大前研一「ニュースの視点」Blog

KON789「個人情報保護/東京電力HD~現代における『優越的地位の乱用』は何か」

2019年8月5日 個人情報保護 東京電力HD

本文の内容
  • 個人情報保護 「優越的地位の乱用」で指針案
  • 東京電力HD 福島第二原発廃炉を正式決定へ

個人情報の利用、ハッキングなどを対象にした新しい法案が必要


IT大手による個人データの不適切な収集・利用を防ぐため、公正取引委員会が検討している規制の指針案が先月16日、明らかになりました。

これは、サイトでの購買履歴や位置情報を含め、個人データを同意なく利用した場合、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」にあたると規定するもので、公正取引委員会は8月にも指針案を公表し年内にも実施する方針です。

これは重要かつ必要なことだと私も思います。

現代における「優越的地位の乱用」は何かと言えば、収集したデータの勝手な使い回しです。

GAFAについては米国内でも問題視されていますが、データを結びつけ、それを活用してポイントマーケティングを仕掛けていくのは、とんでもない個人情報の侵犯です。

今現在においては、法律がずさん過ぎて対応できていません。

もっとルールを明確にし、必要に応じて「反トラスト法」「独占禁止法」「個人情報保護法」など何でも構いませんから、本格的に法律で縛るべきでしょう。

また同様に、法律が対応しきれていない問題の1つであるハッキング行為についても、この機会に法律でより厳密に規制することを検討するべきだと思います。

専門家の中には、ハッカーにやられたと認識している企業とハッキングされているのに認識していない企業しかない、と話す人もいるほど、多くの企業がハッキングを受けているとのことです。

個人情報の取扱いとともに、大きな犯罪でもあるハッキングについても厳罰化するなど、まとめて法案を作って欲しいと思います。




1兆円という常識外の安全対策費を求められるのは、政府の対応に問題がある


東京電力ホールディングスは先月24日、福島第二原子力発電所の廃炉を近く決定すると正式に表明しました。

また、この原発にある使用済み核燃料を保管する貯蔵施設を敷地内に設置する考えも表明。

原発事故を起こした福島第一以外で東電が廃炉を決めるのは初めてで、今後一般的な廃炉と同様に1基あたり30年程度の工程で作業をすすめることになります。

福島第二原発は機能的には問題ありませんから、使おうと思えば明日からでも稼働させることができます。

しかし、福島県民の感情を考えれば、福島県知事が承諾する可能性はないでしょう。

そのようなことは、東日本大震災直後からわかりきっていたことです。

他にやるべきことが山積みで遅くなったとはいえ、今になってしまった東電の決定は遅いと言わざるを得ないでしょう。

廃炉が決まれば、今後は燃料を取り出し解体し、何もなかったように更地に戻します。

そこまでに約30~40年の時間と、2000~3000億円の費用がかかると言われています。

それが4基あるわけですから、お金は全く足りません。

最近、東電は柏崎刈羽原子力発電所の6号機と7号機を何とか稼働させたいと躍起になっています。

しかし、万一に備えて「テロリストに襲われても冷却できるように」という設備強化を迫られ、安全対策費として約1兆1690億円もかかるとする新たな試算を出しています。

1基当たり約5500億円となると、新しい原子炉を作るのと変わらない費用です。

今、中国ではウェスチングハウス社製の加圧水型原子炉「AP1000」を何十基も建設中です。

この新型はどんなことがあっても、最後まで冷却可能な設計になっています。

1基5500億円あれば、中国と同じ新しい原子炉を作ったほうが安く上がるかもしれません。

安全対策費だけで総額1兆円超えというのは、常識外の金額です。

このような事態を招いてしまったのは、国民の不安・心配という感情があるため、原子力規制委員会も厳しすぎるとも言える基準を設けているからです。

例えば、対処すべきテロリスト攻撃も定義があいまいなまま、最後には「9.11のように飛行機が突撃してきたらどうするのか?」というレベルまで対応することになり、その結果、あり得ないほどの金額に膨らんでしまいました。

今の状況を見ていると、日本で原子炉を再稼働させるのはもはや「経済的に」難しいと思います。

私は原子炉を稼働させられるなら、そうするべきだと思っています。

原子炉を稼働させるメリットは無視できません。

一方で、国民が感情的に反対する気持ちもよくわかります。

そして、これは政府が福島第一原発事故で何が起きたのか、という真実を国民に真正面から説明していないからだと思います。

私はこのことを政府に何度も話し、また原子炉を稼働させた場合、どのように最終的な安全体制を構築するべきかという方法についても説明しました。

地元、当事者、政府の3者間でどのような役割を果たし、どのような組織を作れば良いのか。

政府には担当組織を作るように助言しましたが、それすら担当者が変わり、今でも実現していませんし、その他のことも何1つ形になっていません。

これではダメです。

福島原発事故と同じような状況になったら、また混乱に陥るだけです。

私は基本的に原発賛成論者ですが、今の政府を見ていると彼らに任せるのは不安だと感じてしまいます。

残念ですが、政府が今のままならやめたほうが良いと言うしかありません。




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※この記事は7月28日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は個人情報保護のニュースについて、大前が解説しました。

大前は
「現代における『優越的地位の乱用』は何か」
と述べています。

過去に決められた規則は、あくまでもその時代背景をもとに作られています。

その内容を現在もそのまま参考にするのではなく、

「現代にとっての○○は何か」

というところまで思考し、物事の本質を捉えることが大切です。


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