労働省は13日、新型コロナウイルスの感染拡大で不足が懸念される人工呼吸器の増産に向けて、異業種から参入する企業に対する承認手続きを迅速に進める方針を示しました。
異業種から医療機器メーカーとして登録するには、承認手続きだけで長い年月が必要になっていますが、そういった規制を一気に撤廃する良い機会だと思います。
オンライン診療と同様、今回を機会に一気に進んでほしいと思うものの1つです。
米国では国防生産法に基づいて、トランプ大統領がゼネラル・モーターズに人工呼吸器の製造を指示しました。
日本では今回の手続き短縮化によって、異業種のソニーなどが参入し、すぐに人工呼吸器を短期間で製造することが実現できれば良いでしょう。
今、人工呼吸器は国家が総出で製造に乗り出すべきものです。
多めに製造して余裕を持って保有しているぐらいがちょうど良いと思います。
そもそも、参入手続きだけで長い年月を要するというのが間違いでした。
規制緩和や規制撤廃が行われるときには、新しい需要が生まれます。
今回の人工呼吸器は、非常にわかりやすい事例です。
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※この記事は4月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は緊急経済対策について大前が解説しました。
大前は「いかに行政の手続きを少なくして10万円を届けるか考える必要がある」と述べています。
施策を実行するときには、自力に頼るのではなく、他社リソースを活用させてもらうという手もあります。
これまでの前提条件を見直し、柔軟な対応をすることが求められています。
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