- 本文の内容
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- 米IT大手 アルファベットが時価総額1兆ドル超え
- コンビニ業界 2019年12月末の店舗数
- 楽天 公取委に調査求める署名提出
- 地方診療所 日本医師会が事業継承を支援
GAFAを生み出せない日本の現状
米アルファベットの時価総額が16日、1兆ドル(約110兆円)を超えました。
アルファベット株は今年に入り8%あまり上昇しており、時期によって多少の変動はあるものの、アップル、マイクロソフト、アマゾンに次ぐ1兆ドルクラブの仲間入りを果たしました。
2020年1月24日時点の時価総額は、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、フェイスブックの順位になっています。
日経新聞の試算によると、この上位5社(GAFAとマイクロソフト)の時価総額の合計約500兆円が、日本全体の上場株式のそれとほぼ同額になっているとのことです。
何とも日本としては情けない話です。
GAFA的な事業・企業を生み出せていないというところが根本的な問題でしょう。
将来のコンビニの役割は地域ごとに変わっていく
日本フランチャイズチェーン協会が20日発表したコンビニエンスストア大手7社の2019年12月末の店舗数は、1年前に比べて123店減少したことがわかりました。
年間の統計で店舗数が前年末実績を下回るのは、統計を取り始めた2005年以来、初めて。
新規出店で成長してきたコンビニのビジネスモデルは転機を迎えているとのことです。
コンビニの店舗数については、様々な意見があります。
まだコンビニが足りないと言われている地域もある一方、多数のコンビニがひしめき合っている地域もあります。
要するに、分布が悪いということでしょう。
コンビニ業界全体で123店舗が減少したということですが、全体で5万店舗以上もあるので、減少幅はごくわずかですし、売上はいまだに右肩上がりですから、大騒ぎするほどではないと思います。
しかし、売上もいずれ頭打ちになる可能性は高いので将来的には油断できません。
そのコンビニの将来を考えるとき、ポイントになるのは5万店に及ぶ拠点をどのように活かしていくか?ということです。
コンビニ業界は、ある意味においてピークを迎えました。
今後はその役割を変えていく必要があり、そのテーマが重要になると私は見ています。
例えば都心には、コンビニを自宅の冷蔵庫代わりに使っている人が大勢います。
一方、トラックが何台も駐車できる巨大な駐車場を持つ地方のコンビニは、デリバリー拠点として機能しているところもあります。
このように、拠点によってコンビニに求められる将来的な役割には違いがあるというのがポイントだと思います。
その他にも、チケットの受け取りコンシェルジュ機能を充実させて幅広いサービスを展開するのも1つの策ですし、あるいは金融の拠点にもなり得ると思います。
ニュージーランドでは、郵便局が民営化した際にコンビニ化していきましたが、日本では郵便局がそのまま残っています。
郵便局の数はコンビニの半分程度です。
コンビニの将来性を考えるとき、郵便局との役割分担を考慮することも大切だと思います。
さらに言えば、将来的に電気自動車が普及するようになるとガソリンスタンドの役割がなくなるため、ガソリンスタンドという拠点の用途も考えるべきでしょう。
このように、郵便局、ガソリンスタンド、コンビニといったものを全体的に見て、エリア別に最適解を求めていく必要があると思います。
今後それぞれの拠点をどのように活かしていくのか、注目したいと思います。
公取委は楽天の契約をどのように判断するか?
楽天市場の出店者が加入する任意団体・楽天ユニオンは22日、公正取引委員会(公取委)に調査を求める約4000人分の署名を提出しました。
楽天が「商品を一定額以上購入した利用者への送料を出店者負担で一律無料にする」と決定したことは、優越的地位の濫用を禁じた独禁法違反にあたると指摘したものです。
その他、決済システム楽天ペイを使うように強制され、手数料負担が増えるなどのケースが相次いでいるとのことです。
私に言わせれば、明らかに公取委に訴えるべきものだと思います。
しかし、出店者と楽天の契約内容によると、「楽天が一方的に送料の規定などを変更してもよい」となっているようです。
ゆえに、その契約に同意しているので出店者は楽天に文句は言えない、という立場もあるでしょう。
とは言え、そもそも独禁法の抜本的な部分に抵触するものなので、楽天との契約にかかわらず違反である、という立場も取れると思います。
今回の案件は、公取委がいずれの立場をとるのかを問われることになるでしょう。
私としては公取委に訴えることに賛成ですが、楽天側の弁護士が予めしっかりと準備をしていたということでしょう。
エムスリーが切り開く新しいマーケット
日経新聞が報じたところによると、秋田県医師会が秋田銀行、北都銀行、および医療情報サービスのエムスリーと提携する見通しです。
地方の開業医など後継者不足に悩む診療所について、医師会が相談窓口になるとともに、エムスリーが全国の顧客から後継者や受け皿を見つけるということで、事業継承を支援し医師の地域偏在の進行を防ぐ考えです。
少し前にエムスリーの谷村氏と会った際、このマッチングビジネスが大きなビジネスに育ってきていると話をしていました。
開業医になるためには勤務医から独立するのが一般的ですが、開業する場所がなかなか見つからないというのが、昔から存在する問題です。
また、仮に新しい顧客を開拓できて開業場所の目星がついても、1億~2億円の資金が必要だと言われています。
一昔前は勤務医で40歳くらいまで勤めれば、その資金の目処がつくと言われていましたが、今ではその年齢が60歳になったそうです。
こうなると、もう間に合いません。
このような状況の中、後継者がいない開業医の子供とたまたま縁談の話がまとまり、勤務医が後継者になるケースもありました。
しかし、これはあくまでも個人的なお互いの努力の範囲内のことで、仕組みとして機能していたものではありません。
もはやこのような形式では対応できない状況になってきています。
後継者が見つからなければ、閉院するか、あるいは高齢になっても無理にでも継続するしかありません。
この社会的にも大きな問題になりつつあるニーズを拾い上げて、斡旋事業の形を整えたのがエムスリーです。
もともと多くの医師がエムスリーの会員ネットワークに登録したのは、学術情報を得るためでした。
しかし、今ではこのような後継者マッチングのニーズを満たしてくれる存在としても、エムスリーは医師にとって大きな存在になってきています。
エムスリーの時価総額は約2兆円を超えましたが、それも頷けます。
地方の開業医の後継者不足に関して、多くの情報を持っているのは地銀です。
ゆえに秋田の医師会と地銀とエムスリーが提携して進める形になったのでしょう。
これはその他の地域でもそのままの座組みで展開できるでしょうから、おそらくすぐに全国的に波及していくと思います。
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※この記事は1月26日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週はコンビニ業界のニュースを大前が解説しました。
大前は今後のコンビニについて「『拠点をどのように活かすか』がポイントになる」と述べています。
ビジネスの転機を迎えたときは、既成概念を取り払うことが大切です。
今後のサービスを既存路線の延長線上で考えるのではなく、まっさらな状態から考え直すことで、今までにない新たな役割や価値を見出すことができます。
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