大前研一「ニュースの視点」Blog

KON813「ニューフレアテクノロジー/レオパレス21/トヨタ自動車/日産・ルノー/ドイツ情勢~空飛ぶ車と自動運転」

2020年1月27日 ドイツ情勢 トヨタ自動車 ニューフレアテクノロジー レオパレス21 日産・ルノー

本文の内容
  • ニューフレアテクノロジー 東芝機械が保有するニューフレア株を東芝D&Sに売却
  • レオパレス21 レノの株主提案に反対表明
  • トヨタ自動車 米ジョビー・アビエーションに約430億円出資
  • 日産・ルノー 企業連合解消へ緊急対策を準備
  • ドイツ情勢 41万人雇用喪失の可能性

ニューフレアでもレオパレス21でも見られる、村上ファンドらしいやり方


東芝デバイス&ストレージ(東芝D&S)によるニューフレアテクノロジーへの公開買い付け(TOB)について、東芝機械は15日、保有するニューフレア株をすべて東芝D&Sに売却すると発表しました。

ニューフレアを巡って、HOYAもTOBを実施する意向を示していましたが、東芝D&Sがこれに応じず自らTOBを成立させた形です。

ニューフレアが持つガラスをベースにした技術も含めHOYAとしてはぜひ手に入れたいと思っていたでしょうが、ニューフレアももともと東芝機械から分社独立した企業ですから、同じ東芝系で話がついたというところでしょう。

ニューフレアは売上:570億円、利益:83億円と非常に高利益体質の企業です。

東芝機械の半導体装置事業から2002年分社独立し、2007年ジャスダックへ上場。

そして、現在の時価総額は1,300億になっています。

株主構成を見ると、東芝D&Sが52.35%、東芝機械が15.78%で合わせると67%超えています。

その気になれば、完全子会社を図ることも可能でしょう。

HOYAは買収を諦めましたが、そこで登場したのが東芝機械の株式を保有していた村上ファンドです。

ニューフレア株の売却で得られる約100億円を狙っているのでしょう。

東芝機械を買収し、取締役を全員解任し資金を分配させる、という村上ファンドらしいやり方を考えているのだと思います。

このような村上ファンドの動きは「いつも」のことです。

ニューフレアだけでなく、レオパレス21に対しても全く同じような対応を見せています。

経営再建中のレオパレス21は11日、大株主の投資会社レノが求めている取締役全員の解任や臨時株主総会の開催に反対する考えを表明しました。

レノは著名投資家の村上世彰氏が関わるファンドで、レオパレス経営陣との交渉を呼びかけていましたが、レオパレス側は事業売却などの要求を認めさせるための手段で株主の正当な権利行使ではない、と反発しています。

ここでも村上ファンドが考えているやり方は同様でしょう。

現取締役を解任し、代わりに自分たちから3人の取締役を送り込みます。

とはいえ、経営戦略を持っているわけではありませんから、経営を立て直すことはできません。

議決権を持ったら、その会社が保有している資金を吐き出させて株主としてキャッシュをもらって売り抜けるだけです。

良くも悪くも、これが村上ファンドのやり方です。




自動運転の肝は、想定しない事態に遭遇したときの対処を学習させること


トヨタ自動車は16日、空飛ぶタクシーを開発する米新興企業ジョビー・アビエーションに3億9400万ドル(約430億円)を出資すると発表しました。

ジョビーは滑走路が不要なVTOL(垂直離着陸機)の開発を進めており、トヨタの生産技術や電動化のノウハウを提供し早期の量産化を目指す考えです。

トヨタ出身の人たちがSkyDriveを立ち上げるなど、いよいよ陸だけではなく空へ向かう時代がやってきつつあると感じます。

とはいえ空の領域はまだルールや規制が明確に決まっていないので、今後の展開が読めない部分が大きいと思います。

一方、陸の車は電気自動車、自動運転への動きが加速しています。

自動運転の取り組みの一貫として、トヨタがコネクティッド・シティ・プロジェクト「Woven City(ウーブン・シティ)」を立ち上げたことは話題になっています。

富士山のふもとにある静岡県裾野市にある同社工場跡地に、2000名程度の住民が暮らす実証都市を作るというものです。

しかし、私はこの取り組みにそれほど効果は期待できないと感じます。

人工的に作り出した整理された街中では、自動運転に一番必要で求められているものがないからです。

それは、想定しなかった事故が起きた時の対処です。

自動運転に必要なのは実験室における学習ではなく、一般の市道を走らせることで、人間、他の自動車、動物などと遭遇し、そこでこれまで想定していなかった事態になることだと思います。

その点で言えば、自動運転でGoogleストリートビューを作り上げた経験と技術を持ってGoogleから分社したWaymo(ウェイモ)に比べると、経験値は甚だ乏しいと言わざるを得ません。

Woven Cityは学問レベルの実証都市という位置付けだと思います。




日産は技術を吸収される前にルノーと手を切る交渉をすべき


英紙フィナンシャル・タイムズは13日、日産自動車が仏自動車大手ルノーとの企業連合解消を想定した緊急対策を準備していると報じました。

技術・生産部門の完全な分離や日産取締役会の変更などが検討されているとのことですが、これに対して日産は報道を否定する声明を発表しています。

仮に日産側の発表が事実だとしても、今の株主構成ではあくまでもルノーが主導になりますから、現実問題として日産が否決することはできません。

ルノーがその気になれば、日産の役員を全員解任することも可能ですし、実際にその可能性もあると思います。

おそらく日産が気にかけているのは、厚木の研究所の技術だと思います。

この技術は非常に優れたもので、これをルノーに統合されてしまうと、二度と分かれられなくなります。

ゆえに、そうなる前に日産としてはルノーからの完全分離を狙っていく必要があると思います。

最大の課題は、日産側にその交渉を行える人材がいるかどうかです。

それだけの交渉力がある人がいるかどうか私には疑問です。




電気自動車への移行に伴って、大規模なレイオフが起こる


独ハンデルスブラット紙は13日、電気自動車(EV)への移行に伴い、2030年までにドイツで41万人の雇用が失われる可能性があると報じました。

ドイツ連邦政府主導の専門者会議「未来のモビリティの国家プラットフォーム(NPM)」の報告書を引用して伝えたもので、EVのエンジンは燃焼機関よりも部品が少なくメンテナンスの回数も減るため、レイオフが起こると説明しているとのことです。

電気自動車(EV)に移行すると、必要となる部品点数は10分の1程度になると言われています。

また、必要とされる部品や技術も大きく変わります。

電気自動車で必要となるのは、電池、インバーター、モーター、電池部材、炭素繊維、アルミ、充電ステーションなどです。

自動車に必要とされるものが、これほど大きくがらりと変わると、社会全体への影響も大きくなります。

例えば、充電ステーションで対応できるというだけでも、コンビニで充電可能になりガソリンスタンドが不要になるわけですから、かなり大きな影響があるはずです。

そして、この大きな変化によって大規模なレイオフが起こることになります。

電気自動車で不要になる部品はたくさんありますが、新たに必要になるものは少ないからです。

日本でもその影響を免れることはできないでしょう。




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※この記事は1月19日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はトヨタ自動車のニュースを大前が解説しました。

近い将来、自動運転が一般的になっていくのでしょうか。

そして、その時に覇権を握るプレイヤーはどこなのでしょうか?

将来、ビジネスで優位に立つためには、何が鍵になるかを考える必要があります。


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