大前研一「ニュースの視点」Blog

KON805「NEXTユニコーン/ウェルスナビ/国内ネット大手~ヤフーとLINEの経営統合は上手くいくのか」

2019年11月25日 NEXTユニコーン ウェルスナビ 国内ネット大手

本文の内容
  • NEXTユニコーン 上位20社で企業価値計1兆円超
  • ウェルスナビ 第三者割当増資で40億円調達
  • 国内ネット大手 経営統合へ向け協議

日本のユニコーン企業が定着してきた


日本経済新聞社がまとめた「NEXTユニコーン」調査で企業価値を推計したところ、上位20社の合計は前年より2割増加し、1兆円を超えました。

人工知能(AI)やフィンテックの分野で伸びが目立っています。

しかし海外では、元ユニコーンを巡る懸念も広がっており、これまで価値を押し上げてきた投資マネーがしぼむ可能性もあるとしています。

上位10社の顔ぶれを見ていると、上位企業が定着してきたという印象を持ちました。

エリーパワー、オリガミなどは今後の成長性に疑問がやや残りますが、プリファード・ネットワークス、TBM、スマートニュース、ビズリーチなどは安定感があります。

その1社でもある、資産運用を自動で指南する「ロボットアドバイザー」を手掛けるウェルスナビは、先日、第三者割当増資で約40億円を調達しました。

増資による資金調達は5回目で、融資を含めた創業からの資金調達は累計約148億円とのことです。

注意すべきなのは、ロボットによるAIアドバイザーという見え方になっていますが、実際のところ、その資産運用の中身を見ると米国のETFの割合が非常に多くなっていることです。

米国の株価が史上最高値をつけているので、資産運用の成績が良くなるのも当然といえます。

今後、トランプ政権がひっくり返る事態などが発生して、米国の株価が下落することがあったとき、対応できるのかどうかはわかりません。

今のやり方では難しいのではないかと私は見ています。

先行きに若干の不安はあるものの、ウェルスナビはすでに累計で約148億円もの資金を調達しています。

これは芝山社長の賢いところでしょう。

良い運用成績を出せているうちに資金調達を済ませ、今後問題が起こっても、すでに我慢する力を持つことができている状態を作り上げています。




ヤフーとLINEが経営統合しても、一体化経営は難しい


検索サービス「ヤフー」を展開するZホールディングスとLINEは14日、経営統合に向けた協議を進めていると発表しました。

両社はそれぞれ、親会社のソフトバンク、ネイバーが50%ずつ出資して新会社を設立。

その傘下に持株会社を置き、ヤフーやLINEを子会社化する案が検討されているとのことです。

今後の展開としては、まずはPayPayを中心にどこまでサービス展開を広げていくことができるのか?というのが焦点になってくると思います。

しかし、そもそもこの2つの組織が一体となって上手く機能するのか?という点に大きな問題がある、と私は感じます。

2つの全く異なる魂を持った人たちが、50%ずつの株式を持ち合って上手く機能するとは、私には思えません。

さらに言えば、すでにヤフーの親会社であるZホールディングスは多くの企業・サービスを抱えて、現時点でも空中分解してもおかしくないと思います。

Zホールディングス傘下には、eコマース・インターネット広告のヤフー、電子決済サービスのPayPay、映像配信のGYAO、電子コンテンツのイーブックイニシアティブジャパン、さらにはアスクル、一休、ジャパンネット銀行、ワイジェイカード、ZOZOなどがありますが、それぞれがシナジー効果を発揮してお互いに連携が取れているとはいえないでしょう。

一方のLINEは、どちらかといえばサービスを絞って展開してきています。

両社の魂には大きな違いがあると感じます。

資金があるから買収するというだけでは収集がつかなくなり、下手をするとライザップと同じ轍を踏む可能性があります。

大切なのは「核」になるものを置いて、それを中心に組み直すことだと私は思います。

例えば、アスクルに焦点をあてて徹底的にやれば、企業関連のサービスは取り込めます。

アスクルを使ってくれている企業の社員にもメリットがあるようなサービスという視点で考えれば、新たな文房具も開発できるでしょうし、社員向けの旅行サービスも展開できるはずです。

ところが、現状においては「核」が定まっておらず、いきなり社員向けに「一休」の高級ホテルを紹介するということになってしまい、これではニーズが合わない状況になっています。

むしろ、競合サービスである楽天トラベルのほうがニーズに合致しています。

このようにZホールディングスの中においても、各サービスの連携が取れていない状況で、出生の異なるLINEと統合しても、一体化経営を行うのは非常に難しいと思います。

8000万人のユーザーを誇るLINEを取り込めば、ヤフーが一時的に利益を上げることは簡単にできるでしょうが、それによってZホールディングスの中にある、別のものが犠牲になる可能性もあります。

こうした問題にどのように対応していくのか、この点が重要です。

鴻海にしてもアリババにしても、多くのサービスを展開していますが、基本的に一人の人間が構想していくことで、「核」が定まり、「軸」がぶれない展開が可能になっています。

指揮命令できる人は一人のほうが良いと思います。

強者を2つ合わせても上手くいきません。

「1+1=2」にならず、1.6くらいで不完全燃焼して終わってしまうことは多くあります。

現状を見ている限り、ヤフーとLINEの経営統合は、1.6に留まってしまう可能性が高いと私は見ています。




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※この記事は11月17日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週はウェルスナビのニュースを大前が解説しました。

大前は「いま資産運用の成績がいいのは当然」「米国の株価が下落することがあったとき、対応できるのかどうかはわからない」と述べています。

好調な成績が今後も継続するかは、慎重に見極める必要があります。

「好調の理由は外部要因か、内部要因なのか」を把握することで、そのサービスの価値を本質的に理解することができます。


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