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セブン&アイHD
そごう心斎橋本店 大丸へ売却
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●売上が上がらないのに、売り場面積だけを増やしても効果はない
先月26日、セブン&アイ・ホールディングスは傘下のそごう
心斎橋本店(大阪市、店舗面積4万平方メートル)をJ・フロ
ントリテイリング傘下の大丸へ売却すると発表しました。
売却額は379億1000万円。メガ百貨店同士の大型店売買は初
めてになります。
そごう心斎橋本店の年商は440億円(2008年2月期)。そごう
は8月末をメドに同店を閉鎖し、その後、大丸へ引き渡す予定
とのこと。
大丸は隣接地に持つ大丸心斎橋店とあわせて約7万8000平方
メートルを一体的に運営することで、大阪地区での競争力を高
める狙いを持っています。
現在のそごうは、2003年、十合及び西武百貨店と共に3社で発
足させた持株会社・株式会社ミレニアムリテイリンググループ
に属しているわけですが、セブン&アイとしては全くミレニア
ムリテイリンググループに対するシンパシーを感じていないの
でしょう。
そごうの心斎橋店といえば、本店であり旗艦店だと思っていま
したが、それをあっさりと売却してしまう点にセブン&アイの
思惑が伺えます。
そごうはかつて野村グループに買われ、その後セブン&アイに
売却されていますが、すでに野村グループに買われた時点で「そ
ごう魂」は完全に奪われていたのだと私は感じてしまいます。
今後、大丸がそごうを受け入れてどのような戦略を考えている
のかという点に注目が集まると思いますが、私には大丸の狙い
がもう一つ理解できません。
そもそも大丸に限らず、百貨店業界全体が戦略的な構想を描け
ているのか、疑問に感じています。
大阪市内の主な百貨店の現況を見ると、明らかに大阪は百貨店
がオーバービルド状態にあります。大型百貨店の売り場面積は
次のように巨大です。
・阪急百貨店梅田本店:6万6237平方メートル(12年に8万4000)
・高島屋大阪店:5万6000平方メートル(10年に7万8000)
・近鉄百貨店阿倍野本店:8万2488平方メートル(14年までに10万)
・阪神百貨店本店:5万3683平方メートル
そして、大丸は心斎橋店:3万7490平方メートル、
梅田店:4万416(11年に6万4000)平方メートルに加えて、
そごう心斎橋店:4万780平方メートルを抱えることになります。
いずれの百貨店もこれから数年のうちに、売り場面積の拡大を
見込んでいるのが分かります。
しかし、一方で百貨店の売上状況を見ると全く伸びていません。
正確には、全体としては約10%ずつ下降の一途を辿っています。
この状況で売り場面積だけを大きくしても意味はないと私は思
います。当たり前のことですが、売り場面積が大きくなっても、
大阪の「財布」が大きくなるわけではありません。
※「百貨店の売上状況」 チャートを見る
もちろん、阪急百貨店梅田本店のように収益率も高く、売り場
面積の拡大を図っている店舗もあります。
阪急はメンズ館の調子が良いですし、デパ地下も好調です。で
すから、十把一絡げに百貨店の売り場面積の拡大に効果がない
と思いません。やり方によっては効果を発揮するでしょう。
しかし殆どの百貨店にとって、その効果は薄いと私は見ていま
す。百貨店業界を見ていると、顧客が今何を求めているかを十
分把握できていない人が少なくないのではないかと感じます。
百貨店に入っているテナントも百貨店そのものでさえも、どの
百貨店に行ってもそれほど大きな違いを私は感じることができ
ません。
百貨店業界全体として、差別化を図る意識が低く、昔ながらの
感覚を引きずっているのではないかと思います。
そういう意味で、大丸がそごう心斎橋店を買って売り場面積を
倍にしたところで、特に何ら戦略を持たずにいるのではないか
と不安を感じてしまいます。