- 本文の内容
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- 国内経済 実質GDPが前月比1.6%減
- 横浜市 横浜のIR誘致、反発根強く
- 農業政策 消える兼業農家
GDPの落ち込みは今後も続く可能性が高い
内閣府が17日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比1.6%減、年率換算では6.3%減となりました。
今回の消費増税10%はあまり大きく影響しないのではないかと予想されていました。
実際、消費増税よりも台風19号のほうが、大きく影響していると感じる部分があります。
このままだと、SARSのときのように年率換算ではもっと下降してしまうかもしれないと私は見ています。
一昔前には丙午(ひのえうま)の年には出生率が落ち込むというのがお決まりでしたが、SARSなどが発生した年に経済統計が押し下げられてしまうのも、同様に定番化してしまうかもしれません。
今回のGDP成長率の落ち込みは、複合的な影響が絡み合っています。
野党としては消費増税の影響を声高に叫び、与党への攻撃材料にしたいところだと思いますが、実態は異なる要因でしょう。
いずれにせよ、消費は冷え込み、民間最終消費支出も大きく下落しています。
中国の生産も滞り、野菜などの輸入量も減っています。
今後、ますますGDPは心配な状況になってきていると思います。
IR誘致で、本当に経済は活性化するのか?
日経新聞は17日、「横浜のIR、反発根強く」と題する記事を掲載しました。
公共施設やインフラの老朽化などで財政が硬直化する横浜市が、IRの誘致に向けて市民説明会などを開いています。
横浜のブランド維持や将来の成長が懸念される中、IRをその解とするか否かが市民を含めた横浜市全体に問われているとのことです。
一時期横浜から人が遠ざかった時代がありましたが、今はその暗い時期を乗り越えて、人も戻ってきています。
必ずしもIR誘致をしなくても良いという意見が出てくるのも、当然と言えるでしょう。
しかし、横浜の林市長がIR推進派に回るなど、あらためて実現の動きを見せています。
ここで考えてほしいのは、IR誘致がどれだけ経済を加速させる効果があるのか?ということです。
マカオのカジノは収入の大半をVIPバカラに頼っています。
一般の人が遊んでいるエリアは、ほとんど利益に貢献していないという状況です。
そして、このVIPバカラを支えているのは、中国の収賄及びマネーロンダリングです。
もし中国の習近平主席によって、これらが撲滅されれば、カジノも大打撃を受けるのは必然です。
シンガポールのマリーナベイ・サンズが、IR誘致の経済効果の代名詞として引き合いに出されることも多いですが、マカオからシンガポールに流れて来ている人が大勢いるので、結局のところ習近平主席次第です。
今、カジノは世界的に見てもすでに盛り上がる産業ではなくなってきています。
経済がまだ発達していない東欧圏の一部の国においては、外国人に遊んでもらうためにカジノを有効活用できています。
しかし、その他の地域はすっかり状況が変わっています。
米国のラスベガスですら、すでにカジノで稼ぐ時代ではなくなっていて、ファミリー向けのビジネスや、業界の世界大会を開催するなど、収益の柱を別のものに移しています。
それでもIR誘致で経済を活性化できるという人は、日本のお家芸であるパチンコと市場規模などを比較検討してみるべきでしょう。
マカオのカジノ収入はピーク時で約5兆円ほどでしたが、日本のパチンコのピーク時には、売上高は30兆円を超えていました。
今パチンコ人口は減りつつありますが、それでも20兆円近くあります。
役人などが海外視察と称して海外のカジノを見て回り、期待を持たせる報告をするために、実態以上にカジノの経済効果があると感じてしまうのでしょう。
そして、さらに大きいのはIR誘致によって生まれる「利権」があることです。
それこそ政治家にとってはお金になる話ですし、市長にとっては選挙の道具になります。
横浜の林市長など、「IR誘致をしない」という公約で再選されたのに、今は推進派に転じてしまったのですから、選挙の「道具」にしたと言われても仕方ないでしょう。
私も日本はIR誘致をしなくてもやっていけると思いますが、どうしても実施したいのであれば、私が20年前から提案している「パスポート必須&米軍基地の活用」という方法を、あらためて提言したいところです。
この方法なら、「ギャンブル依存症になったら、どうするのか?」という不毛な議論をする必要もなく、羽田空港から距離も近いなど利便性も高いはずです。
どうしてもIR誘致を実現したいなら、このくらいは考えてほしいところです。
日本の農業の未来は暗い
日経新聞は18日、「消える兼業農家」と題する記事を掲載しました。
農林水産省によると2019年の農家数は113万戸で、2000年の半分に減り、その中でも農業を副業として営む第2種兼業農家は、約6割減少しました。
一方、農業がメインの第1種兼業農家と専業農家は3割減にとどまったものの、専業のうち6割が65歳以上とのことです。
日本の農業政策は、人口的にも年齢的にも、結果を見れば明らかに失敗だったと思います。
かつては200万戸以上あった農家は激減し、かつ高齢化も進んでいます。
また国からの補助が厚すぎて、逆に農家の農業への意欲を削ぐ結果となっているのも残念です。
例えば、農地の相続人が農業を続ける場合、農地にかかる相続税が事実上免除される特例があります。
それを享受するためだけに、いまだに農業にしがみついている人も大勢いるでしょう。
今のような農協の仕掛けでは、日本の農業が世界的に競争力を持つことはできないと思います。
基本的に日本は農業政策も漁業政策も大きく失敗しました。
その反省をせず、農水省は昔のやり方のまま、ずっと同じことを繰り返しているように私は感じます。
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※この記事は2月23日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は横浜市のニュースを大前が解説しました。
大前は「IR誘致がどれだけ経済を加速させる効果があるのか考えてほしい」と述べています。
物事を判断する際には、「本当にそうなのか?」と疑うことが大切です。
周りの言うことを鵜呑みにせず 、 自らデータを確認することで偏りのない意見を持つことができます。
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