- 本文の内容
-
- トヨタ自動車 中国新車販売台数で2位
- ウエアラブル端末 身につける端末、病気兆候つかむ
- 三菱ケミカルHD 田辺三菱製薬を完全子会社化
- キリンHD ニュー・ベルジャンを買収
- リニア中央新幹線 リニア、静岡着工見通せず
中国で20年間苦労してきたトヨタ
中国の新車販売台数でトヨタ自動車が前年同月比5位から2位に浮上したことがわかりました。
SUVなど現地の若者向けのデザインが成功した他、販売価格や豊富な品ぞろえ及び燃費の良さや環境対応などが評価されたもので、数年来力を入れている中国政府との関係強化策も功を奏したとのことです。
トヨタはかなり出遅れて約20年前に中国市場に参入しました。
当時から中国ではVWとGMが圧倒的な強さを誇っていました。
そのGMを若干とはいえ、トヨタが上回り2位に浮上したのは画期的なことだと思います。
前年同月比で見ると、トヨタ、ホンダが伸びていて、GM、上海汽車が落ちています。
また、日本勢では奮闘していた日産も落ち込んでいます。
この20年間、トヨタは「天津が第二の故郷」という意気込みで、中国市場で奮闘してきましたが、この結果は非常に評価できるものだと思います。
ウエアラブル機器の技術は一筋縄ではいかない
日経新聞は23日、「身につける端末、病気の兆候つかむ」と題する記事を掲載しました。
これは腕時計型血圧計などのウエアラブル機器を健康管理だけでなく、病気の早期発見や発作の予知に活用する動きが広がっていると紹介しています。
この分野には非常に難しい技術がたくさんあり、シリコンバレーでは、血圧だけでなく脈拍を測る技術など様々な研究が進んでいます。
日本では、偶然にも腕時計型の血圧計の精度が通常の血圧計に遜色無いということで商品がヒットしましたが、病気の早期発見や発作の予知に活用するとなると、もちろん血圧情報だけでは不足しています。
スマホにデータを飛ばし、様々な技術を使って総合的な情報として管理できるレベルまで達する必要があります。
そうなってくると、シリコンバレーの技術には太刀打ちできないと感じます。
三菱ケミカル、コクヨ、キリンの買収劇にみる買収戦略の欠如
三菱ケミカルHDは18日、56%強を出資する上場子会社の田辺三菱製薬を完全子会社化すると発表しました。
TOBにより出資比率を100%に引き上げる方針で、医薬分野で進む新薬開発のデジタル化に対応するため、子会社化により総合力を高める考えです。
今でも連結対象になっていますから、あえて100%子会社化するメリットがあるのか、私には疑問です。
三菱ケミカルHDのセグメントは、ケミカルズ、機能商品、産業ガス、ヘルスケアとなっています。
ヘルスケア分野の収益は出ているものの落ち込んできているので、ここにテコ入れしたいのだと思います。
報道では、三菱ケミカルから提供できる技術があり、それにより総合力を高めるということですが、私はそのような技術があるとは知りません。
この点も含め、100%子会社化することでどれほどメリットがあるのか、疑問が残ります。
子会社化や買収によって、実際にどのようなメリットがあるのか、具体的にイメージできなくては、単に2つが1つになったところで効果はそれほど期待できません。
コクヨとプラスが争う形になった、ぺんてるの買収についても同様の懸念を感じます。
文具大手プラスが筆記具大手ぺんてるの株式買い付けに乗り出すことが20日、明らかになりました。
プラスが設立した合同会社が、1株3500円で12月10日までに買い付けることをぺんてるの株主に通知し始めたとのことで、コクヨによる敵対的買収の対抗策となります。
ぺんてるの経営陣がコクヨに対して良い感情を持っておらず、コクヨに通告せずにプラスと交渉を開始したということでしょう。
プラスは株式を1/3まで保有する見込みとのことですが、はたしてそこまで行けるのかどうか、わかりません。
私は、このような手に打って出る前にもう少し話し合いをするべきだったと思います。
プラスがぺんてるを買収したところで、その後の事業展開の広がりはそれほど期待できません。
一方、コクヨの事業規模は大きいですが、国内がほとんどで海外はわずかです。
その点、海外で売上の半分以上を上げているぺんてるに期待したいのでしょうが、このぺんてるのチャネルをコクヨが有効活用できるとは限りません。
コクヨの主要商品は「紙」です。
コストが高いため、海外では非常に弱い状況です。
それをぺんてるのチャネルを使って解消できるのか?というと、私は全くイメージできません。
オフィス製品にしても、海外勢には強い競合が目白押しです。
ぺんてるが海外に強いというだけで買収しても、本当にコクヨにとってメリットがある活用ができなければ意味がありません。
この点では、プラスも同様です。
また多少のメリットがあっても、市場・業界内でインパクトを残せるもの、あるいは将来そういった展望を見据えているものでないなら、それほど魅力を感じません。
キリンHDによる米クラフトビール会社の買収が発表されましたが、まさにこの事例です。
キリンHDは20日、米クラフトビール大手ニュー・ベルジャン・ブルーイングを買収すると発表しました。
海外子会社を通じて2020年3月末までに株式を100%取得するとのことで、全米に販売網を持つニュー・ベルジャンの強みを活かし、海外のクラフトビール事業を拡大する考えです。
高級ビール路線のアサヒビールに対して、キリンはクラフトビールを強化するという狙いなのかもしれませんが、このような動きをとっても、世界の強豪と比べると足元にも及ばないレベルです。
アサヒやキリンよりも、ジムビーム事業に1兆円ほど突っ込んだサントリーのほうが、展望が開けていると言えるかもしれません。
川勝氏の本当の狙いは、リニア新幹線ではなく、新幹線のぞみ
日経新聞は23日、「リニア、静岡着工見通せず」と題する記事を掲載しました。
リニア中央新幹線の静岡工区が着工できていない問題の打開を目指す3者協議について、静岡県の川勝知事が協議に環境省や国交省の河川部局も加えるべきと主張し始めたと紹介。
川勝氏は、リニアの工事が大井川の水量に悪影響を及ぼすと反対姿勢を示しており、事態のさらなる混迷を懸念する国交省は難色を示していて、3者協議の枠組みは宙に浮いた状態としています。
川勝氏の狙いは、リニアではなく、東海道新幹線の利便性向上のための交渉でしょう。
リニア中央新幹線は地下も深いですし、地理的にも不便で利用者が増えるとは思えません。
静岡県にとっては、リニア中央新幹線にこだわらず、JR東海の新幹線を一部でも停車させるようにすることが重要です。
JR西日本では一部の新幹線のぞみが福山などに停車します。
JR東海でも同様に、浜松や静岡で停車するようになれば、静岡県にとっては大きなメリットです。
現在、JR東海の新幹線のぞみは、新横浜を出発後、名古屋まで停車しません。
県をまたぐ新幹線の距離では日本一の長さです。
リニア中央新幹線にからめて、残土置き場問題などを提示していますが、本命はそれを交渉材料としてJR東海に働きかけ、何本かに1本は、浜松や静岡に停車する新幹線のぞみを実現すること、それが川勝氏の狙いだと私は思います。
---
※この記事は11月24日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は国内文具大手のニュースを大前が解説しました。
大前は、「コクヨの商品を売るにあたって、ぺんてるのチャネルを活かすことができるのか疑問」と述べています。
協業によって相手企業の強みがそのまま手に入るわけではありません。
シナジーを発揮するかを見極めるためには、「その特長の背景には何があるのか」「その特長はいつどのような時に発揮されるのか」など、深く広く把握する必要があります。
▼毎週5分で『グローバル思考×英語学習法』を手に入れる!
BBT Englishアンバサダー就任の藤井サチさんも購読中!
登録者数2万7000人以上のBBT英語メルマガ《無料》
https://00m.in/CaPLH