- 本文の内容
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- 三陽商会 「バーバリー後」三陽商会なお苦境
- 富士フイルムHD 米ゼロックスの買収断念
- キーエンス キーエンス株が一時前日比10%高
- 国内上場企業 2期連続の最終減益見通し
- ソフトバンクグループ 営業赤字155億円
- 楽天 約1030億円の減損損失計上
三陽商会復活の道は残されている
日経新聞は先月31日、「『バーバリー後』三陽商会なお苦境」と題する記事を掲載しました。
三陽商会の2020年2月期業績見通しが4期連続で連結最終赤字となることを受けて、岩田功社長が2020年1月1日付で辞任すると紹介。
2015年に英高級ブランド・バーバリーとのライセンス契約を終了して以降、後継ブランドが育成できていないことなどが響いたものですが、衣料品分野では百貨店が苦戦する一方、ネット通販の普及により新たなビジネスモデルが台頭しており、アパレル大手の収益構造の変更は容易ではない現状にあるとしています。
時価総額は約182億円にまで落ち込んでいます。
しかし、売上高は約1200億円から600億円程度に落ち込んだものの、そこを維持しています。
売上で600億円というのは立派な数字です。
現在は赤字に転落していますが、この600億円の売上を維持できているのであれば、黒字に転換することは可能だと私は思います。
売上が半減した状況に対処できていないことが問題であり、コスト構造を見直すなど収益化の道は残されているはずです。
ネット通販の普及によって厳しいという見方ではなく、600億円の売上を維持できているという点に着目して、それに見合うコストにするように努力すべきだと思います。
ゼロックスブランドが使えなくなる事態をどう乗り切るか?
富士フイルムHDは5日、事務機器大手の米ゼロックスの買収を断念する一方、ゼロックスとの合弁会社・富士ゼロックスの株式25%をゼロックスから買い取り、完全子会社化すると発表しました。
これにより富士フイルムは、2018年の買収契約破棄に伴うゼロックスへの損害賠償請求を取り下げますが、ブランドや販売地域を定める契約の更新など中長期的には不確定要素が残る現状になっています。
富士フイルムの古森会長は米ゼロックスの買収を強く推進しようとしていましたが、さすがに難しいとなって、約2500億円で富士ゼロックスの株式25%を買い取り、完全子会社化することで決着することになりました。
富士ゼロックスは、米ゼロックスと英ランク・ゼロックスが株式25%ずつ、富士フイルムが株式50%を保有しスタートした企業です。
今回の買収により、それぞれのテリトリーという制約はなくなり、富士フイルムは世界中で展開できるようになります。
しかし、大きな問題が1つ残されることになります。
それは、約1年後から「ゼロックス」ブランドを使用できなくなる、ということです。
世界的には「ゼロックス」という名称を断っていずれかのブランドのOEMを請け負うなどの展開を考える必要があります。
富士フイルムのセグメント別の業績を見ると、ドキュメントソリューション、ヘルスケア・マテリアルズ(メディカル)、イメージング・ソリューション(カメラ)という3本柱で成り立っています。
ドキュメントソリューションの売上が大きいものの、メディカルも成長していてかなり利益を伸ばしています。
イメージング・ソリューションは、売上は低迷していますが営業利益は回復してきています。
キヤノン、ニコンを始め、この業界では多くの企業が苦戦しています。
なぜ、2500億円もの資金を投じて、ここで勝負をしたいのか私には疑問です。
2500億円も支払うのであれば、少なくとも日本とアジアにおいては、引き続きブランド名を利用できる契約にするべきで、今後の大きな焦点になってくると思います。
好調キーエンスにも中国市場で苦戦の要素あり
1日東京株式市場で、キーエンスの株価が急伸し一時前日比10%高の7万5470円と上場来高値を更新しました。
前日発表した株式分割に伴う実質増配を好感し、買いが集まったもので時価総額は9兆558億円とソフトバンクグループを抜いて4位となりました。
もともと高い収益性を誇る企業で、西日本では長らく時価総額1位を維持していました。
上場来高値ということですが、現状においては、中国経済の失速、米中貿易戦争の煽りを受けています。
中国側の設備投資も少なくなってきているということですから、株価よりは実態は厳しいかもしれません。
それでも収益性の高い超優良企業であることは間違いありません。
ソフトバンクと楽天にとって、ウーバーとリフトは悩みの種
日本経済新聞社が決算を発表した上場企業972社を対象に集計したところ、2020年3月期の純利益は前期比4%減と、2期連続の最終減益となる見通しが明らかになりました。
世界的な自動車販売の低迷や米中対立を懸念した設備投資の減少で、幅広い製造業で利益が減少することなどが響く見通しです。
製造業以外でも、厳しい状況が見て取れます。
ソフトバンクグループは、前期1兆4000億円の黒字から一転して半期で155億円の赤字に転落しました。
ウィーカンパニーの時価総額の下落が大きく影響しています。
その他ソフトバンクグループの保有株式を見てみると、アリババ:約13兆円、ソフトバンク:約5兆円、ビジョンファンド:約3兆円、スプリント:約3兆円となっています。
借入が大きい企業ですが、これらの保有株式を見ると、そう簡単にひっくり返ることはないと思います。
とはいえ、ビジョンファンドの投資先については、今後も注意が必要でしょう。
上場した企業の騰落率を見ても、ゲノム解析のガーダントヘルス社は伸びているものの、その他はほとんどがマイナスになっています。
その典型例がウーバーです。
同じような投資でいえば、楽天もリフトの株価下落の影響を受けて、1030億円の減損損失を計上するとのことです。
前期リフトの株価が値上がりし、1100億円の評価益を計上したばかりだというのに、今回で帳消しです。
ソフトバンクにとっても楽天にとっても厳しいのは、ウーバーとリフトのいずれも、その株価が大きく下落しているということです。
激しいシェア争いの中、両者譲らぬ姿勢を見せていて、ドライバーに高い給与を支払う一方、顧客単価を上げることができていません。
結果として、共倒れの様相を見せています。
両者が結託すれば独禁法に抵触してしまうでしょうから、いい加減やめたいと思いながらも、どちらかが倒れるまでやりきるしかない状況になっています。
ウーバーイーツなど、派生するサービスで利益を出そうと必死になっていますが、根幹となるビジネスモデルが単純なので、いかんともしがたいところでしょう。
楽天にとってのリフト、ソフトバンクにとってのウーバー、いずれも非常に頭が痛い問題になっていると思います。
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※この記事は11月10日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています
今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?
今週は、三陽商会のニュースを大前が解説しました。
大前は「『600億円の売上を維持しているところ』に着目すべき」と述べています。
同じデータでも、捉え方によっては課題設定のところからずれてしまいます。
また、「ありたい姿」をどう定義するかによって、どんな課題を解くべきなのかも変わってきます。
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