大前研一「ニュースの視点」Blog

KON787「ドラッグストア業界/医療費問題/かんぽ生命保険/ホテルオークラ/HIS~業界を俯瞰する視野を持つ」

2019年7月22日 HIS かんぽ生命保険 ドラッグストア業界 ホテルオークラ 医療費問題

本文の内容
  • ドラッグストア業界 始動、ドラッグ大型再編
  • 医療費問題 病院処方の医薬品 2016年度で総額5469億円
  • かんぽ生命保険 不適切な保険販売で改善策
  • ホテルオークラ アエオン社のホテル運営を受託
  • HIS ユニゾHDにTOB実施

どうせ統合するなら、コンビニへの対抗まで見据えて業界トップを狙え


日経新聞は4日、「始動・ドラッグ大型再編」と題する記事を掲載しました。

ドラッグストア、食品スーパー、コンビニの商材の重なりが顕著になっていると紹介。

出店に飽和感が出始めた各業種がお互いの領域に進出するため、プライベートブランドの供給や店舗の融合を進めているためで、今夏にはマツキヨとスギ薬局によるココカラファイン争奪戦の結論が出るなど、業界の大型再編が始まる見通しとしています。

ドラッグストア市場の売上高や店舗数を見ると、どちらも伸びています。

売上高は7兆円に迫る規模です。

このような状況の中、2社でココカラファインの争奪戦を繰り広げるというのはもったいないと思います。

私なら、スギ薬局、ココカラファイン、マツキヨの全てが一緒になることを画策します。

業界5位、6位、7位の3社が一緒になることで、一気に1位のウエルシア、2位のツルハなどを超える規模になれるからです。

薬ジャンルの商品で利益を出せるため、他の商品価格をコンビニよりも安く設定できるのがドラッグストアのメリットですが、このくらいの規模になると、さらにコンビニに対して一定の力を持つことができるはずです。

小さくまとまるのではなく、これくらい大きな視野で考えて欲しいと思います。




日本の将来を考えても、市販薬の購入を促すことが重要


市販薬があるにも関わらず、利用者が病院に通って処方される医薬品の総額が2016年度で5000億円にのぼることがわかりました。

処方薬は自己負担が原則3割と市販薬より割安なことが要因と見られますが、残りは税金や保険料で賄われるため医療費の膨張につながっています。

風邪をひいて風邪薬を買うとき、市販されていても、安く購入できるので、わざわざ病院で処方してもらう人がたくさんいます。

こうしたことを抑制する必要があり、そこで検討されているのが保険給付の見直しです。

例えば、テニスなどで痛めた部位に貼るような湿布薬、アトピー性皮膚炎等ではない皮膚乾燥症に対する保湿剤など、治療の根本に関わるものでないなら、保険適用から除外するというものです。

主要国のGDPに占める医療費の割合を見ると、米国がダントツに高く約16%、欧州と日本は約10%に抑えられています。

しかし、日本の場合にはGDPが伸びておらず、今後高齢者が増えていくので、この割合を維持するのが難しくなっていくはずです。

こうした日本の状況を考えれば、なおさら普通に市販薬で購入できるものを、わざわざ病院に行って購入するのは避けるべきでしょう。




かんぽ生命不正販売の根本的な原因は、過剰なノルマではなく経営陣


かんぽ生命と日本郵便は10日、不適切な保険販売が相次いで発覚した問題を受けて、改善策を発表しました。

郵便局員への過剰なノルマが不正につながったと見て、新たな契約を取った販売員に対する評価体系や報酬を見直す方針で、二重に徴収していた保険料の返還も進めるとのことです。

営業ノルマでドライブをかけたことが不正につながったとのことですが、かんぽ生命で起こっていたことは、本当に驚くべきことです。

結果、かんぽ生命は、保険料収入と経常利益が減少しているのに、当期純利益は伸びているという異常な状態になっています。

どうしてこれほどひどいことが起こったのか?

かんぽ生命の役員構成を見ると、約30名のうち16名は旧郵政省から、いわば天下りしてきた人たちです。

金融機関出身者もいますが、大半は金融の素人でありプロではなく、まともな経営者がいないのです。

もともと単なる天下り先と思っている人たちですから、売上を伸ばすとなっても、営業ノルマを課すことしか考えられなかったのでしょう。

問題の根本はここにあります。

謝罪会見では頭を下げても、何も解決しません。

こうした素人経営陣は退き、再出発するべきだと私は思います。




今度こそ海外での成功を目指して欲しいホテルオークラ


ホテルオークラはロシアの投資会社アエオンコーポレーションの建設するホテルの運営を受託したと発表しました。

モスクワのシェレメーチエボ国際空港の近くに300室規模の大型ホテルを建設する計画で、和食レストランの他、温泉風の温浴施設も設け日本流のサービスを提供するとのことです。

ウラジオストク、ハバロフスクなどを見ても、ロシアにはあまり良いホテルがないので、これは大きなチャンスだと思います。

モスクワ近辺なら、日本式サービスは受け入れられる可能性は大いにあるでしょう。

ぜひここで成功してロシア全土に展開することを期待したいところです。

ホテルオークラはこれまでにも中国上海、アムステルダムなど積極的に海外進出を図ってきましたが、大半は上手くいきませんでした。

今回は、同じ轍を踏まないように頑張ってほしいと思います。




HISが敵対的TOBを仕掛けた背景・理由は?


旅行大手HISは、ホテル事業などを展開するユニゾHDに対してTOBを実施すると発表しました。

現在の保有比率4.5%から大幅な引き上げを目指すものですが、ユニゾが提携協議に応じなかったとしており、敵対的TOBに発展する可能性もあります。

ユニゾHDは興銀系の企業で、不動産などをたくさん保有しています。

HISはすでに筆頭株主で、その他は興銀系の企業が多くなっています。

借入が5000億円ありますが、含み益が2000億円ほどあるため、株価が不当に安くなっていて、村上ファンド的に言えば「狙い目」の案件と言えます。

HISの澤田会長が、村上ファンド的な判断をしたということだと思います。

HISが展開している事業の伸び悩みが背景にあるのでしょう。

旅行事業などは値段が上がらずに過当競争に陥っていますし、またハウステンボスも一時期の勢いがおさまり、頭打ち状態になっています。

こうした状況を打開するために、HISの将来を考えたとき、やらざるを得ないと澤田会長が判断したのだと思います。

ホテルそのものはインバウンド需要も高く、圧倒的に数も不足していますから、リスクはそれほど高くありません。

しかし、敵対的TOBになったとき、残り40%をHISが買い増していけるのかが問題です。

すでに値段が跳ね上がっているので、私は難しいのではないかと見ています。




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※この記事は7月14日にBBTchで放映された大前研一ライブの内容を一部抜粋し編集しています




今週の大前の視点を読み、皆さんはどうお考えになりましたか?


今週は、ドラッグストア大型再編のニュースについて大前が解説しました。

大前は
「私なら、スギ薬局、ココカラファイン、マツキヨの
 全てが一緒になることを画策する」
と述べています。

業界内の競合他社とは、対立するだけでなく、同じ方向をむいて共に進んでいく、という選択肢をとることもできます。

広い視野を持ち、他の業界にひそむ真の競合に気付くことが大切です。


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