- 本文の内容
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- 手元資金 世界の企業、資金確保急ぐ
- 金融市場 投信の資金流出最大
- 米金融政策 またもブラックロックか
- ベンチャー企業 VC投資、世界で腰折れ
- 米ゼロックス 米HPへの敵対的TOB撤回
兎にも角にも、キャッシュ(現金)確保の流れ
日経新聞は1日、「世界の企業、資金確保急ぐ」と題する記事を掲載しました。
日本企業によるコマーシャルペーパー(CP)の発行残高が3月時点で前年比2割増の25兆円となったほか、米国も社債発行が急増していると紹介しています。
外出規制などで経済活動が停滞し、企業の売上高が減少する一方、人件費や賃貸料などの固定費は支払わなければならず、手元資金を積み増す動きが活発化しているとのことです。
今はキャッシュがあらゆるところから消えているという状況になっていて、それに対応するためCPの発行残高が急増しています。
米国では発行されたCPをFRB(連邦準備理事会)が吸収して資金を市場に流しています。
CPの中には格付けが怪しいものまで含まれているので、かなりリスクがあるオペレーションだと私は思います。
しかし、FRBとしてもそれを承知で「背に腹はかえられない」という状況なのでしょう。
このようなキャッシュを確保する流れは、投資信託にも大きな影響を与えています。
日経新聞は3日、「投信の資金流出最大」と題する記事を掲載しました。
世界の投資信託の資金流出額が3月に5136億ドル(約55兆円)となり、リーマン・ショック時を上回り、過去最大になったと紹介。
ETF(上場投資信託)などは手軽に買えるため、この10年で残高が2倍に膨らむなど投資ブームの象徴となっていましたが、新型コロナウイルスの懸念によりマネーが一気に逆回転を始めたとしています。
ETFはキャッシュに極めて近い商品だと言われ、非常に人気が高い投資信託でしたが、いざとなるとキャッシュに流れる動きは止められないのだと思います。
危機になるとブラックロックに頼らざるを得ない米国経済
フィナンシャル・タイムズは3日、「またもブラックロックか」と題する記事を掲載しました。
FRBが2008年の金融危機対応と同様、今回も米国のブラックロックを頼った政策を打ち出していると紹介。
ブラックロックは世界最大の資産運用会社で欧州の公的機関にも助言するなど多くの実績がある一方、運用には利益相反の懸念もあるほか、何の入札プロセスも経ずに受注しているなどの問題もあり、一連の対応をしつつも、FRBはこれらの問題に向き合わなくてはならないとしています。
ブラックロックの運用残高は750兆円にものぼります。
FRBの総資産残高がおおよそ580兆円ですから、FRBを上回る運用資金を取り扱っているということです。
そしてブラックロックは、時にはFRBから買い、時にはFRBに売るなど、FRBともさまざまな取引を行っています。
この点について「利益相反ではないのか?」と指摘されていますが、今さら言うまでもなく100%利益相反だと私は思います。
しかし、リーマン・ショックのときもそうでしたが、結局ブラックロックが救済に乗り出してくれないと、他に誰も救ってくれる人がいないというのが現状です。
リーマン・ショックの際も、リーマン以外の銀行を救う動きを取れたのはブラックロックだけでした。
結局、ブラックロックのラリー・フィンクという人物が、リーマン以外の多くの銀行を救済した形になりました。
利益相反はあったにしても、それは今さら言っても始まらない話だと思います。
金融危機になるとブラックロックに頼らざるを得ない、というのが米国の金融機関及びFRBの運命なのでしょう。
ブラックロックはそれだけの運用益を出しているのか?というと、通常の運用益以外にも、最終的に莫大な資金によって持ち堪えて債権回収会社(サービサー)としての役割を果たすこともできる点が大きいのではないかと思います。
ベンチャー投資も弱気の情勢
日経新聞は先月30日、「VC投資、世界で腰折れ」と題する記事を掲載しました。
世界のベンチャーキャピタルによる2019年の投資額は2570億ドル(約28兆円)と前年比15%減少したと紹介。
今年に入ってからの動きはまだ見えないものの、1~3月のベンチャー企業の調達額は前年同期比12%減少する見通しで、今年最大の上場案件と見られた米国のエアビーアンドビーも上場延期の観測が出ています。
さすがに今のような状況になってくると、ベンチャーキャピタルも腰折れになってきています。
これまでは、利益が出ていなくても想定時価総額が1000億円~1兆円という企業もありましたが、ソフトバンクによるWeWork(ウィワーク)の公開買い付け(TOB)が取りやめになったこともあり、今後の見通しはわかりません。
この状況では弱気にならざるを得ないでしょう。
米ゼロックスの買収断念により、富士フイルムが動く可能性
米事務機器大手ゼロックスは、パソコン・プリンター大手ヒューレット・パッカード(HP)への敵対的株式公開買い付け(TOB)を撤回すると発表しました。
新型コロナウイルスの感染拡大により両社の株価が急落し、事前に決めた条件での買収が困難になったためで、HPの株主総会に提案する予定だった取締役メンバーの刷新案も取り下げるとのことです。
ゼロックスがHPの買収を発表し、その後HPの株価は上昇しました。
同時にゼロックスの株価も上昇し、その高い株価にレバレッジをかけて買収を図っていました。
ところが、この世界同時株安によって両社の株価は急落したため、ゼロックスの計算が狂いました。
HPの株価は下落して買収しやすくなりましたが、ゼロックスの株価も32ドルから18ドルに急落し、HPを買収できる体力がなくなってしまいました。
今私が感じているのは、傘下の富士フイルム富山化学がアビガンの勢いで注目されている中、富士フイルムの古森会長が、ゼロックスに対して巻き返しを図ってくるのではないか?ということです。
富士フイルムの古森会長は以前ゼロックスの買収を仕掛けたものの、ゼロックスに反対されて買収は失敗に終わりました。
その後、ゼロックスはHPの買収へと動きました。
今、状況が二転三転する中で、ゼロックスによるHPの買収がなくなり、ゼロックスの時価総額が下がっています。
富士フイルムの古森会長にとってみれば、再びゼロックスを買収するチャンスが訪れた、と言えるかもしれません。
私自身は、富士フイルムによるゼロックスの買収は重荷になる点が大きいので、あらためて買収する必要はないと思っています。
また、ゼロックス買収を断念したことによって、欧州でゼロックスブランドを使わずに事業を展開できるというのは、ある意味でチャンスです。
古森会長には後ろを振り返ることなく進んでもらいたいと思っています。
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※この記事は4月5日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は新型コロナウイルスの感染拡大が企業財務や金融に及ぼす影響について大前が解説しました。
「いつか終わる」から「今できることは何か」にシフトチェンジすることが必要な段階に入ってきています。
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