- 本文の内容
-
- 認知症対策 「共生と予防」課題多く
- 英EU離脱問題 与党・保守党が単独過半数
- 米中関係 ファーウェイ宛小包をアメリカへ誤送?
認知症対策は、日本国内だけでは解決できない
※KON784(19/06/28)で解説した記事を一部抜粋し編集しています。
日経新聞は6月19日、『「共生と予防」課題多く』と題する記事を掲載しました。
政府の関係閣僚会議で認知症対策をまとめた新たな大綱を決定しました。
予防の定義を認知症にならないではなく、認知症になるのを遅らせる、進行を緩やかにするとしたほか、共生のための正しい知識の普及に努めることなどを盛り込んだものです。
介護人材の不足や金融資産の滞留など、答えの見えない課題は多く、日本社会の進む道のりは険しいとしています。
2040年には、日本の65歳以上の認知症患者数は約800万人と推計されています。
一方、介護保険法の規定では、老人ホームなどの施設で要介護の入居者3名に対して、介護する人(介護士)1人の割合で配置することが最低基準として決められていますが、手厚い介護の提供は困難なのが実情でしょう。
今回の認知症施策推進大綱を見て、私がつくづく感じるのは、すべての問題を「わが町」「日本国内」で解決しようとしているということです。
そもそも、この前提が間違っていて、この問題は日本国内だけでは解決できないと私は思います。
解決策の方向性としては、2つあります。
1つは海外から日本国内に人を受け入れる方法です。
しかし、日本の介護士の免許取得が難しく、研修を受けてもなかなか合格しないという問題があります。
そこで注目したいのがもう1つの方法で、逆に海外の施設・サービスに任せるというものです。
私は10年ほど前に、チェンマイにある養老施設を見学に行ったことがあります。
認知症のスイス人、ドイツ人、スウェーデン人などを介護していたのは地元のタイ人女性でした。
1人の認知症患者に対して、8時間の交代制で3人のタイ人女性が担当していて、24時間体制を実現していました。
1人当たり2万円/月ほどで、3人で6万円/月。
ドイツやスイスの年金の平均額が約24万円なので、その他の食事代や部屋代などを含めても、年金の半分ほどで事足りる計算でした。
食事の手伝いや散歩の同行などをしていましたが、言葉が通じなくても全く不便な様子はなく、見学に来ていた家族も安心していました。
夜は同じ部屋で眠り、例えば認知症患者の方が夜中にトイレに行ったりしても、すぐに綺麗に洗って片付けていました。
これが、本当の介護だと私は感じました。
これを日本国内で実現することは不可能です。
また、社会保障制度に見る「潜在扶養率」を見ても、米国が3.1、ドイツが2.5、中国が4.9、日本は1.8となっていて最も低い水準です。
2人に満たない現役世代が高齢者1人を支える計算ですから、人手だけでなく、財政的にも全く余裕はありません。
海外の施設に送るというと、「現代版の姨捨山」などと批判する人もいますが、日本国内のサービスレベルと比較して、「どちらが姨捨山なのか」と言いたくなります。
特に東京都には養老施設が不足して、近隣の施設に依頼することが多くなっていますが、受け入れる側も人員不足で余裕がありません。
かつて群馬県の養老施設が火事を起こして10人の方が亡くなったこともありました。
日本国内だけで解決しようなどと考えるべきではない、と思います。
海外に目を向けたとき、今ではタイも人件費が上がっていますから、インドネシアやフィリピンを候補として考えても良いでしょう。
今回の認知症施策推進大綱には、現実を踏まえた上で何ら抜本的な解決策が見られなかったのが、非常に残念です。
英連合王国崩壊への地獄の門が開いてしまったかもしれない
※KON809(19/12/20)で解説した記事を一部抜粋し編集しています。
英国の下院総選挙の投票が12月12日に行われ、開票の結果、ジョンソン首相率いる与党・保守党が単独過半数を獲得しました。
ジョンソン氏は公約に掲げた2020年1月末の離脱に向けて準備を加速させる考えを強調しました。
英国のEU離脱に向かって「賽は投げられた」格好ですが、まだ最終的にどのような決着になるのかわからない状態、と私は見ています。
最大2年間の移行期間中、英国はなるべく自分たちに有利な条件を勝ち取るためEUと交渉を行うはずです。
例えば、シェンゲン協定への加盟です。
この協定は、ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可するもの。
EUから離脱しても、シェンゲン協定に加盟できれば検問なく輸送トラックの往来などが可能です。
これにより、「ドーバー海峡を渡る時に輸送トラックが2週間分滞留する」と言われている、EU離脱の懸念事項の1つ「北アイルランドからの輸送問題」が解決します。
ゆえに、英国としては是非ともシェンゲン協定に加盟したいところでしょうが、EU側は拒否する可能性が高く、その交渉が行われることになると思います。
今回の選挙について、保守党の大勝という見方もありますが、私からすれば労働党の自滅による惨敗といった印象のほうが強く残ります。
労働党のコービン氏は党内の離脱派もまとめきれませんでしたし、結局何を主張したいのか分かりにくかったのが致命的でした。
コービン氏は自らが首相になったら、EUと交渉し緩やかな離脱を勝ち取るとし、その「緩やかな離脱案」と「残留」の2択について、国民投票にかけたいと主張しました。
しかし、そもそも緩やかな離脱案がEUに許可されるかどうかも定かではありません。
国民からすれば非常に分かりにくい選択肢です。
シンプルに、徹底的に「英国がEUに残留すること」のみを主張すれば良かったのに、小難しい論理を使ってしまいました。
さらに、ユダヤ人差別的な発言などを問題視されたこともあり、急にユダヤ人へアピールをしてみたり、労働党としていくつかの産業で国有化を推し進めると言い出してみたり、全体的な主張にも一貫性が見られませんでした。
また、今回の選挙結果で私が見逃してはならないと思ったのは、スコットランド国民党が48議席まで勢力を伸ばしたことです。
というのは、これはスコットランド内では圧倒的な力を持つことを意味し、もしかすると、英国が大打撃を受ける可能性があるからです。
かつてスコットランド国民党は、英連合王国からのスコットランド独立を画策し、国民投票を行ったことがあります。
そのときは、僅差で負けています。
争点の1つは、英連合王国から独立してしまうと、スコットランド単独ではEUに加盟できない可能性が高い、ということでした。
EU加盟国の英国が反対をすると、EUに加盟することができないからです。
ところが、英国がEUから離脱するとなると話は変わります。
スコットランドのEU加盟に反対する国はいないでしょうから、スコットランドに道が開けます。
そう考えると、今回のスコットランド国民党の躍進は、スコットランド独立に向けた大きな一歩になる可能性があります。
そして、スコットランドが独立することになると、北アイルランド、ウェールズなども追随する可能性が高く、英連合王国の崩壊につながっていくかもしれません。
北アイルランドは英連合王国から独立してEUに単独で残留できる可能性があれば、再び南北の統一を目指す可能性があります。
こうなってくると、イングランドが孤立してしまうという事態が発生します。
今回の選挙結果を、保守党の大勝という見方ではなく、英連合王国崩壊の第一歩と見ることもできると私は思います。
ファーウェイ問題の原因は、中国共産党にある
※KON781(19/06/07)で解説した記事を一部抜粋し編集しています。
ニューズウィークは5月30日、「中国激怒 Huawei宛小包をアメリカへ誤送?」と題する記事を掲載しました。
米宅配大手フェデックスが中国の本社や支社宛に送られた荷物を、無断で米国へ送ったり、差し止めていたことが判明したと紹介しています。
フェデックスは誤送を認め謝罪した後、意図的に誤配送をしたわけではないと弁明しましたが、中国メディアからは不満が噴出しており、今やボトムアップの反米運動が火蓋を切る勢いだとしています。
私の感想を言えば、フェデックスは世界で最も信頼できる配送会社であり、「誤送」なんて考えられません。
米国政府からの強い圧力が働いたのではないでしょうか。
日本でも商品の販売中止が相次ぐファーウェイですが、極めて優れた企業だと私は思います。
私は90年代から、中国企業の中で世界化するとしたらファーウェイだろう、と言ってきましたし、近年も私が主催する企業経営者の勉強会である「向研会」でファーウェイの工場見学に行きました。
ファーウェイの問題は、一企業としての問題ではなく、中国共産党と中国メーカーの関係性における問題と認識する必要があります。
顔認証システムであれ、ルーターであれ、中国メーカーは、中国国内で活動するためには、中国共産党とデータを共有することが求められます。
そして、製品の中にそれを実現するための仕組みが組み込まれているのです。
ファーウェイの場合には、その「中国共産党仕様」の商品を誤って輸出してしまった、あるいはそういう仕組みが組み込まれていた痕跡が残っている商品があった、ということで問題視される羽目になりました。
つまり、ファーウェイ問題は中国共産党が作り出している問題であり、根本的に解決するためには、中国共産党が中国メーカーを「悪用」して情報を提供させるのをやめなくてはいけません。
中国共産党が、中国企業を歪めているわけです。
ファーウェイは、企業として非常に優秀で、特に5Gの技術には特筆すべきものがあります。
北欧勢の企業に唯一対抗できる企業と言って良いでしょう。
米国や日本の企業にとっても安価で優秀な技術を持っている企業なので、本来使いたいはずです。
しかし、そのためにはファーウェイは中国共産党とのつながりがなく、安全であることを自ら証明できないといけません。
それを実現するには、会社を「中国国内向け」と「世界向け」に分けるしかないと私は思います。
そして、世界向けの会社は、ボードメンバーから技術者に至るまでグローバル人材を揃え、完全に別の企業として経営する必要があります。
ファーウェイ問題については、中国政府もそうとう怒り心頭の様子ですが、私に言わせれば、そもそもの原因を作り出しているのは「あなた(中国共産党)自身だ」ということです。
---
※この記事は2019年のクリックアンケートで反響が大きかった号をピックアップし編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は2019年の人気記事をお届けしました。
大前は1日500本のニュースをチェックするとともに、常に新しい情報や知識をインプットしながら「いま世界で何が起きているのか」を分析しています。
ニュースをもとに自分なりに考え推測すること、そして、そのニュースを追い続けることで時流を読む力を鍛えることができます。
▼最強組織を創るチームビルディング研修
異業種のリーダーが集い、自組織の土台作りに
“真に必要なこと”を学ぶ【1月28日(火)東京】
https://bit.ly/36vNsHO